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SOS 116 帰還

 翌日のリオンの判断は素早かった。

「即時、全員で帰還します。

馬達を強化させて戻りましょう」

リオンの術式で馬の身体能力を引き上げるという。


「一時的に向上させても、

途中で元通りになりますよ。

かけ続ければ、死んじまうことにもなる」

 オズマットは無難な指摘をする。


「師匠とギルドマスターさんの術式を付与させれば

馬達の負担を軽減出来ますよね」

「……まあ、不可能ではないですが」

「では、参りましょう。

ギルドの方たちも、立場上は早く戻られた方が

よろしいですよね?」

「確かに、そうですね……」


 オズマットとベントリは思わぬ返しに

返答に詰まった。

 確かに方法論としてはあるが、

それに言及されるとは思っていなかったからだ。


 リオンの術式で馬の心臓から送り出される血量を強め、

オズマットの術式でリオンの術式の効果減衰を防ぐ。

ついでにベントリの術式で馬の耐性を補完し、

最強の早馬集団が完成する。


 競走馬もかくやという速さを維持しながら、

それほど整地されているわけではない街道をひたすらに駆ける。

 大集団ではないものの、それなりの頭数になる集団は

街道を通る旅人、通行人や行商人の妨げになるかと心配されたが、

リオンが事前に「忌避」されるように術式を前方にかけ続けていたため

接触事故などの類は一切起きなかった。


 あのフランドルとの一戦以来、

リオンの中で何かが変わったのかどうかわからないが、

確実に術式の運用効率は飛躍的に上昇していた。


「(天才とは恐ろしい……)」

「(同感だな)」


 ベントリとオズマットはその才能に

やや怖れを抱いた。


「リオン様まじカッケーすね」

「当然ですよ! リオン様ですから!」

 一方のピースとミオンは素直に称賛していた。


「つーか、ミオンさんって、馬乗れるんですね?」

「当然。リオン様の従者が乗れない道理がありますか?

たとえどのような困難が待ち受けていようと、

私がリオン様と離れるなど、本来はあり得ないことなのですよ」


 受け取り様によっては国王批判にもなりそうな内容だが、

そんなことを取り立てるピースでもなく、

ミオンもその辺りが分かっていて話している節があった。


「……ここだけの話、ミオンさんって、

アレですか?」

「ええ、元奴隷です。

職業奴隷ですがね」


 馬の足音で、会話は二人だけにしか通じていない。

ピースが上手く速度を調整し、

一時だけ周囲が二人になるように仕向けたのだ。


「そういうあなたも、同じ匂いがしますが?」

「え? 昨日湯浴みはしましたよ?」

「はいはい。……戦闘、いや諜報系ですね」

「……断言されるほどすか?」

「リオン様の従者たるもの、それぐらいの目利きは必要ですので」


 ピースは藪蛇だったと後悔する。

流石にエルダナリヤの娘。普通の人間を傍には置いて居ないということだった。


「ご心配なく。リオン様に害をなさない限り、

一緒に戦っていただいたあなたに刃を向けることはありません。

ご主人さまのご恩はわたくしのご恩と同じですゆえ」

「……んじゃ、今度一緒にご飯でもいかがっすか?

カルマリに新しくて良い感じのお店が出来たんすよ」

「はい、喜んで。その時は、あなたの彼女さんも

一緒にご招待くださいませ」

「……わぁ、厳しいすね」

「人を見る目があるとおっしゃってくださいな」


 正直、そこそこ体力に自信のあるピースでも

この強行軍は堪えたが、ミオンは未だに涼し気な表情で

真っすぐ前を見ていた。


「そろそろ、外門が見えてくるぞ。

まったく、たいした嬢ちゃんだ」


 オズマットはリオンの判断力に脱帽しながら、

あの門の内側で待っている内紛劇に嫌気していた。

 しかし、今この時、冒険者ギルド職員として存在している

オズマットには粛々とその事実を受け止め

職務を全うするしか選択肢は無かった。


 オズマットの読みでは、現国王(はんにんまえ)王弟(うぬぼれ)の殺し合いが

ここから始まるのだと確信していた。


「……もうちょっとましな人選は無いのかよ」


 オズマットの嘆息は、馬の足音にかき消されて消えていった。

 



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