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1000匹狩ればスキルMAX。ドラゴンという絶壁を前に、子供になった元部長が導き出した――「生存戦略」  作者: 月城 蓮桜音


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第22話 埋まった【図鑑】と、静寂

 私は、一年後の決戦の日まで、どのように修行すべきか悩んでいた。早朝の水汲みを終え、いつも通り食堂で朝食をいただく。


「エリスさん、『ミズホ』以外のダンジョンってどこにあるか知ってますか?」


「ん? どうしたんだい? シュンは『ミアズマホール』に通っていただろう?」


「それが……ちょっと、飽きちゃって……」


 さすがにクリアしたから他のダンジョンに行きたいとは言いにくい。遠回しに、他のダンジョンがどこにあるか聞きたかったのだが……。


「なんだ、あんちゃん。なかなか先に進めなくて飽きちまったのかい? まあ、そりゃ仕方ないがな! 『ミアズマホール』は、世界で一番デカくて強者揃いのダンジョンだからなあ」

 

 え? 『ミズホ』が最強のダンジョンだったの!? 偶然でも冒険者のおじさんが教えてくれなかったら知り得ない情報だった。危うく口を滑らせるところだったと、ホッとする。平静を装いながら乾いた口にお茶を含んだ。


「その先の森に、アイスリザードがいるだろう? あれが『ミアズマホール』の二十階にいる魔物と同じぐらいのレベルだ。素材が高い魔物だし、他の魔物が弱い森でじっくり訓練するといいぞ!」


「あ、ありがとうございます。頑張ります」


 苦笑いしながらお礼を言う。先日ジルが言っていたように、私もそこそこ強くなっているのだろうか。冒険者のおじさんが言っているのだから、アイスリザードが『ミズホ』の二十階相当なのは間違いないだろう。

 

 しかし、森とミズホの魔物はすでにコンプリートしているんだよなあ。せっかくなら、戦ったことのない魔物の【図鑑】を埋めたいと思うのが人情だろう。頭を抱えて困っているところに、ジルが訪れた。


「シュン、リストアップしておいたから使って。両方に生息していない魔物と、その場所を記しておいたよ」


 何をしていいのか分からない私には、とても有難かった。この時には気がつかなかったのだが、リストは『日本語』で書かれていた。一緒に渡された地図の説明もだ。よく考えてみると、いつも見ている【図鑑】も『日本語』だったのだが、当たり前過ぎて気づいていなかった。


「ジルさん、ありがとうございます! 早速、準備してきます!」


 私は自分の部屋で狩り用の装備に着替え、わくわくしながら食堂へ向かう階段を降りる。


「ふふっ、楽しそうだね。シュン」


「あはは。初めての場所って、少しわくわくします」


 街から一番近い狩り場に向かう途中、ジルの目的地である武器屋の前まで一緒に歩きながら会話を楽しむ。


「そうか、楽しめるようになっているなら良かった。決して無理はしないで。短いけれど時間もあるからね。近場の狩り場なら今日中に帰ってくるだろう?」


「はい。明日からは少し遠くの狩り場に行ってみようと思っていますが、暗くなる前には帰ってくる予定です。今なら隠密スキルを使って空を移動できますしね」


 『ミズホ』で狩った最後の魔物のスキルが、隠密魔法のスキルだったのだ。これまでは、『気配を意識して消す』ことで何とかバレずに済んだのだが、このスキルを発動していれば、面白いぐらいに誰も気づかない。


「ああ、そうだったね。じゃあ、またね」


 武器屋の前でジルと別れ、私は『ブリーズプレイン』という草原を目指すのだった。


 ★★★


 その日から私は、リストにある魔物の【図鑑】を埋めるために、全国を旅して回った。一番遠い場所でも、『魔法の絨毯』を使って空を行き来できるから、その日のうちに帰って来られた。


 二日目ぐらいからは、一匹ずつ相手をするのは非効率に思えて、弱い魔物は『スキル:ヘイト』でまとめて集めて、まとめて斃し、まとめて回収する。狩りは戦いじゃなく、作業へと落とし込む。淡々と同じことを繰り返し、【図鑑】は順調に埋まっていった。


 弁当を食べて、午後からもまた【ヘイト】で集めて、一気に終わらせる。そう思った瞬間、視界の端に“あの素材”が見えた。

 

「……親父さんが欲しがってたやつだ。これは綺麗に斃さなきゃ」


 私は刀を引き、呼吸を整えた。――刀を振った瞬間、森の音が消えた。次に聞こえたのは、倒れる音だけだった。

 

『ドサッ』

 

 その音が、時間が進んでいることを教えてくれる。私は神経を集中させると、『音のない世界』を感じることができるようになっていた――。


 私は最後の一匹をインベントリにしまった。こうして、残りの【図鑑】を埋める旅は十ヶ月で終わった。達成感は、思ったよりずっと薄かった。まあ、『ドラゴンを除いて』ではあるが。

 

 ――気づけば、約束の一年まで残りわずかだった。

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