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1000匹狩ればスキルMAX。ドラゴンという絶壁を前に、子供になった元部長が導き出した――「生存戦略」  作者: 月城 蓮桜音


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第19話 共に刻んだ時間

 私は、今日も今日とて、『ミズホ』へ来ていた。初めてダンジョンに入ってから、半年が経とうとしていた。三十階までの魔物は、もう問題なく斃せる。気づけば、右腕には愛刀。――それが、私の日常になっていた。


「ダンジョンの魔物は三十階までで五十種類ぐらいだったね。【図鑑】も埋まったし、そろそろ下層へ移動しようか」


 お弁当の食べ方も板についたし、私を翻弄してくる猫の相手も上手く受け流せる。そんな相棒をチラリと見ると、下る階段の方に向かって、いつも通りクイッと首を動かした。


「あはは、相棒からのお許しが出たね。じゃあ行こうか」


 まだ喋らない猫と、いつまでも先が見えない現実に、私は少し諦めを感じていた。猫が話せなくても、今は困らないし、私は家族を養えるぐらいの稼ぎもある。この先、私は何を目指すべきか分からなくなっていた。


「大体、スキルって残りどれぐらいあるんだよ……。魔物の数だけあるとか? まあ、それでも【図鑑】を埋めながら、生きて行くしかないのだろうけどね」


 そう呟いて、私は猫の後を追った。


「君がやれと言うならやるよ。今のところは、君が私に生きる意味をくれるから」


 接近戦にも慣れた私は、地下三十一階に降りた瞬間、手前の魔物にクロスボウの矢を放った。その魔物を中心に、数十匹の魔物が私に向かって来る。それを『刀』で次々と斃していく。その繰り返しだった。


 そうして道を作り、最短距離で次の階段へ向かう。魔物は強くなっていくとジルが言っていたから、まずは四十階ぐらいまで降りてみようか。


「相棒、まだいけるかい? 四十階を目標に降りようと思うんだけど。もちろん、それまでに厳しいと思うことがあれば、そこまでにするけどね」


「そうだな」とでも言いたげな表情の猫は、小さく頷いた。それを確認した私は、猫が怪我をしないようにヘイトを集めつつ、一気に階段まで駆け抜ける。


「見えて来たね。次は三十二階だけど、問題はなさそうだね」


 猫とコミュニケーションを取りながら、慎重に、でも大胆に下層へ向かう。私たちは、あっという間に四十階までたどり着いていた。戦いに集中しすぎて、階数を数える意識すら薄れていた。


「相棒、もう少し下まで行ってみるかい? ん? ああ、宝箱ね。教えてくれてありがとう」


 各階に一つか二つある宝箱を、猫は探すのが上手かった。たまに隠されていたりするのだが。翌日来ても補充されていて、使えるものや売れるものは、毎回もらって帰るようになっていた。


「ここで止まる? まだ先に進むんだね? 了解、何かあったら、鳴いて教えてね」


 私は猫が鳴くまでは階段を降りることにした。それから何階まで進んだのだろうか……数えるのすら面倒になって、先に進んでいた私はふと『記録ボード』を見て驚いた。現在地が八十階になっている。


「うわ、ここ八十階なんだけど! 相棒、まだ深くまで進むのかい?」


 時刻はすでに夕方に近いだろう。猫は少し考えるふりをして、帰る側の、上りの階段に向かって首をクイッとした。言いたいことは通じたらしい。だがしかし、猫は、八十階の真ん中辺りに立ち止まって動かなくなった。いつもなら宝箱を探して先へ行くのに、今日は妙に落ち着きがない。まるで、何かを待っているみたいだった。


「にゃ――――――ん!」


 うお、珍しく猫が大きな声で鳴いた。その瞬間、空気が重くなって、耳の奥がじんと痺れた。反射的に身構え、周囲を見渡した。


 『ゴゴ、ゴゴゴゴ、ゴゴゴゴゴゴ!!』


 地響きがして、地面が割れると、そこから祭壇のようなものが現れた。その祭壇には、大きな石碑が建っている。


「うわあ、立派な石碑だねえ……」


 私は大きな石碑を見上げ、ボーッと眺めていた。そこへ猫が尻尾で私を呼んだ。石碑のある祭壇の上にいる猫のもとへ向かうと、猫の前には宝箱があった。


「これを開けるのかい? え? 手を? うん、ここに当てるんだね?」


 猫に手を置けと促され、宝箱の台へ手を置いた。そこへ猫の前足が重なる。すると、「ピカ――――ッ!」と、宝箱の隙間から、光が溢れ出してきた。次の瞬間、宝箱がひとりでに開く。


 ――その中には、『懐中時計』が入っていたのだった。

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