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1000匹狩ればスキルMAX。ドラゴンという絶壁を前に、子供になった元部長が導き出した――「生存戦略」  作者: 月城 蓮桜音


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第20話 閣下、久々の無茶振り

 私は開いた宝箱から、『懐中時計』を取り出した。重厚感のある立派な『懐中時計』なのだが、とても小さい。いや、これは人間用ではないのではないか。ふと見た猫の顔がニヤリと歪み、「その通りだ」と言っているようだった。


「なるほど、君のものだったんだね」


 手に取った『懐中時計』を、猫の前にそっと差し出す。猫は『懐中時計』に手が触れた瞬間、体を震わせた。そして、スクッと立ち上がり――二足歩行したのだ。


「……ふう。やっと、喋れる」


 固まる私に、猫は何事もなかったかのように話を続けた。


「よく頑張ってくれたね、シュン。あとは、ここの図鑑を埋めなければならないのだが……今日はもう時間も遅いし、一旦戻ろうか。わたくしも、外と連絡を取らなければならないしね」


 やっぱり、あれは夢じゃなかったのだ。


「やっと、喋った……」


 私はこの世界に放り出されてからの六年間……もう少しで七年になる月日を振り返りながら帰路についた。これで長い旅も終わるのだろうかと……。うん? さっき猫が『あとは、ここの図鑑を埋めなければだが……』と言っていなかったか?


「もしかして、まだ続くのか……」


「何を言っている。ここからが始まりだろう? やっと、わたくしの記憶がすべて戻ったのだからね。君の成長を見ることができたのは、とても楽しかった。あっという間の七年間だったがね」


 ダンジョンの魔物の【図鑑】を全部埋めたなら、何かが変わるのだろうか。ここですべてを聞いては、先に進めない気がした私は、何も聞かなかった。明日からも【図鑑】を埋めることだけを考えていこうと……ダンジョンの【図鑑】が埋まるまでは、何も考えたくないし、考える必要もないだろうと、現実逃避するのだった。


 ★★★


「うむ、この魔物で最後だ。よく頑張った。次は――」


「待ってくれ! 今、私たちに必要なのは、会話だと思うんだ。その魔物で、ダンジョンの【図鑑】は埋まった。だから、もうこのダンジョンには用がないよね? じゃあ、家に戻って、腹を割って話さないか?」


 私は現実逃避するために目を背けていた【図鑑】の完成を機に、猫と話をすることにした。このままずっと逃げ続けるわけにはいかないし、腹を括らなければならないことは理解していたからだ。


「そうだね、シュン。わたくしが話せる……知っていることは、すべて教えよう。不安なのだろう? しかし、大きなことを成すには、それなりに時間も必要になる。この七年間で、貴殿は恐ろしく強くなっただろう?」


「そう……だろうか。私はただ、がむしゃらに、【図鑑】のスキルを解放してきたに過ぎないよ」


「そうか。では、あの男のもとに向かおう。シュン、武器屋へ」


「……分かった。君の言う通りにするよ」


 ★★★


 私は猫を肩に乗せ、武器屋の扉をノックした。


「やあ、シュン。待っていたよ」


 扉を開けてくれたのは、ジルだった。そして彼は「待っていた」と言った。猫の言う「あの男」は、ジルのことなのだろう。


「オヤジ、作業場を借りるね。シュン、おいで」


 ピリリとした空気の中、作業場の台に猫が飛び降り、二足歩行した。ジルにはバレても大丈夫なのだろうか。

 

「記憶が戻ったのですね、閣下。ご苦労さまでした」


「閣下?」


「ああ、彼の愛称ですよ。貴族っぽいでしょう? 姿勢とか、言葉とか。ふふっ」


 なるほど、言われてみればたしかにそんな気がしてくる。だが、二人の空気が変わった。冗談の延長ではない。背筋が冷える。私は息をするのも忘れそうだった。

 

 そして、猫――いや、“閣下”が、私を見据えるように言った。

 

「次はドラゴンだ。覚悟してもらう」

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