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SOS 108 情報ギルド

「え……?」


 職員専用の掲示板、それも上級管理職でないと見ることの出来ない

緊急連絡版を見たベントリは絶句した。

 どこに、と言われれば一言では説明も難しいのだが、

年齢不相応の落ち着きを持っているベントリにとっては

久しぶりの驚愕する出来事だった。


《新国王陛下の重篤危機》

《カルマ領主の首謀者討伐宣言》


 ここに情報が出回っているということは、

情報ギルドの検閲を通り、各地の上級管理職に

速報として伝達されているのは確実だ。


 ベントリは思わず目の前に座っている、

情報ギルドの地方職員の顔を見る。

 ただ顔を見ると言っても、その素顔は

面に隠されており、実際の表情などを読み取ることは出来ないが、

恐らく何の興味も抱いていないだろうと思う。


 この国で一番新しいギルド、言い換えれば

最後に創設されたギルドがこの情報ギルドだ。


 三星の賢王と呼ばれる

ウルメリア国王、ガーファングル皇帝、ピノス聖帝。

 彼らの創設した最後のギルドと呼ばれている。


 最終大戦時に彗星の如くこの世界に生まれた

彼らは、今までの王族や指導者とは一線を画す才気に溢れた

まさに賢王と呼ぶにふさわしい人達だった。


 終わりの見えない大陸戦争をあろうことか停戦に導き、

そしてお互いの技術、文化、人材交流と各国の法整備の見直し、

そして《連合国》という概念を用い、実際に一代で

強固な国としての運営を始めた方々だ。


 その中で、彼らが共通して重要だと唱えたのが

《情報》に関する取扱いだった。


『人は情報により産まれ、情報により生き、

情報により成長し、情報により死ぬ。

ただ、情報には正しい情報も誤った情報も、

含まれている。

それを正しく導くことが情報ギルドの理念である』


 ベントリは彼、もしくは彼女の背後にある

大きな標語の書かれた垂れ幕を眺める。

 几帳面に埃一つ被っていないそれは、

大事にされているのか、それとも大事にされていないのか

一目では判断もつかない。


 そう言ってしまうほど、この情報ギルドの連中は

自分の感情を表に出すことを決してしないのだ。


 ベントリは一旦落ち着いて考えた。

リオンの話では、サイエンにより戦力の分断がされたわけだが、

あっちには「グレース」と「カイケン」がいる。


 見立てでは「カイケン」はその目的が不明確だが、

今回の立ち位置とその実力を考えれば、

戦力として充分に数えられる。


 「ゼン」という少年は未知数で不可解だが、

少なくとも敵では無く、不安要素としては考えなくてもいいだろう。

 もし、グレースが敗れ、国王陛下が殺されるとなれば

どんな形にせよ緊急的な発信があるはず。


 それが全く無いということは「グレース」は

国王陛下の現状を知ら無い、

もしくは()()()()()()()

一旦確認しているはずだった。


 いや、そもそもどのような状況を捉えても、

この動きは早すぎる。

 現在よりずっと前の時点で

国王陛下はカルマリに帰還し、かつ

何らかの緊急協議の元で、討伐の決儀が採択されていることになる。


 物理的などんな移動手段でも間に合わない早さだ。

リオンの言う「サイエン」の転移術式以外は。


「つまり、陛下も他の連中もサイエン(さるおんな)

術中に嵌っているってことですか……?」

 ベントリは呟く。


 そこから導きだされる結論は、

この国に取って最悪中の最悪の事態だ。


 ここには記載は無いが、

確実に首謀者は特定されていると見て間違いはない。

 カルマ領主の討伐宣言がその証拠だ。


 となれば、首謀者とされているのは一体どの勢力なのか。

それにより、今後の国内の均衡は一気に崩れる可能性がある。


 ベントリは歯噛みする。

それは、過去に対する憤りでもあった。


 賢王達は、臣民を導くため

『情報』と『移動』に特別強固な制限をかけた。

 曰く、この二つの技術は調整しなければ

際限なく管理の効かないものとなるという。


 臣民が成長する速度より、その技術開発が早くなってしまうと

困ると考えたのだ。

 ある意味それは、臣民が愚かであるというに等しいことなのだが、

誰一人伝説の賢王の言葉を否定出来るものが居なかったのも事実だ。


 知ることも、行くことも、ベントリには難しい。


 今のベントリに出来ることは、考えること。

 それだけだった。

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