Scene12.『偽造』
↓↓今回はScene11の続き(同年)の話になります。
「私の赤ちゃんが……
赤ちゃんが――――!」
その瞬間、ひとつの幸福が崩壊した。それは、子供が一人死んだという義兄からの報せだった。若き夫婦、ロビネッタとその夫マドックにとってその子は、初めて授かった子供の一人だった。産まれたばかりで、すべてがこれからで、幸福に満ち溢れていた。そんな時に齎された報せであった。双子の片方が死んでしまった。二人分だった幸せが、一つ欠けてしまった。こんなにも早く、幸福とは去っていくものなのか――……
その赤ん坊はある若い夫婦の子として、この世に生を受けた。
母親は貴族の家柄、父親は医師。裕福な家庭で、生まれた後の幸福は約束されたようなものだった。
そこが“彼ら”の暮らす場所だった。
それが本来あるべき姿であったが……
運命は何故、“彼ら”を引き裂いたのか。
運命は何故、“彼ら”を光と闇に分けたのか。
彼らは
同じ顔
同じ髪色
同じ声
同じ姿形
なのに何故……
男は机上に置いた写真を見てほくそ笑んだ。それは赤ん坊が写った二枚の写真。それぞれ角度は違ったが、髪の色、顔も同じ赤ん坊を写した写真だった。彼はペンを握り、レポート用紙にペンを走らせる。
“レッドとブラッド”
そうタイトルを綴った。
私の愛しい弟夫婦の息子ブラッド。お前は光。お前が平穏な表の世界――そこに居るのは、偶然という幸運だ。
レッド、お前は闇。お前がマフィアの女の手に選ばれて、裏の世界――そこに連れ去られたのは、偶然という不幸だ。お前は産まれてすぐに私が偽造した死亡診断書によって死亡したことになっている。
レッド、ブラッド、お前たちは互いの“ドッペルゲンガー”だ。決して遇ってはならない。光と闇は共存できない。遭遇すれば互いを打ち消し合い、どちらかが消えるのだ。
どちらかが……
「クク……」
できるだけ長い間、成長する過程を見させてくれよ。レッド、そしてブラッド。
若き夫婦マドックとロビネッタ。その息子たち双子。彼らの運命は一人の人間に狂わされ、展開していく。彼らの血族であるルパート・クリザリングによって。




