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1000匹狩ればスキルMAX。ドラゴンという絶壁を前に、子供になった元部長が導き出した――「生存戦略」  作者: 月城 蓮桜音


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第17話 見解の相違

 ダンジョンから地上へ出た私と猫は街に戻り、屋台で串焼きの肉を買って食べていた。


「お? 弁当じゃ足りなかったのか?」


「あ、こんにちは、ジルさん。実は――――」


 私は、お弁当をダメにしてしまったことを告白した。エリスさんに申し訳ないことをしたと、正直に話したのだ。


「ああ……。ごめんね、説明するのを忘れていたよ。防御魔法を使うのが当たり前になっているから、つい説明するのを忘れちゃったんだ。こんな時間じゃお腹が減ったよね……本当にごめんね」


「あ、いえ! 私の準備不足だっただけです。この子が教えてくれたから、毒のお弁当は食べずに済みましたし、ジルさんは気にしないでくださいね」


 屋台の前で串焼きを持ったまま、お互いに頭を下げている姿は端から見るとおかしかっただろう。でも、この街は優しい。六年も住んでいると、大体の人と知り合いになる。お互いの性格を理解しているからか、周りの人々は微笑んで温かく見守ってくれていた。


「それで、今日は何階まで潜れたんだい?」


「あ、はい。こちらです」


 私は『記録ボード』をジルさんに手渡す。この『記録ボード』は、思っていたより便利なものだった。斃した魔物とその数、到着した階層、毒で負ったダメージ量などが分かるようになっていた。


「え……? さ、さん、三十階!? ええっ!?」


 固まったジルさんは、困惑しているようだった。私は()()、三十階までしか降りられていないのだ。そこに辿り着くまでに手こずる魔物もいなかったから、弁当が無事だったなら、もっと下層まで行けたはずだ。それとも、気づかなかっただけで、すごく強くて危険な魔物がいたのだろうか?


「場所を移そう。オヤジの作業場を借りようか」


 やっと動き出したジルは、珍しく真面目な顔で私に声をかけた。何かまずかったのだろうかと心配になっている私は、「はい」と返事をして、静かにジルのあとをついて行った。


 ★★★


 親父さんに「作業場、借りるよ」と一言声をかけ、私たちは作業場に向かった。ジルが途中で飲み物を取りに行ってくれた。どうやら、長い話になりそうだ。


「シュン、そちらに座ってね。ごめんね、急に真面目な話で驚いたかな? それほど、君の渡してくれたこの『記録ボード』の記録がすごかったんだよ」


「はあ……」


「分かってなさそうだね……。そうだなあ。本来なら、初日に十階までたどり着けたならば、騎士になるだけの力量があると言われているんだ」


 もしかしたら、その方たちは、すべての階の魔物を斃して十階までたどり着いたのではないだろうか? であれば納得だ。私は通れる道を作るためだけに魔物を斃していたからね。ほんの一部の魔物としか戦っていないのだ。


「シュン……絶対に分かってないよね、君は。二十階を超えると、魔物はさらに強くなるから、降りるスピードはどんどん遅くなる」


 ああ、言われてみれば。二十階辺りから魔物の爪に毒があったり、毒の噴き出す岩があったりした記憶が。でも、私には毒を無効化するスキルがあるからね。スピードが下がる理由にはならないだろう。


「ねえ、シュン。君、何がすごいか分かってないよね? 三十階まで降りられたなら、取れない素材は無いと言われているんだよ?」


 そんなにすごいことなんだね。やっぱり私は、強い魔物を飛ばして降りてしまったんだな。前から思っていたんだけど、私は運が良いんだよね。きっと、ビギナーズラック的な何かで三十階までたどり着いたのだろう。


「はあ……」


 うん? ため息を吐いたのは、私の相棒だね。猫でもため息を吐くんだなあなんて考えていたら、何か言いたげな、胡乱な瞳で私を見ている。


 ――まるで、「……お前、本気で言ってるのか?」とでも言いたげに。

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