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SOS .010 会議

「どういうことだ!」


 冒険者ギルドのギルドマスター執務室で、主要な幹部が集められている。

その中で一際威圧感を放っているのが、戦術ギルド所属のフランドルだった。


「いえ、どうもこうも、まだ何も分かっていない状況です」


 細身の女性剣士がその言葉に返答する。


「それは分かっている。だから、いま分かっていることを

教えてくれと言っているんだ!」


 幼子であれば震えあがるほどの恫喝だが、

ここにいる全員がそんなことを気にするタマではなかった。


「では、まず最初に異変に気が付いたオズマット教務官とヒナギク監査官から

お話を伺いましょうか」


 おっとりとした話し方をする人物は、この冒険者ギルドのギルドマスターである

ベントリ・バーズである。


 支部のギルドマスターとしては異例の若さであり、しかも見た目は

ぽっちゃりを通り越して太っている。


「あ、はいです。時間は報告書の通りですが、

午後の仕事が始まる前にオズマット教務官と一緒にいたところ

近日見つかった《洞穴》の方角から、

古式戦術級の時空間結界の生成を確認しました。

もっとも、それは私の所見ですので正確な所は現地調査が必要です」


 ヒナギクの説明をオズマットが引き継ぐ。


「そもそも《洞穴》は出入りの業者から、可能性の報告があり

丁度その時に害獣の調査も重なっていた地区だったので

シルビア・セイレンとソアラ・サングリッドの両名で向かわせました」


 ソアラの名前を聞いたフランドルが少し反応を見せた。


「現段階の可能性では、どこまでが故意でどこまでが偶然なのか

判別が難しいところですが、この巡幸のタイミングで起こったことといい、

何かの意図が感じられますね」


「それは何だ!」


 フランドルの詰問にオズマットは両手を広げて答える。


「それが分かれば苦労しないが、それも含めて調査が必要だな」


 オズマットの開き直りとも取れるそのセリフに

フランドルは青筋を立てる。


 しかし、客員としてきている立場の自分では

これ以上の詰問は無意味だと悟ってもいた。


「どちらにせよ、巡幸前に発覚したのは幸いです。

早急に沈静化させるよう、各所の動きを調整してください」


 ギルマスの隣に佇む細身の剣士が場を取りまとめる発言をする。

 片腕でもあるサブマスターのグレース・ガーだ。


「(どこが幸いだ、どこが! 最悪じゃないか!)」


 フランドルは割れんばかりの力で奥歯を噛みしめる。

心の焦燥は止めようが無かった。


 その姿を見ながら、オズマットはやれやれと肩を竦めた。


 こうなることは予想していたが、あまりに予想通り過ぎる。


 ただ、フランドルの言いたいことは良くわかる。自分が出向しているギルドで

これほどの問題が発生した。本来であれば自分が指揮をとり、

解決に向かいたいものの、その権限がない。


 にもかかわらず、もし下手を打てば所属している戦術ギルドの評価は下がる。

あそこのギルドは減点方式なので、出世には致命傷となる可能性もある。


 冒険者ギルドは基本的に加点方式。もっと言えば「生存主義」だ。

「生かすこと、逃がすこと、守ること」に重点を置いている。


 だからこそ、学も常識も無いような連中をぎりぎりのところで

まとめ上げているとも言えるわけだ。


 オズマットはフランドルの様子を見ながら、

次の動きをどうするのか、算段を付けていた。




 



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