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SOS .011 迎撃

 少年も身体に異常は無さそうで、

緊急性も感じられなかった。


《洞穴》内では時間の経過が分かりにくいが、

既に昼をまわっている。


 シルビアは意識を切り替え、ソアラと話す。


「《洞蜘蛛》ってことは」

「はい、縄張り意識が非常に強いので、

追いつかれれば武力交渉しか道はありませんね」


 ソアラは動揺した。

それは二つの意味で難しかったからだ。


 シルビアはその懸念を充分に理解しており、

可能な代案を提示する。


「ソアラ、

あなたが手加減を苦手にしていることは知っています」

「う…」

「ですから、今回はコレを使います」


 取り出したのはシルビアの得物である《神鉄如意》だ。


「コレは組み上げ方で形を変えますが、

同時に保存している術式も変化します。

そして過剰に神導力が供給されれば自動的に

供給が遮断されます、が、

無理に流し続ければ暴発を引き起こします」


 慣れた手付きで獲物をいくつかに分解するシルビア。


「部位の起動装置へ過剰供給すると、

抑えきれなくなった本体が爆発します。

通路の一番狭い場所で爆発させれば、

天井を崩落させることも出来るでしょう」


 ソアラは押し黙っている。


「ソアラ、お願い出来ますか?」

「で、でも」

「でもじゃないです」


 シルビアはきっぱりと言った。


「思っていることを当ててみましょうか?」


 シルビアは努めて冷たい声を放つ。


「自分では《洞蜘蛛》に勝てないかも知れない。

そして、

あたしを巻き添えで殺すかもしれない」


 薄暗い中、ソアラの目に怯えがちらついて見えた。


「今は、やることだけ考えて下さい。

出来るかどうかは別の話です」


 そうこうしている間に、

不快な音はどんどんと近づいてくる。


「最後の見極めは私がします。

行きますよ」


 シルビアが振り返ること無く、

《洞蜘蛛》の方へ向かう。


 覚悟も定まらぬまま、

ソアラは言われた通りに音の方へと向かう。


「このあたりが一番狭いみたいですね。

ここで迎え撃ちます」


「…」


「ソアラ、可能な限りで良いので

制御して力を流して下さい」


「…」


 シルビアからの助言を無言で受け取り、

ソアラは慎重に力を込める。


「…っ!」


 それでも、ソアラの持っている潜在能力は高く、

急激な力の供給で起動装置が軋み始める。


「シ、シル…!」

「まだです。まだお願いします」


 ギシギシと音を立てるが

シルビアは慎重に見極める。


 ピキリと小さな音が鳴った瞬間、

巨大な影が二人の前に姿を現す。


 既にお互いを目視で捉えられるほど、

蜘蛛との距離は縮まっていたらしい。


「シルビア!」

「今です! 天井へ!」


 痺れを切らせたソアラが叫ぶと、

シルビアが呼応する。


 ソアラは迷わず投げ放った。


 高く舞い上がるそれは、天井付近で

一瞬止まったかと思えば次の瞬間に轟音をがなり立て、

上部の岩盤を根こそぎ破壊した。


 そうして雨あられの様に天井から岩が降り注ぐ。


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