第十七話-3
「話して、大人しく諦めてくれればいいんですけど」
「どうかなぁ?こんな手紙書く人だよ?ほとぼりが冷めたら、また来るかも」
「あり得ますね・・・」
「う~~~ん・・・」
ここで悩んでいても、良い解決方法が出て来るとも思えない、となれば。
場所を変えるか、他の人にも相談してみるか、かなぁ。
誰かの言葉じゃないですが、『悩む時間があるなら相談しろ』というのは、この場合正しいのかも。
ただ、『相談する相手が誰か』は、ちゃんと考えませんとね。
・・・はて。
そんな人は居たでしょうか?
ふと頭を過るひとつの言葉。
『あんたはどうしたいのさ?』
そう、その言葉。
先日の、瑠璃ちゃんが如月くんに噛みついた、あの時。
綾香さんが瑠璃ちゃんに言ったひと言。
そうだ・・・。
私の気持ちも、柚葉ちゃんの気持ちも大事にしなかったあの男を、正面から振ってやりたい。
自分のなりたい姿で、自分の言葉で、あの男に・・・琢磨くんに『嫌だっ!』って言ってやりたいんだ。
柚葉ちゃんの嫌な記憶も、私の後悔も、まとめて言葉にして叩きつけたい。
以前の私なら、そんな事は考えなかったかもしれない。
もし考えても、『相手の気持ち』を考えて、引いたり、柔らかく言ったかもしれない。
でも今は違う。
私の気持ちや、柚葉ちゃんの気持ちが大事。
その大事なものを守る為なら、あんな男の気持ちなんて知らないっ!
ただ、抱きたいから付き合おうなんて、最低も最低だ。
だから、私はもう『優しい碧さん』である事を辞めよう。
自分の好きな事に素直になろう。
周りから何を言われても、自分の『好き』と『気持ち』に嘘を吐かないって言い聞かせようっ!
たとえ相手とぶつかってでも!
しかし、どうやったら琢磨くん・・・琢磨が諦めるのでしょう?
普通に、今までと変わらない私や柚葉ちゃんが言っても、効果があるでしょうか。後日になって、また来たのでは元の木阿弥。
もっと強く出た方が良いの・・・?
でも、どうすれば?
「・・・碧さん??」
些か考え込んでいた私に、柚葉ちゃんが目を向ける。
少し覗き込むような仕草。僅かに揺れる口元。
・・・私は、そんなに厳しい顔をしていたのでしょうか。
していたのでしょうね。
いけませんね。こんな事で機嫌を悪くするようでは・・・。
少し肩を竦めながら自嘲気味な笑みを浮かべ、私は柚葉ちゃんに向き直る。
今は琢磨の事よりも、柚葉ちゃんと一緒にクラスに戻るのが先。
柚葉ちゃんに安心してもらうことの方が大事。
だから、彼女の手を取り、
「まずは一回、瑠璃ちゃんの所に戻りましょう。それで、真ちゃんの作ってくれた肉詰め、食べちゃいましょ?」
そう言って笑って見せる。
少しだけ息を吐いてくれた柚葉ちゃんも、笑顔で頷いてくれる。
まずは、戻りましょう。
皆と、日常の元に。




