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1000匹狩ればスキルMAX。ドラゴンという絶壁を前に、子供になった元部長が導き出した――「生存戦略」  作者: 月城 蓮桜音


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第14話 変わった日常、変わらない朝

 この世界で生活するようになってから、六年が経っていた。私は相変わらず毎日、早朝の水汲みと森の中で狩りをして暮らしていた。


 食用の魔物は食堂で捌き方も教わり、一人で下処理までできるようになっていた。素材用の魔物も、武器屋の裏で解体してから卸すことで、高値で売ることもできるようになった。所持金ゼロだった私は、生活には困らないくらいには稼げるようになっていたのだ。


 私自身も十三歳となり、身体も成長していた。この世界に来た当初の装備は、すぐに着られなくなり、私は狩った魔物の素材を駆使して、自分のサイズぴったりの装備を作ったりもした。十歳を超えると、身長もどんどん伸びたこともあって、すでに四回は作り直している。


 そうやって、自分でできることも増えた。魔物も百種類近くがスキルMAXで、【図鑑】のほとんどの文字が金色に輝いている。子猫も成猫になった。だが、まだしゃべれない。森の魔物はもうすべて狩り終えるというのに、だ。


「はあ、まだダメなのか……。仕方ない、ジルに会いに行こう」


 私はとりあえず、武器屋に顔を出した。


「親父さん、こんにちは。ジル、いませんか?」


「おう、シュンじゃねえか! ジルなら作業場にいるぞ。あ、そうだ。『熊の爪』、持ってねえか?」


「ええ、ありますよ。最近は矢も作ってないので、余ってます」


「おお! それは助かる! 作業場に置いてってくれ。数は、お前さんが使わない分、すべて買い取るぞ!」


「了解。二百個置いておくね」


「おう、悪いな!」


 六年前から態度の変わらない親父さんに、私はいつもホッとする。いつでも来て良いんだぞ、とその背中が語ってくれているような気がした。


「おや、シュン。珍しいね。元気だったかい?」


「元気ですよ。先週も会いましたけどね?」


「あはは、シュンがあっという間に大きくなるからだよ。この前まで、こんなに小さかったのに」


 手を膝くらいまで下げて言う。毎回の問答に、いい加減飽きているが、付き合っている。

 

「ですから、二歳児でもそれより大きいですって……」


「ふふっ、そうだねえ。それで? 今日はどうしたんだい?」


 ジルは私の肩に乗っている猫をチラリと見て話しかけてきた。


「森の魔物は、すべてスキルMAXになったんです。次に何をすべきなのか分からなくて」


「ああ! 森を終えたなら、次はダンジョンだ。稼ぎも危険も、桁が変わるぞ。ええと、ここから一番近いダンジョンは――」


「え……っ?」


 私はジルの言葉に口をポカンと開けて固まった。すぐに内容を理解し、嫌そうな顔をしてみせる。


「え? まだ続くの? って顔すんな。……冒険ってのは、だいたいそこからが本番だろう?」


「なぜ、今までダンジョンのことを教えてくれなかったのですか?」


「そりゃ……。強さの桁が違うからだよ」


「嘘ですね。わざと言わなかったんでしょう?」


「そんなこと、ないとは言い切れないけれど……。この平穏な生活を、壊したくなかったのも理由の一つ、かな」


 苦笑いするジルさんを見ていると、私に危険なダンジョンへは行かせたくなかった親心のようなものがあったのかな? と感じた。私からすれば、もっと早くに言ってほしかった。スキルで矢は壊れなくなったし、剣術も少しだが上達している。しかし、まだ上があるとは……強い敵がいるとは知らなかったのだ。もう、森に入っても緊張しなくなっていた。もう、勝てると分かっているからだ。


「大きな違いは、魔物の種類と、あとは『毒』が発生する場所があったり、『罠』が仕掛けられていたりすることかな。他には……ああ、宝箱があるね」

 

「それって、もっと強いスキルがあると……」

 

「シュンは、シールドなら全種類使いこなせるだろう? 今のシュンなら、恐らく問題なく最奥まで下りられると思うよ」

 

 肩に乗っている猫がしゃべらない限り、まだ完全ではないということは理解していたけれど、最奥に下りることじゃなくて、千匹狩ることが大事なんですよね? また最初からですか……。遠い目でうんざりしている私を横目に、ジルは話を進める。

 

「えっと、ここから一番近いダンジョンは……」

 

 ジルが地図を指で叩く。


「ここだよ。ミアズマホールと呼ばれるダンジョンだ」


「ミアズマホール……長いな。ミズホでいいか」

 

「やめろ。怒られるぞ」

 

「誰に?」

 

「……ダンジョンに、だ。まあ、通称は『ミアズマ』だが、三文字の『ミズホ』のほうが、呼びやすくはあるか……」


 今日はしっかり準備して、明日から『ミズホ』に潜ろうと、気合いを入れる。


 私の首にすり寄る猫に、

 「……ああ、まだ名前がなかったな。今さらだけど」

 と呟く。


 「今日も一緒に寝ような」

 そう言って、私は猫の頭を撫でた。


――猫は、いつもより強く喉を鳴らしていた。

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