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1000匹狩ればスキルMAX。ドラゴンという絶壁を前に、子供になった元部長が導き出した――「生存戦略」  作者: 月城 蓮桜音


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第15話 我がまま猫と向かう、『ミズホ』

 ダンジョンがある場所は、街の近くとは言っても、馬か乗り合い馬車で移動しなければならなかった。


「面倒だな……」


 つい呟いてしまう。自転車や自家用車で移動していたあの頃。うちからすぐの場所には駅もバス停もあった。これまでは森が近かったから気にならなかったが、私は移動時間を効率的に使うタイプだったことを思い出していた。


「にゃーん」


 肩に乗っていた猫が、いきなり飛び降りて走り出した。


「え? ちょっと待って! 走って行くとか言わないよね!?」


「にゃー?」


 立ち止まった猫が、「え? 問題でも?」という顔で私を見ている気がした。いや、馬に乗れば二十分で着くけれど高くて借りられないし、乗り合い馬車は待ち時間があるから効率が悪い。それでも走ったら二時間はかかるんじゃないですかねえ……。


「にゃーん!」


 猫が私を呼んだ。振り返ると、急に突風が吹いて、猫をふわりと舞い上がらせた。


「え、えっ! 危ないよ!」


 猫は空中でくるりと一回転してみせた。……完全に遊んでいる。


 この突風を魔法で起こしたのは猫だ。この子の魔力は、長年一緒にいるからさすがに覚えていた。慌てる私に、猫はついて来いと首をクイッと動かした。こいつ、すでに自我があるな。とりあえず、風魔法を使って、自分を浮かせる。それぐらいはできるようになっていた。


「こら、危ないだろう? どうしたいんだい?」


 浮いた私の肩に猫は着地すると、私ごと突風で前に飛ばした。


「うわっ! たしかに飛んでるからスピードは速いけれど! こんな無茶して、怪我したらどうするのさ!」


 肩にいる猫に視線を向けると、「治癒魔法使えるだろ?」という顔で私を覗き込む。いや、怪我することを前提に移動手段を選ばないで!? しかし、まあ……風を操るというアイディアは悪くないかな。板に乗って、魔法の絨毯みたいに飛んでみるとか? ああ、熊の皮があるから、それにシールドをかけて乗ってみるか。


「案外、いけるな。かなり目立つけど……。はあ、気配を消して使うしかないな」


 熊の皮で代用した魔法の絨毯で、目立たないようにダンジョンに向かう。猫は嬉しそうに私の膝の上でゴロゴロと喉を鳴らしていた。無茶振りする猫に「仕方ないなあ……」と呟きながらも、頭を撫でてしまう。この子は小さな頃から、とても毛並みが良いんだ。


「ふう、着いたね。十分もかからなかったか。風の調整は難しくはあったけれど、たしかに、交通手段としては秀逸だなあ」


 熊の皮にかけたシールドを解除し、皮をインベントリにしまう。


「はあー。行動しなければ、何も変わらないからなあ……。さて、初のダンジョンだ。気合を入れて行くよ!」


 ふと【図鑑】を開くと、『未踏破エリア:ダンジョン』の文字が淡く光っていた。

 

 ……よし、行こう。


 私は猫を首に巻いて、ダンジョンの入り口へ歩を進める。入り口ではカードのようなものを配っていた。私もつい、ポケットティッシュを受け取る要領で受け取ってしまった。あ、これは必要なものなのだろうか。


「あ、あの。これはダンジョンに入るのに必要なのですか?」


「ダンジョンは初めてかい? この板は記録ボードといって、どの階まで進めたかを自動で記録してくれるものさ。次にどこからスタートすればいいか、分かりやすいだろう?」


「なるほど、あれば便利ですね」


「一種の証明書みたいなものでな。ギルドで仕事を受ける時に、身分証代わりに使うこともできるんだ。だから毎回、もらって入る人が多いんだよ」


「なるほど。説明、ありがとうございました」


「おう。頑張っておいで」


 手を振ってくれたお兄さんに軽く頭を下げ、ダンジョンに入る。すると、急に息苦しくなった。まさか、入り口から『毒』が!? さすが、『ミアズマホール』と呼ばれるだけはあるな、と思いながら数歩歩いた瞬間に、息がしやすくなったのだった。

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