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SOS .012 反撃

「《転儀・風壁岩牢(リザル・ネスケアリス)》」


 シルビアが準備していた術式を展開させる。


 渦巻く風の防壁と、堅牢な岩の檻が生成された。


 同時に鼓膜を破る勢いで大音声が鳴り響く。


 僅かでも展開が遅れていたら、二人とも無事では済まなかっただろう。


 防壁越しに感じる鳴動で上部の岩盤が崩落したことを感じたシルビアは

防壁内で尻もちをついているソアラに伝える。


「死んだとは思えませんが、しばらく足止めは出来るはずです。

生態を考えると、通路は数本あるはずですからそこを探りましょう」


 最も、先ほどの老人といい、この巣が普通では無いことは明らかなので

あまり楽観的なもの言いは好ましくなかったが、ソアラを多少でも

落ち着かせる方が良いと判断した。


《洞蜘蛛》は縄張り意識が強いが、一定の傷を負うと途端に慎重になる。

これで大人しくなってくれることを願うしかない。


《神鉄如意》を使い、戻り道に積み上げられた土砂を振り払う。

少し無茶をさせ過ぎたのか、持ち手に違和感を感じた。


「ね、ねえシルビア?」

「はい? 何ですか?」


 お互い土埃だらけの二人は来た道を戻る。


「残りは…」

「半分はとっくに切ってます。

これ以上は余計な戦闘はしたくないですね」


 ソアラが聞いたのは《神鉄如意》に残された

神導力の余力だ。


 先ほど打ち合わせをした場所に戻り、改めて方針を決める。


 そこで、例の少年に動きがあった。意識を取り戻し始めたのだ。


 少年はこの辺りでは珍しい黒髪だ。知り合いとしては

監査官のヒナギクが同じような黒髪だったと思う。


 とすれば、出身も近いのだろうか。


「ど、どうするの?」

「あなたは一体何を学んでここにいるんですか?」


 まずは敵対意思の確認。そして身分の確認だ。


「で、でもあたし外の言葉得意じゃないし…」

「それなら大人しく聞いていてください」


 シルビアはおよその言語に当たりをつけ、

少年の左肩を叩きながら声を掛ける。


『もしもし、聞こえますか? 言葉は分かりますか?』


 少年が薄く目を開き、ぼんやりとシルビアに焦点を合わせ始める。


 安心させるため、残り少ない神導力を使い

辺りを明るくしておいた。


“え……? 誰……?”


 シルビアの顔が曇る、今まで聞いたことのない言語体系だった。


“え、ここ……どこ、てか、何? え? どういうこと……?”


「シ、シルビア? 何て?」

「駄目です、全く聞いたこと―――」


 その時、叫び声が響いた。

《洞蜘蛛》が生きていたのはそうだとして、

どうも尋常では無い叫び方だ。


「……もしかして」

「何? シルビア?」

「本当に最悪。…あいつ子持ちです」


 シルビアの言葉を、ソアラはしばらく呑み込めなかった。

しかし、その意味を飲み込むにつれ、みるみる内に顔が青ざめていく。


「子、子持ちって、子持ち?」


 ソアラがおかしなことを言いだすが、その言葉はふざけてなどいなかった。


《洞蜘蛛》は縄張り意識が強いが、一番やっかいなのは産卵期の雌蜘蛛だ。

もしその時にかちあってしまえば《洞蜘蛛》は魔獣相手でも立ち向かうという

言葉がある。


 つまり、誰かれ構わず向かっていくのだ。


 相手がこんな小娘二人なら、躊躇する本能も沸いてこないだろう。


 離れたところから、土砂を掘り進んでいく音が聞こえ続ける。

 




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