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第二十三話-1

展示館を抜けて、入り口前のステージに足を運ぶ。

イベントの時に使われるステージの前には、机や腰掛けが設置されていて、ちょっとした休憩や飲食の時に使われている。


レジャーシートを芝生の上に敷いて・・・なんて考えてみたけど、嵩張るからやめた。


俺たち3人は、天幕の下の一角に席を決めて腰を下ろす。

まだ赤い顔した瑠璃が、バッグからランチクロスや取り皿、お箸やフォークを出してくれる。

その隣で、琥珀ちゃんはワクワク顔。

目を輝かせながら、瑠璃の様子を眺めている。


こころなしか、瑠璃の瞳も輝いているよう。


・・・楽しみにしてくれてたんだな。


なんとなく、胸の奥がくすぐったい。

それと同じくらい、鳩尾のあたりが締め付けられる気がする。

・・・なんだろう?


そして、ついにお弁当箱・・・というか、二段の重箱が姿を現す。

・・・母さん、気合入れ過ぎだよ。


「おぉぉ~~・・・っ」


瑠璃も琥珀ちゃんも、瞳が輝いている。

可愛らしい両の手をしっかりと握って、小さくガッツポーズ。

掌を合わせて、まるで拝むように見つめている。


「さ、開けるわよ~・・・」


ちょっと緊張の面持ちで、重箱のふたを取ると、中から現れたのは・・・。


鶏のから揚げ

普通の卵焼き

スペイン風オムレツっぽい卵焼き

ピーマンの肉詰め焼き


そして


タコさんウィンナー


それらが、飾りレタスの上に綺麗に並べられている。

その重箱の隅の一角には、ポテトサラダも盛られていた。


・・・流石、母さんだ。

俺では、こんなに見栄えよく盛り付けるなんて、まだまだ無理だからね。


「すごい・・・美味しそう~・・・」

「ほんと、あ~早く食べたい~~・・・っ!」


ふたりとも、スマホを取り出すと、写真を撮っている。

・・・じゃあ、俺も。


パチリ。

パチリパチリ。


何枚か写真を撮ったところで、2段目の重箱を開ける。

そこに並ぶのは、


ゆかり

青菜と梅

瑠璃の大好きな、チーズ枝豆昆布


それらが綺麗に並び、端の方にはお漬物も入れてくれている。

胡麻の混ぜられた細切りのたくあんと、大根甘漬け。

母さんの盛り付けはいいな・・・。


俺だと、お漬物とか入れなかったかもしれない。


ちょっとした気遣いだけど、差し色が入ると、全体が映えるね。

参考になるなぁ。


ふたりはと言えば、写真を撮りながら口元が緩んでる。


「・・・うへへ」


瑠璃、それは女の子が出して良い声じゃないよ・・・。


「もう、お姉ちゃんってばはしたないっ!」


ほら、琥珀ちゃんに怒られてるよ?

これには、瑠璃も苦笑い。


でも、それだけ楽しみにしてくれて、喜んでくれたのなら・・・嬉しいな。


まぁ、お昼にはちょっと早い時間だけど・・・。

周囲を気渡せば、お客さんも増えてきているし、ここも混んじゃうのかな?

ちょっとゆっくり目に食べてれば良いか。


「あ、そうだ。飲み物買ってくるけど、ふたりは何が良い?」


まだお弁当には手を付けず、写真を撮ってるふたりに声を掛けながら、腰を上げる。


あっと言う顔をする瑠璃と、甘えたままの笑顔の琥珀ちゃん。

こういう時は、お姉さんしてるんだね、瑠璃。


「あたし、麦茶がいいっ!」


と、元気の良い琥珀ちゃん。

それを窘めるように見る瑠璃だけど、


「麦茶だね。瑠璃は?」


俺が先に話を進めれば、ちょっとだけ肩を竦めて小さく息を吐き、


「・・・じゃあ、お茶・・・いいかな?」


少しバツが悪そうに笑いながらでも、甘えてくれる。

その様子が、なんとも可愛らしい。


俺は頷いて、近くの自動販売機へ向かい、3人分買う。


さあ、食べようか。


・・・


とは言え、この上なく緊張する。

普段のお弁当には、俺の作った卵焼きや他のおかずを入れてはいるけど、これだけいろいろ、ひとりで作るのは初めて。

母さんが近くで見てくれていたとはいえ、自力でやり切ったのは確か。


でも、それだけに、不安が積もる。


形は変じゃないかな?

味付けは?変じゃない?濃すぎない?

中まで火が通ってる?

あ、逆に固くなりすぎてないかな・・・?


いざ食べて貰うとなると、自信がなさ過ぎてドキドキしてしまう。


「真のお弁当おいしそ~・・・」

「真兄ちゃん、本当凄いよ・・・。すっごく美味しいそうっ」


ふたりとも、期待に胸を膨らませる。

箸を伸ばして、早速唐揚げを。そしてレタス、卵焼き2種、ピーマンの肉詰めを取り皿に並べ、おにぎりも隣に2個。

まずは、ひと通り食べちゃおうか。


「いただきますっ!」


と、3人で言い合ってから、食べ始める。


「ん~~~~・・・っ!!」

「うわぁっ!美味しいよ、真兄ちゃんっ!!」


ふたりして唐揚げを頬張りながら、喜んでくれる。

でも、瑠璃?

その唐揚げはひと口で食べるものじゃないよ?


・・・それだけ楽しみにしてくれてたと思えば、悪い気はしないな。


「この唐揚げ、お店で出してるものみたいだよっ!衣までしっかり香りが付いてるなんて、すごいよっ!」

「ほんとっ!・・・お料理始めたばかりなのに、これだけのものが作れるなんて・・・流石、真だわっ!」


笑顔で喜んでくれるふたりの笑顔。

ほっとしたのか、鳩尾のあたりにあった違和感も消えてなくなる。


『あぁ・・・良かったっ』


卵焼きも、タコさんウィンナーも、次々に箸を伸ばしてくれる。

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