SOS 100 vsアルマ9
危機を免れたカイケンは、
グレースを抱えて危険領域を脱出する。
向こうにソアラがのびているのが見えたが、
命の危険は無さそうだったので、
放置することにした。
『やれやれ、ガラじゃないことは
するもんじゃないですね』
チラリと見た様子では、
ヒナギクがアルマを押している。
詳しくは確認しようがないけれど、
ヒナギクの刀が物質的な攻撃だけではなく、
精神的な領域を断つ特性を
持っていることがは分かった。
『どうやったかはわかりませんが、
無茶なことしたのは間違いないですね。
冒険者ギルドの人達は、
どうしてみんなこうなんでしょうか』
後戻りできないかもしれないことを、
まるで考えていない無謀さだと思った。
「……無茶苦茶という意味では、
あなたには言われたくないですけどね」
カイケンに抱えられたグレースが、
意識を取り戻したらしい。
ただ、身体は動かないようで
だらりと両手足を垂らしたままだった。
『そうですか、でもまあ、
あなたのところの管理官さんが、
もうすぐ《宝銘》を倒すみたいですよ』
その会話を遮るように、
激しい音が周囲に響き渡った。
「ほらほら、どうしました?
さっきから逃げてばっかりですよ?」
「ぐぅうううう!」
単純に攻撃を捌くことも出来ない上に、
相手の攻撃のことごとくが
アルマの持っている存在値を削る。
痛みを感じる瞬間に、同時にその痛みが消失する。
魂をどんどんと削られていくようにして、
自分が意識することが出来る領域が狭く小さくなっていく。
アルマはヒナギクの全てを観察するが、
彼女の持っている力の正体を未だ掴めずにいる。
考える間もなく、ヒナギクは刀を振るい、
その度にアルマは激痛に視界を歪める。
別に、勝つことにこだわっているわけでは無いが、
アルマは自分が少なからず強い生き物であることを
自身で理解していた。
だから、いくら勝ち負けに拘らなくなったとしても、
ただ漫然と敗北して死んでいくことを、
それも仕方が無いと受け止められるほど
枯れ切ってはいなかった。
故に、
最後の最後、
奥の手の奥の手、
秘奥の秘儀を口にする。
「 」
その呪言とヒナギクの一閃は
まさしく同時だった。
「………………!!!!」
音にならない断末魔と共に、
アルマはその存在を完全に消滅させる。
辺りには静寂が訪れ、
その場にいる全員が緊張を途切れさせた。
『……消えましたね』
「……確かなの?」
カイケンとグレースが呟く。
「……お、終わりましたか?」
「……みたいね」
ヒナギクに援護術式をかけ続けていた
シルビアとサティがへたり込む。
サティの《毒操》をヒナギクの愛刀へ
付与し続けた疲労感がどっと押し寄せた。
「……ふう、やば。
全然焦点が戻らないです」
ヒナギクも膝をつき、
空を見上げる。
ぐるぐると渦を巻く風景だが、
ある種の達成感が中を満たしていた。




