第11話 魔物とスキルと知恵
私は当初の、各魔物を千匹斃すという目標をクリアしたことで、少し浮かれていたのかもしれない。ゴブリンと爆走コッコは素材で狩らなければならないことが確定している。ならば、少し場所を変えて、まだ出会っていない魔物を狩ろうと、森を訪れていた。
もちろん、早朝の水汲みは終わっている。私の水魔法で水瓶を一杯にしてきたのだ。最初の水瓶には、蛇口から出る水のイメージをしたからか、少し時間がかかってしまったが、二つ目からは、水瓶の底から水が湧き出るイメージを持った。すると、あっという間に水が一杯になり、残り四つはすぐに終わったのだった。
――私はこれが、『スキルMAXだからできた』からこそのことに、まだ気がついていないのだった。
「あの魔物を斃してみよう。隠れて狩るのだから、注意事項もあまり意味をなしていないんだよなあ」
いつも【図鑑】で確認してから狩りを始めるのだが、それでは時間がロスしてしまう。必要最低限のやるべきことを『効率化』していこうと、昨晩猫を撫でながら考えていたのだ。
「トカゲか? 黒……いや、あれは青かな。泥がついているから、黒に見える。もしかして、派手な色は森では目立つから、泥で隠しているのかもしれない。賢い魔物の可能性があるね」
私はクロスボウを構え、静かに時を待った。こちらに向かって来るトカゲに矢を放つ。『ガキン!』心臓辺りに放ったはずの矢は、泥の下に鎧でも着ているかのような硬い皮膚を貫通しない。
「うわ、やばっ!」
私は咆哮しようと口を開けた瞬間のトカゲに矢を射る。今回は、柔らかいであろう口の中を狙って放った。また仕留めきれない可能性を考えて、2本連続で放つ。こちらに踏み込まれたら、戦う術は細い短剣しかないのだ。接近戦にはなりたくなかった。
『グ、グググッ!』
声を上げられずに倒れ込むトカゲ。どうやら斃したらしいとトカゲに近づき、尻尾を踏んでみる。うん、動かないな。知恵がありそうな魔物は『死んだふり』していたりする可能性を考慮して、何度か確認してから矢を抜いた。
「あー、これは使えないな……」
トカゲに刺さった矢を抜くと、3本とも壊れかけていた。これではクロスボウにセットした瞬間に折れるだろう。1本で斃せない可能性のある魔物に出会ったことで、今までより慎重に狩りをすることになった。
「失敗しても2本で仕留めないと。一日に何度も、武器屋に矢を取りに戻るのは面倒だからねえ……」
色々と考えながら狩りをしていると、昼近くになっていた。斃したトカゲは5匹。これまでの魔物とは違い、ペースが遅すぎて精神的に疲れた気がする。
「お弁当をいただきながら、作戦会議ですかねえ……」
最初に狩ったトカゲの尻尾を食べ終わり、満足そうに昼寝していた子猫が、私のもとに戻って来た。
「そうだね……。君がお腹を空かせていないのなら、まあ良いか」
この魔物も最終的には千匹斃す必要があるのだから、今慌てても仕方がない。私はお弁当をいただきながら、トカゲの詳細を確認することにした。
『アイスリザード。氷の矢を一斉に放って攻撃してきます。森の手前で一番強い魔物。驚くと甲高い声を上げて仲間を呼ぶ。食用不可。素材:皮、尻尾のトゲ、歯。次のスキル:氷盾形成【詳しくはこちら】』
うわ、危なかった……。やっぱり口を開けたのは、叫ぶためだったんだな。何匹いるか分からないが、仲間を呼ばれたら不利になるから気をつけなければ。やはり、最初に【図鑑】を確認する一手間は省くべきではないらしい。
『現在のスキル:薄氷障壁一定時間、対象を薄い氷で覆う。生き物が触れると砕けるが、衝撃を軽減する。次のスキル:氷盾形成厚みのある氷の盾を生成する。
併せて、清潔で食用可能な氷を作れる』
ふむ、トカゲはトカゲでも、氷トカゲだったのか。胸の辺りに氷の鎧、あるいは盾で心臓を守っていたのかもしれないな。守る、か……。矢じりに氷魔法を使えば、少しは耐久性が上がるんじゃないか? まあ、やってみる価値はありそうだ。
私は手早く昼食を済ませると、森へ向かった。どんなことであっても、新しいことを試す時は、とても心躍るものだ。
★★★
「アイスフィルム!」
私は自作の矢に向かって、氷魔法を使う。うーん、これでできたのだろうか? 矢じりはひんやり冷たくなったが……。まあ、使ってみよう。標的は先ほどと同じ『アイスリザード』だ。胸にある氷の盾を貫通できるか知りたいなあ。
「驚いたら口を開けると分かっているのだから、二発目を構えておけば大丈夫だな」
口の中に放った矢は、1本目はボロボロだったが、恐らく絶命した後に刺さったと思われる二本目は、まだ再利用できそうな状態だった。口の中なら、一発で仕留められるはず。
私はクロスボウを構え、アイスリザードの心臓辺りを狙った。『バシュッ!』お? 今回は背中まで貫通しているようだな。うつ伏せに倒れたアイスリザードの背中から、矢が突き出ている。そして、矢を回収すると、まだ全然使えそうだった。
「これは良いな! じゃんじゃん狩るぞー!」
機嫌を良くした私は、勢いに任せて、氷魔法を駆使しながら『アイスリザード』を狩りまくるのだった。




