第23話 話せば、分かる
七歳の姿でこの世界に来た私も、今日で十六歳になった。この世界は暦……一年の数え方が違っていた。私の正しい誕生日は分からなかったので、この世界に来た日を誕生日として、ジルが毎年数えては教えてくれていたのだ。
この世界では十六歳が成人で、今日から酒が飲める! 約束の一年まであと数日……。ドラゴンを斃さなければならないという重圧から、少しの間だけでも逃れられるような楽しみが、やっと私にもできたのだ。あちらの世界では、よく居酒屋で仲間や部下と飲んだりしていたんだよなあ。
そういえば、終電間近まで飲んでいたところを、取引先の社長と会長に呼び出されて、酒の勢いだけで契約を取ったことがあった。契約が成立してから、「飲んでいると聞いて、本性が出るだろうと呼び出したんだよ。悪かったね。でも君は、私たちの欲する答えをくれたから契約したんだよ」と言われたことの記憶が蘇る。
「やっぱり、まだ喧嘩してるわけでもないのに、こちらから殲滅しに行くのってどうなんだろうな……」
戦争になってからなら……いや、違う。なぜ他の魔物は【図鑑】のために斃してきたのに、ドラゴンとなると迷うんだ? 強いから? 私は「うーん、うーん」と酔いで回らなくなった頭で必死に考え込む。
どちらにしろ、正面からドラゴンに挑むのは間違っている気がする。私は、『神託』で『戦争になる予定』だからどうにかしろと言われているのであって、今すぐ斃せと言われているわけじゃない。まだ、あちら様も絶対に戦争をするとは言ったわけではないのだから。
うん? 言ってない? ドラゴンはしゃべれるのだろうか? 人間より長く生き、『戦争する』と言うぐらいなのであれば、話せる個体がいてもおかしくはないよな。
私はじっくりと考えたくて、騒がしい飲み屋から出て、フラフラと家へ向かった。部屋にたどり着いた私は、氷魔法で氷を作り、水魔法の水を注いで、一気に飲み干した。
「ぷは――っ! 冷たい水って美味いよなあー」
私は昔から冷蔵庫に、ミネラルウォーターを常備していた。冷たい水は、頭がすっきりするから、コーヒーよりも好んで飲んでいたことを思い出す。
「今日は昔のことをよく思い出すなあ……」
しみじみとしながら、パタンとベッドに倒れ込む。手を頭の後ろに回して、天井をボーッと見つめた。
「どちらにしろ、ドラゴンとは一度、話をしてみたい。相手を知らなければ、条件なども出せないし、これ以上、何も考えることはできない――」
「ふむ、それにはいくつか条件があるぞ」
「うわっ、いつの間に! 帰ってきてたんだね。お帰りなさい、閣下」
「ああ。ただいま戻ったよ、シュン。それで、ドラゴンと対話したいのかい?」
「そうだね……。まだ、あちらからも『戦争がしたい』とか『攻撃するぞ!』とは言ってきてないんでしょう?」
「まあ、そうだね。あくまで『神託』があっただけだ。数年後、ドラゴンと全面戦争することになる、と」
「ドラゴンが私と話せるなら、だけどね。会話をして、お互いの条件を出し合い、話し合うことができれば、少しは『戦争』よりましな結果になると思うんだけれども……」
「ククク。面白い子だねえ、シュンは。たしかにわたくしは、『ドラゴンとの戦争をどうにかしろ』とは言ったが、『斃せ』とも『制圧しろ』とも言わなかったねえ。ククッ。良いだろう。ドラゴンと対話するための条件を教えよう」
「知っているんだね? それは助かるよ! きちんとアポを取って……。ドラゴンの巣窟に赴くときには、お土産も必要だよね?」
「クククッ、よく分かっているではないか。彼らに会うためには、『貢ぎ物』が必要でな。あとは、巣窟に入ってからも色々と、洗礼の儀式があるからな、ククク」




