表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
75/106

第十八話-4

「碧さんは、肌奇麗だからコンシーラーはいらないね?」

「そうね。・・・使うとしても、唇の端のあたりに少しだけかな?」

「じゃあ、ちょっとだけ」


そう言いつつ、口角のあたりに指が触れる。

優しくゆっくりと伸ばす感じで、まるでマッサージでもしてもらっているみたい。

些かくすぐったくもあるけど、普段触られる事なんてないものね。


「ファンデーションも、色は濃くなくて良いよね?」

「そうだね。碧さん、色白だし」

「シェーディングは?」

「んー・・・おでこの左右と、頬から顎に掛けてで良いんじゃない?ハイライトも、弱め・・・かなぁ?」


ふたりで話しながら、ブラシで塗ってくれる。

軽く置くような感じだから、私が普段やってるメイクとそんなに変わらないんだけど。


「目元は、ちょっと濃いめにする?」

「んー・・・碧さん、少したれ目っぽいから、ラインを目尻側太めにしようよ。で、少し上に跳ねるようなラインに」

「そうね。シャドーも目尻太めにして・・・」

「あ、ラインの上からもう少し濃いめのブラウンを重ねて。少しぼかすように」

「涙袋の所もライナー入れないと」

「仕上げは白ラメ・・・。で、あとは黒でラインを入れて・・・と」


結構、目元のメイクに時間掛けるんですね。

ふたりとも、毎日これやってるんですか。

・・・慣れたら、早く出来るようになるんでしょうか?


「リップは、今回は赤にする?」

「強く見せるならはっきりした色の方が良いだろうけど、碧さんならピンクベージュの方じゃない?チークとも合わせやすいでしょ」


そう言いながら、ブラシを唇に。

そしてチークも。


・・・


「うん、良いんじゃない?」

「だね。普段よりもギャルっぽいよ、碧さん」


しばらくいろいろと相談しながらメイクしてくれたふたり。

鏡を覗けば、そこには・・・。


いわゆる『白ギャル』メイクに仕上がった私がいた。

普段、ナチュラルメイクしかしない私だけど、今日はふたりにお願いしてギャルメイクにして貰いました。

念願だったメイク。

変わりたい、変わった私の目標・・・と言うのかな?

今までとは違う、ちょっと強気になれそうな気がする。

それくらいには、私の心が弾んでいる。

でも、これで終わりじゃない。


スカートだって、今までよりも折り込んで短くして。

シャツの裾も出して、ラフな感じで。

襟元も少し大きく開いて、セクシーさをアピール。

袖口は折り返して、最後にカーディガンを腰巻きスタイルにして・・・。


見た目だけでも、ギャルっぽい感じに。


そう、見た目だけ。

中身は今までと変わらない私、藤原碧。


でも、今日だけは、今までの私じゃダメ。

柚葉ちゃんも私も、琢磨なんかに振り回されたくないの。

はっきりと断るの。


『もう、あなたと関わるなんてお断り』だって、はっきり言い切るために・・・。

そのために。


なんとなくだけど、メイクしてもらったら勇気が湧くというか、テンションが上がるというか。

『出来る気がする』って、私の中の何かが励ましてくれる。


いいな、この気分。


「それにしてもさ」


メイク道具を片付けながら、綾香さんが不思議そうに私を見る。


「メイクを変えるだけで、そんなに変わる?碧さんの、優しくて大人しいところが変わる訳じゃないでしょ?」


そう、もっともな事を言ってくれる。

それには柚葉ちゃんも賛成なようで、


「そうだよ・・・。見た目がギャルっぽくなったって、碧さんは碧さんだよ。いつもの控えめで、親切な碧さんのままだよ」


と、心配そうな顔で言う。

さっきまでは楽しそうにメイクしてくれてたのに、それと心配は違うのね。


それに、メイクしたって中身が変わる訳じゃない。

今までと一緒。


それはそう。

ふたりの言う通り。

メイクしたって、私の性格が変わる訳じゃない。

別人になる訳じゃない。

私は私。そこは何も変わらない。


でも、変わる切っ掛けにはなる。

変わるって意思を、表に出す事にはなる。


昔々の時代、まだ化粧が『けわい』と言われてた時代・・・よりも前かな?

呪術的な意味があった頃の化粧は、自分とは違う『モノ』になる儀式だったって、何かで読んだ事がある。

今までの私では出来ないことも、『けわい』で変わった私なら出来るかもしれない。

柚葉ちゃんを、守れるかもしれない。

琢磨に負けない私になれるかもしれない。


・・・ううん、なるの。


その為の姿だもの。

だから。


「うん、変わらないよ。私は私のまま・・・。でも、ふたりがメイクしてくれたから、いっぱい勇気を貰ったの。琢磨なんかに負けないくらいの勇気。・・・だから、変わるの。私は私のままで、ちょっとだけ強くなるの」


ふたりに向かって、私はそう宣言する。


そして、


「だから、ありがとう。ふたりが居てくれたから、私は変われるの」


今までに無い笑顔で、ふたりに感謝を伝える。

それはきっと柔らかで、でも向日葵みたいな笑顔。

柚葉ちゃんがいつも見せてくれていた、そんな笑顔。


・・・だと、良いなぁ。


柚葉ちゃんも綾香さんも、少しだけ顔を見合わせてから笑ってくれる。

小さくクスクスと・・・そして、


『あははっ!』


と、笑いあう。三人で、一緒に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ