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1000匹狩ればスキルMAX。ドラゴンという絶壁を前に、子供になった元部長が導き出した――「生存戦略」  作者: 月城 蓮桜音


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第18話 男のロマン、日本刀

 最近では、細身のロングソードで魔物と戦うことも増えていた。森では剣も使えたほうが便利だと思っていたが、剣に慣れると、クロスボウの初動が遅く感じるのだ。それに、もう隠れながら狩りをしなければならないほど、力も弱くはない。


 そんなある日、いつものようにダンジョンで狩りをしていると、ふと昔、修学旅行で立ち寄った歴史資料館で見た『日本刀』を思い出した。あの切先の輝き、曲線、どれもとても美しくて魅了された。あの『日本刀』を、私も――。


 猫に「帰るよ!」と、声をかけて走り出す。いきなり踵を返した私に、「はあ?」という顔をしたように見えたが、気のせいだろうとスルーした。そして当然、私の向かった先は、親父さんの武器屋だった。


「親父さん! お願いがあります!」


 武器屋に入ってすぐに用件を口にしたのが珍しく感じたのか、親父さんは、目を輝かせる私に嬉しそうに視線を向けた。


「おう、どうした、シュン。何か作ってほしい武器があったか?」


 親父さんも、未知の武器が好きらしく、他国の武器図鑑などをたくさん持っていた。


「はい! 私が……いえ。その、どこかで見たのですが、東の国にある『刀』という武器を作ってほしいのです」


「ほお、『カタナ』とな。どんな武器なのか、シュンは理解しているのか?」


 私は下手くそな絵と、それを補うように説明で何とか特徴を伝えようと試みる。


「絵はこんな感じで……。これは斬るための武器です。このように、少し反っているんです。片刃で、こんな感じでうねうねとした模様がありました。私が使っている細身のロングソードより、さらに細くて、幅はこれぐらい。長さは――」


 (つば)などまで細かく説明し終わると、親父さんがいきなり立ち上がった。


「おし、理解した! 今日は徹夜で作るぞ! おい、火を起こせ!」


「ええっ!? これからっすか?」


 武器屋の若い衆が、驚いていた。すでに日も傾き、あと数時間もしないうちに真っ暗になるだろう。


「ああ、残りたいやつだけ残ってくれ。ワシが叩く。お前たちが観たこともない、素晴らしい剣が出来上がるぞ!」


「俺、残ります!」


 親父さんの言葉に、次々と皆が賛同する。やはり、皆武器が好きなのだろう。未知の武器にとても楽しそうだ。


「親父さん! ありがとうございます!」


「なに、ワシの心を動かす武器を見つけてきてくれたんだ。ワシからお礼を言いたいぐらいだぞ! ガッハッハ!」


 親父さんに「三日だ。三日後に来い! 磨く手前の、打ち終えたばかりの『カタナ』を見せてやるからな!」と言われ、今日はソワソワしながらも帰ることにした。邪魔をしてしまうのは悪いし、やる気に満ちた彼らの熱に、少したじろいたのだ。


 ★★★


 約束の三日後。私は待ちきれずに水汲みを終えてすぐに武器屋に向かった。バーン!と扉を開け放つ私に、親父さんは腹を抱えて笑っている。


「ガッハッハ! そんなに楽しみにしていたんだな! ほら、見てみろ。これで良ければ、あとは研磨だな。薄く繊細な刃が研げた時、これよりさらに美しい姿を見せてくれるだろうさ」


 私はドキドキしながら作業台の上にある『刀の原型』を覗き込んだ。息が止まるような、胸が熱くなるような衝動に駆られる。


「こ、これです! このままでも十分に美しい……」


 うっとりと『刀』を眺める私に、親父さんが大きく何度も頷いた。


「本当になあ! 研磨する前からこんなにも美しいんじゃあ、研いだらどうなることやら。だがな、研ぎが本番だ。ここで刃が決まると言っても過言ではない。見栄えまでやるなら、もう一日くれ。そうだな、二日……二日くれれば、お前さんの理想の『カタナ』に仕上げてやる!」


「当然、待つよ! 待ちます! 待たせてください! 私は煩悩を払うために、ダンジョンに潜って来ます!」


「ガッハッハ!」と楽しそうに笑う親父さんの声を聞きながら、私はダンジョンに向かう。鼻歌でも歌いそうなくらいテンションの上がっている私に、猫が珍しく文句も言わずに肩に乗るのだった。


 ★★★


 あれから二日後。相変わらず我慢のできなかった私は、水汲みをいつもより早い時間に終わらせ、武器屋に駆け込んでいた。


「ガッハッハ! そんな汗だくになって、走って来たのか? そりゃそうだな! ほれ、見てみろ。すごいのが出来上がったぞ!」

 

 仕上がった刃を見てゾクッと背中に何かが走った。

 

「……刀って、男のロマンなんですよ」

 

「分かる。分かるぞ。こいつは普通の剣とは違うんだ。刺さりゃいい? 違ぇな。やっぱり、斬るってのは浪漫だ」


 親父さんと分かり合えた気がした。私はしっかりと頭を下げ、渾身のお礼を告げる。


「親父さん! 本当にありがとうございました! これは今の私の全財産です。これでも足りないと思っています。残りは少しずつ払っていきますので、ローン……借金にしてもらえますか?」


「ブハッ! ガッハハハハ! お前さん、まだ握ってもいないのに、もう支払いの話か? 気に入ってくれて、嬉しいけどよ!」


 親父さんは私の背中をバンバン叩く。「ゲホゲホ!」相変わらず強いスキンシップに、私は咳き込んだ。


「そうだな、これだけの価値があることは認めよう。だがな、この『カタナ』は使う人間を選ぶからなあ。ふむ。メンテナンスをワシに任せると約束してくれるなら、この金額で良いぞ!」


 私が渡した金袋に入った金貨をジャラジャラと鳴らし、大体いくら入っているかを確認したのだろう。親父さんは、とても太っ腹だ。


「本当ですか!? て、では……。図々しいお願いではあるのですが、メンテナンスと、いつか……いつかもう一振り、作ってもらうことも可能でしょうか……」


「ああ、もちろんだ! これを打てるのはワシぐらいだろうからな! これから先、お前さんの『カタナ』は、すべてワシが打つ!それも条件に加えるぞ! ガッハッハ!」


 私は大きく頷いて、『刀』の前に進んだ。柄を掴み、持ち上げる。ギラリと光る刃の美しさは、この世のものとは思えないくらい私を魅了した。


「これで後半も、行ける!」


 親父さんの温かさが、刀に宿っている気がした。肩の上の猫は、「へー」という顔をしていた。

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