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万年童貞の異世界転生!  作者: 竹輪
幼少期
5/6

幕間1 聖獣の出会い

ケリュネイア視点です。

我が名はケリュネイア、偉大なる狩猟神アルテミス様の眷属じゃ。

聖獣というのは本来、仕える主の手となり足となり、時には矛や盾となり戦う者のことじゃ。

私も昔はアルテミス様の戦車を牽き戦場を走り回ったものよ。


しかし今は天界も平和になってそんなことも一切なくなってしもうた。

アルテミス様は狩猟神であるが故、狩りをするために弓を持つことはあれど戦車を使わねばならぬことなどそうそうないしの。

平和なのは何よりなのじゃが、こうも何もないと退屈で仕方ない。


仕事をすればましになるかとアルテミス様に聖域守護の任を賜ったが、この聖域には高位の魔物や人間しか入ることはおろか見つけることすらできないので仕事はほとんどない。


こちらから呼べば来ることもできるだろうが、それでは守護の意味をなさないのでフォレストウルフくらいしか呼ぶことができんし、

一度だけはぐれ古竜が迷い込んで聖域を荒らそうとしたが、古竜といえどもたかがはぐれなので30分足らずで終わってしまった。


あの日もどうせ同じような日が続くんだろうなと、

不老なこの身を少し呪いながら今日も今日とて変わらず平穏な聖域を眺めながら独りごちていると、

いきなり聖域のど真ん中に赤子の入った籠が出現したのじゃ。


余りにも平穏なので油断していた私は大層驚いてな、

驚いた腹いせにこちらからも驚かしてやろうと半ば八つ当たりのように近づいたのじゃが、

その赤子の顔を見てその気が一気に失せた。

あとからそれはこやつのスキルのせいじゃと分かったのじゃが、それは今は関係ないのでいいじゃろう。


赤子は黒鬼族で、落ち着いた金色の瞳を持っておった。

黒鬼族特有の黒い髪によく似合っておって、そのさまは正に月のようじゃった。


しばし見とれたのち、ふと我に返ってとっさに呼びかけたのじゃが少し様子がおかしい。

返答なぞ返ってくるはずもなく、今も赤子らしく泣いている最中なのじゃが、思念の波は赤子のそれとはまったく正反対のどこか老成した考えと困惑を伴った思念だった。


ふと気になって読心術を起動してみたのじゃが、どうやら本当に確固とした自我を持っておるようで、返答の仕方に困っているようじゃった。


なので内心困惑しているのを悟らせないように精一杯の威厳を持って心が読めることを告白すると、即座に順応してこちらに受け答えをしてきた。


普通心が読めるなぞ、どんな聖人でも少しは引くような内容をあっさり受け入れるあたり図太いのか阿呆なのかはたまたありえぬことだが他に読心術所有者の知り合いでもいたのか。


なんにせよ会話が成立するのは重畳じゃった。

こやつが私の退屈を満たしてくれる存在であればいいのじゃがな。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


こやつとの邂逅から早くも2刻ばかり経った。


転生者だと告げられた時には少しばかり驚いたが、そう考えると納得できることも多くあった。

前世では89まで生きたようだからその老成した思考にも納得できる上、

その万人を惹き寄せるオーラのような物にも納得できる。


転生者、もしくは転移者と呼ばれる存在には特殊なスキルに目覚める者が多いと聞く、こやつもその例にもれず特殊なスキル、もしくは称号を持っているだろう。

生まれたばかりなので二つ名なんかは流石にないだろうしの。


そんなこやつの生い立ちや他愛のない話をしていると、周囲の獣どもが総毛立ちよった。

獣どもの視線の先には怪しげな男がおり、その風体はあたかも急いで森を抜けてきましたと言わんばかりじゃった。


私はこの赤子に一声かけてから男に近づいていく、途中で獣たちに一応落ち着くように意思を送ったが、その前から警戒を解こうとしていたことから、あまり警戒に値する人間ではないのじゃろう。

おおかたよっぽど弱いか、かなりの善性を有しているかのどちらかじゃろうな。

まあ後者は阿呆と言い換えることもできるがの。


話しを聞いてみたところ、赤子の声が聞こえたからここまで来たようじゃ。

確かに聞こえたじゃろうがこの森はダンジョン指定されている森なのじゃぞ。

そんな理由で来るには命取りにも程があるような場所なんじゃが、、、こりゃ後者の方じゃったかの。


この森の近くの都市に住んでいる冒険者のようで、この森にも依頼できたのじゃという。

名をアレクというようで、ここまで来れることからかなりの実力者であることがうかがえる。

ここまで聞いて私はふと思い至ったのじゃが、あの赤子をこやつに預けてはどうじゃろう。


私たち人ならざる者が育てるのは限界があるし、人間を育てることのできるやつに心当たりが無いわけでもないが、聖獣という生き物は総じて気が難しい上に偏屈じゃ。

それに私たちがいた時とは勝手が違っているじゃろう。

そのあたりも含めて、預けるというのは案外よい選択肢かもしれん。

いや、そうに違いない。

というわけで赤子に相談したところ、このアレクなる男のもとへ預けることとなった。





しかし、またもやつまらない生活に戻ってしまうのか。

たった2刻のみの会話だけじゃったのに、生活と呼べるくらいの濃密な時間を与えてくれた友との別れに、そんな感想を抱いた。


恥ずかしながらこの一生、一度たりとも親友はおろか友人と呼べる存在さえ無かった。

仕事仲間、知り合いなどの関係なら多くいたが、あまり積極的に交友関係を持とうとしなかった上、

平和になれば自分の領域でゴロゴロしてばかりおったから、余計周囲とは疎遠になっていった。

そんな環境がいやだったからじゃろうか、私はアルテミス様に仕事をくれと言いに行った。


アルテミス様はそれに快く応じてくださり、そのおかげで私は今ここにいるが、ここまで暇な人生になろうとはな。

あの時一人でも友人と呼べる存在を作っておれば、そう思うこともなくはなかったが後の祭りだしの。


『しかし、また寂しくなるの。』


気づけばそんな言葉が自分から出ていた。

そのせいでこやつには私に友人がいなかったことがばれてしまったが、恥じるようなことではないのだからいいだろう。


何よりこやつがまた会いに来ると言ってくれた方がうれしかった。

友という存在を初めて感じた瞬間じゃった。


例え15年かかろうとも、聖獣の私から見ればほんの一瞬にすぎん。

それまでにこやつとの会話のネタを仕込んでおくことにしよう。


しかし、いつまでもこやつと呼ぶには不便だし、何より友人らしくなかろう。

ここはひとつ、友として名を授けようじゃないか。

聖獣がつけたとなれば、その名も祝福されることじゃろうしな。


そうじゃな、、、、、

ニエロ、ニエロはどうじゃろうか。

ここに私の縁の地、リュカイオンをつければ完璧じゃ。


ああ、ニエロよ。

私はこの地でそなたを待っていよう。

例え悠久の時が流れても、例えその身が朽ち果てようとも。

私はそなたを唯一無二の親友としてこの地に招き入れよう。



まあ、あんまりにも遅かったらこちらから迎えに行くがな。


『(また、15年後にこの場所で。)』


さて、取りあえず急ぐべきは人化の練習じゃな。

久しく人化なぞしておらんかったが、あやつについてゆくにはこのままではまずかろう。

アルテミス様からお小言の一つや二つほどいただいてしまいそうじゃが、

過去には聖獣の憑いた英雄の話だってわんさかあるのじゃ。

別に問題は無かろう。



ふふふ、、、、

待っておれよニエロ―!

その落ち着き払った顔を驚愕に染めてくれるわー!

すいません!

更新遅かったくせに、割と短めです!

最近少しドタバタしてるので更新がまたもや遅れるかもしれません。

次回は主人公に戻ります。

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