SOS 107 危篤
その知らせを聞いた時、
ウルメリア・ルヴァン・アーセルハイムは
自分の血が沸きあがる音を感じた。
まさか、このような形で、
自分に王位継承の機会が
訪れるなど、思ってもいなかったからだ。
あるとしても、晩年
最早抜け殻の様になった姿で
しおらしく王位を譲り受ける。
そんな光景しか思い描くことは出来なかった。
それがどうだ、あの不出来な兄が死んで、
自分の順番が巡ってくるなど、
もうそれは神様の思し召しとしか思えないことだった。
もちろん、事はそう簡単では無い。
現在はルヴァン家の当主が王家の責を担っているが、
それは選挙の結果であり、もっと言えば
優秀な兄達の評価が著しく髙かったため、
兄であるリッテンハイムが継ぐことになっただけに過ぎない。
新しく選挙ともなれば、
他の四剣に王位が移ることも考えれる。
ただ、ライン一族は戦闘狂で、
エルダナリヤは信仰中毒
ハーケンロッソに至っては
超個人主義というまとまりの無さ。
風は自分に吹いていると、
アーセルハイムは確信した。
もちろん末の弟はまだ若く、継承もクソもない。
「よし、出立の準備だ!
急げよ!」
「は、はい!」
国法では、次期継承には
いくつかの要件がある。
継承権のある者は、
先代の王が崩御する際に、
その場に同席する必要がある。
もちろん、死後3日までは
遅延しても問題ないが、
早いに越したことはない。
まるで昔、子供の頃に
遠出する事が楽しかった時のような感情だ。
わくわくと高揚する気持ちを抑え、
アーセルハイムは他の四剣の連中に
情報を流すことも忘れない。
冷静かつ沈着な戦略家、
それが自分だったからだ。
思えば、自分が王位を継承出来なかったのは
この国の法律が不出来な代物だったからだ。
あの優秀の中でも優秀な長兄と次男は
幼かったアーセルハイムからしても
別格の存在だった。
ゆえに子供の時は、その兄達を差し置いて
自分が王に位置することは
考えも及ばなかった。
しかし、その二人が相次いで死に、
あの不出来極まりない三男に
王位継承権が回ってくるなど
笑えない冗談としか思えなかった。
しかし、これでこの国はきっと
良くなる。アーセルハイムは
そう確信した。
何故なら、今この時、
自分以上に王に相応しい人物など居ないからだ。
アーセルハイムはこの時初めて、
この世界には本当に神と思しき存在が
居るのではないかと思った。




