第12話 この世の理と、スキル
私は『壊れない矢』ができたことに興奮していた。調子に乗った私は、次のスキル『アイスシールド』も見えているのだから、使えるのでは……と、試してみることにした。
「アイスシールド!」
矢の周りに厚みのある氷がまとわりつく感覚がある。これならいけるのでは!? そう思った瞬間、『バキッ!』と矢じりが……硬いはずの矢じりが割れた。
「いけると思ったのに……! ああ、1本無駄にしてしまったな。やはり、ちゃんと習得しなければダメかあ……」
私は仕方なく、『アイスフィルム』を駆使して狩りを続けた。
「9、10……。これで10匹目だな。うん……? か、体が重い……」
急に重力が増したように感じた私は、その場に膝をついた。このままここで倒れるわけにはいかない! 重い体を引きずるようにしながら、私は街へ戻った。
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エリスさんたちにバレないよう、こっそりと自分の部屋へ戻った私は、ベッドにダイブして大きく息を吐いた。
「た、耐え切ったぞ……」
だが、このままでは何が悪かったのか、さっぱり分からない。まだ使えないスキルを使ったことで、ペナルティでも受けたのだろうか? 考えても分からない。これは聞きに行くべきだろうと、今朝会ったジルとの会話を思い出した。今日は武器屋の親父さんに素材を卸して、ギルドに顔を出すと言っていたはずだ。
「ふう。体も少しだが落ち着いたし、親父さんのところへ行ってみようかな」
今日はもう、狩りに出ることは難しいだろう。立ち止まることが大事だと分かっていても、何もしていないことに抵抗のある私は、早速出かける準備をするのだった。
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脂汗をかきながら、武器屋へ辿り着いた私は誰がどう見ても、体調の悪そうな人間だった。
「どうした! お前さん、大丈夫か!? おい、誰か! 水を持って来い!」
慌てて椅子を勧めてくれる親父さんが天使に見える。ああ、今日はおとなしくしておけば良かった……。無理して動いたことで、皆に迷惑をかけてしまった。
「オヤジ、どうしたんだ? そんな大声で……って、シュン! どうしたんだ!? 顔色が尋常じゃないよ!」
「あ、あはは……。すみません、理由が分からなくて……」
「もしかして、私を探していたのかい? エリスに言ってくれれば、食堂に伺うからあまり無理はしないでおくれ?」
「はい……。申し訳ありません……」
「ジル、説教はあとだ。見た感じでは『魔力切れ』か? まさか、シュンは魔法が使えたのか!?」
「え? 魔法が使えるのは珍しいのですか?」
魔法が珍しいなら、スキルの話をするのはやめておいたほうがいいのだろうか……。この二人に限っては大丈夫だと思うのだが、念のため、今は言わないでおこう。
「そうなのですね。たしかに私は魔法を使えますが、少しだけですよ」
「シュン、場所を移そう。今の君は横になって休むのが優先だよ。オヤジ、頼まれていた素材は裏に置いといたから、あとで確認しておいてくれるかい?」
「ああ、分かった。それより、早くシュンを休ませてやってくれ」
ジルは頷いて、私を軽々と担ぎ上げた。ぐるんと世界が回って、ちょっと気持ち悪くなったが、歩けそうになかったから助かった。そう思ったところで記憶が途切れた。ジルに会って安心したからか、どうやら私は気を失ったようだ。
★★★
ふと目を開けると、そこは自分の部屋だった。ジルが運んでくれたのだろう。
「起きたかい? 水、飲めそう? ……まだ眠そうだな。話は明日でいい。今は休むんだ」
返事をする気力もなく、私は重い瞼を閉じる。枕元にいた子猫の温もりを感じながら、再び深い眠りに沈んでいった。




