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第十七話-2

内容としては簡単なもの。


『今まで付き合ってた彼女よりも、やはり君の方が良い。昔の事は反省しているから、改めて付き合わないか?』


という、よくある復縁を迫る手紙。

だけど、困るのはここから。


『それと、もちろん断られても仕方ないけれど、同封している手紙を藤原碧さんに渡して欲しい』


・・・どういう感覚なのか、些か理解に苦しむ。

でも・・・ふと、去年の事が思い返される。


去年、私と琢磨くんは同じクラスで、一緒に図書委員をやっていた。

大人しそうな人で、人あたりの良い優しい人・・・。それが彼の印象だった。

まだ柚葉ちゃんたちと知り合ってない私にとって、心許せるような人はほとんど居なかったし、琢磨くんと一緒に委員会の活動をする時間は、学校での少しだけの楽しい時間だったの。

書庫の整理だってふたりでやれば早く終わったし、図書委員の推薦本を選ぶ時だって話が弾んだ。


『もっと一緒に居られる時間があれば・・・』


なんて、考えた事もあった。

それが恋愛感情だったのか、今となってはもう判らないけれど・・・それでも勇気を出して彼に告げた。

あれは、期末のテストが終わった後。

ふたりになれたタイミングで、『付き合いませんか?』と・・・。

でも、彼は困った顔をしながら『彼女が居るから』とだけ。


それっきり。


学年が上がり、クラス替えで離れてからは、彼が図書委員でなくなった事もあって、接点が無くなった。

それだけの関係だったんだな・・・って思っていたのに。


なんで、今更・・・。

・・・と言うか、まさか。


もう一枚の手紙を開いて見れば、そこには・・・


『勇気を出して思いを伝えてくれたのに、あの時は断ってごめんね。改めて、俺の事を考えて貰えないかな?』


・・・と。

どうしよう。あの人、実は私が思ってたような人じゃなくて、全然ダメな人だったのでは???

大体、柚葉ちゃんに復縁を迫りながら、私にも『昔の事をもう一度』なんて・・・何を考えているのやら。

大きく溜息を吐き、がっくりと項垂れ、肩が落ちる。


「はあ~~~~・・・」


多分、人前では出した事の無いような、大きな落胆・・・?戸惑い?それとも呆れ?の籠った息を吐き、やや目が泳ぐ。

まさか、これ程までにうんざりとした気持ちになる事があるなんて。

横で見ている柚葉ちゃんさえ、驚いたような表情を浮かべている。


「こんな人とはね・・・」


あの人あたりの良さそうな見た目は何なのか。

正直、自分の見る目の無さを呪いたいくらい。


「あの・・・碧さん、大丈夫?」


恐る恐る尋ねる柚葉ちゃん。


「・・・うん、大丈夫。大丈夫だよ」


我ながら、余裕が無いのが良く判る。

・・・それにしても。


「・・・柚葉ちゃんが琢磨くんと付き合ってたって、意外なんですけど。合わなかったんですか?」

「・・・うん」


少し顔を赤らめながら、小さく頷く。


「何か、あったんです?」

「・・・うん」


俯いたまま、袖を握る手が僅かに震える。

柚葉ちゃんと琢磨くんの間に、何が・・・?


「聞いて驚かない?」


今でも十分に驚いているので、これ以上驚くとも思えません。

小さく頷くと、心を決めたように話してくれる。


「あのね。・・・琢磨くんとは、去年の今くらいに付き合ってたの・・・。と言っても、ちょっとの間だけなんだけどね?・・・その、優しかったし、大人しそうだし、良い人かなーって思ってね」


確かにそういう印象だったと、頷きながら続きを聞く。


「でね、3回目のデートの時だったかな。夕方前に、琢磨くんが『うちに来ない?』って・・・。その時、あたし断ったの。晩御飯の準備もあるし、またその内にねって・・・」


ん?琢磨くん、うちに誘ったの?


「え?それって?」

「あたしは『ゲームでもしよう』って意味だと思ってたんだけど、その・・・ね。つまり・・・」

「・・・」


正直、黙るしかない。

さらに言うなら、琢磨くんが何をしたいのかも、今回私と柚葉ちゃんの両方に手紙が渡る様にしたかったのかも、良く判った。

ただ、抱ける相手が欲しいだけ・・・そういう事。


「その・・・つまりセ・・・」

「あーはい、大丈夫。うん、良く判ったから、もう言わなくても大丈夫ですから」


まるで茹ったかのような柚葉ちゃんを見ながら、私は慌てて止めた。


「ごめんね、柚葉ちゃん。恥ずかしい事言わせちゃって」

「・・・うん」


俯いたまま手で口元を隠し、目も些か泳ぎ気味。

クラスの中では、多少の猥談をする子は・・・男女を問わず・・・居るけれど、柚葉ちゃんはそれに乗る事は無かったですね。

あまり耐性が無いのかしら?

まあ、それはそれとして。


琢磨くんの件はどうしましょうか。

ふむ、と小さく呟いて口元に指を当てつつ、少し唸る。


「これは、放って置くよりは、ちゃんと断った方が良さそうですね」

「うん、そうだよね。・・・でも」

「控えめに言っても、会いたくないですね・・・」


そう言いつつ、ふたりで顔を見合わせて溜息を吐く。

正直、当面は大過は無いでしょうし、無視しちゃうのも一つの手かなとは思いますけれど。

それでも、多分ですけど・・・断らずにいれば、またしばらくして同じような文面が届くか、もしくは直接話しに来るか・・・。そんな嫌なトラブルが降りかかる未来も、あり得そうで怖いんですよね。


さて・・・。

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