第10話 水汲みと効率
この世界に来て、五日目の早朝。一日目に比べれば、水をこぼさないようになっているし、時間もかからなくなっていた。が、しかし……面倒なことには変わりなかった。
「効率が悪いなあ……。たしか、次の水魔法スキルは『飲料水』を出せるはずだよね?」
私はステータスの【図鑑】を開く。スライムのページには、残りの討伐数も表示されていた。
『跳ねて攻撃してきます。核を壊してください。食べられません。残り61匹斃すと、綺麗な水を出せます(飲料水)。現在のスキル:水魔法が使えます。【詳しくはこちら】』
残り61匹なら、今日中に達成できそうだ。急いで残りの水を運んでから、エリスさんに声をかける。
「おや、シュン。え? もう終わったのかい!? 随分早く運べるようになったんだねえ。いつもありがとうね! はい、今日の弁当だよ! 頑張っておいでね!」
笑顔で送り出され、なんだか胸が温かくなるのを感じながら、森に向かって歩き出す。いつもより、体も軽い気がした。
「スライムはこの先に多いんだよね」
ここ数日、森の中を彷徨っていて分かったのだが、魔物は群れをなして生息しているらしく、少し西に逸れるだけで、違う魔物が現れるのだ。
「さて、今日は確実にスキルを達成したいし、スライムだけを狩ろう。隠れる木陰を変えながら、インベントリの中にある矢を撃ち終えて、手元になくなったら拾いにいこうかな。そのほうが効率が良いよね」
私は昼食を摂るのも忘れて、ひたすらスライムを狩っていた。インベントリの矢が尽きては拾い、尽きては拾い……。矢が壊れて初めて「ああ、5周目か」と顔を上げた。
日は随分と傾いていた。どうやら集中し過ぎて、周りが見えなくなっていたようだ。どちらにしろ、あと一回ずつしか使えない矢をスライムに撃ち込み、すべてが壊れてから帰路についた。
★★★
食堂の二階にある自分の部屋に帰ってきた私は、スキルが上がったことを確認しようとステータスを開いた。ん? インベントリが六枠になっている。何か、条件を満たしたのだろうか。それよりもスキルが気になる。【図鑑】の、スライムのページを急ぎ開いた。
『跳ねて攻撃してきます。核を壊してください。食べられません。現在のスキル:水魔法レベルMAX。【詳しくはこちら】』
うん? レベルMAXだって? 私は【詳しくはこちら】をタップした。
『毒:なし。素材になる部位:なし。食用ではない。次のスキル:スキルレベルカンスト。水魔法の特級魔法『水の檻』までの、すべての水魔法が使える。具体的には、『飲料水を出せる』『攻撃魔法:水鉄砲』『攻撃魔法:ウォータースライサー』『防御魔法:ウォーターシールド』――――』
スキルレベルカンストってことは、千匹斃せたってことか? 待てよ……私は200本の矢を持っていた。5周拾って、壊れるまで攻撃したから……千回攻撃したことになるな。ああ、そりゃあカンストするよな。
「……あれ? 思ったより、早かったな」
初めての千匹達成は、呆気なかった。遠いと思っていた目標千匹が、一日で達成できたからか、感激も薄かったのだろう。
「にゃーん」
祝ってくれているのか、子猫が私の腕にすり寄る。うん? 随分と大きくなった気がする。もう子猫というほどは小さくないような? だが、うちの近所にいた猫を思い出すと、丸々と太っていて、こんなに可愛らしくはなかった。あれが成猫なら、この子はまだ『子猫』だろう。
「早く君と話がしたいよ……」
私は子猫に向かって、ボソッと呟いた。子猫は、首を傾げるも、すぐに体を丸くして、スヤスヤと眠りについたのであった。




