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第十四話-3

「でも、相談して良かったんじゃないですか?如月くんは理解してくれて、一緒に考えてくれたんですよね?ふたりの為にってっ」


心の中の嵐を顔に出す事も無く、私は続ける。

・・・こんな事も慣れてしまったんですね。

一緒に居たいと願いながらも、どこかで心は寄り添えてないなんて・・・。


「・・・そうね。昔から変わらず、私たちの事を見てるものね」

「そうだね。祐也が、私たちの理解者で良かったよ、本当に」


そう言って微笑むふたり。

その笑顔は、やはり私の知らない世界を見ている。

時間。

積み重ねられた関係。

その中で培った絆。

それは、私には無いもの。

望んでも手に入らないもの。

私には・・・私の人生には、用意されていなかった宝物。

胸が苦しくなるほどに、涙が溢れてくるほどに、望んで望んで、望み続けても・・・手に届かないもの。


「それに、水族館なら3人で行っても楽しそうだし、良い場所選ぶわよね。・・・本当、腹が立つくらいだわ」


瑠璃ちゃんはそんな事を言いながら笑う。

にこやかに頷く真ちゃん。

本当に幸せそう・・・。

きっと良い思い出になるんでしょうね・・・。


え?


「・・・え?3人で行くんですか?」


デートって、ふたりで行くものじゃないんです?

なんで3人?

そもそも3人目って・・・如月くんも一緒に行くんですか?

どういう事・・・?


私の頭の中を、疑問符が飛び回る。


幼馴染って、デートにまでついてくるんです??

そんなの、漫画や小説じゃないんですから・・・。

いや・・・漫画や小説でも、一緒には行かないですよ・・・?


このふたり・・・と言うか、如月くんも含めて3人って、どういう関係・・・?


正直、言葉が無い。

目が点になって、口をぱくぱくと金魚のようにするしかない。

私は今、『混乱』という感情を実感しているんですね・・・。


判らない・・・。


まるで時が止まったかのように、私は動けない。


「もうっ瑠璃ってばっ。碧さんが誤解しちゃっうよ・・・。あ、あのね、碧さん。一緒に行くのは・・・」

「あ、ごめん・・・。その・・ね、一緒に行くのは、私の妹の琥珀なの」


あ・・・ああ、そうなんですね。

・・・びっくりしました・・・。


「ちょっと前から、琥珀に『真と一緒に出掛けたい』って言われてたんだけど、家の手伝いで行けてなかったの」

「うん。それで、今回は良い機会かなって思って、一緒に行く事にしたんだ」


なるほどですね。

妹さん、愛されてるんですね。


「それで『水族館』ですか。・・・妹さんも一緒なんて、良いお姉ちゃんなんですね、瑠璃ちゃん」

「そ・・・そうかな?・・・あんまり、構ってあげられてないから、こういう時くらいは・・・ね。それに、琥珀も真の事が好きだし、喜んでくれたらいいなっ・・・って」

「そうなんですねーっ」


・・・妹さん『も』真ちゃんの事が好き・・・ねえ。

なんでしょう・・・。もう隠す気も無いんですね。

真ちゃん、愛されていますね。


「瑠璃は毎日うちに来てるけど、琥珀ちゃんはそんなに来ないもんね。・・・一緒に宿題とかすれば良いのにね」


あ、真ちゃん、判ってない。

薄々感じてましたけど、真ちゃんって・・・鈍いんですね。

ん?・・・毎日?

え?瑠璃ちゃん、毎日、真ちゃんのうちに行ってるんですか?

もしかして、一緒の部屋で勉強とか宿題を・・・?あ、一緒じゃなきゃ出来ないか・・・。

いや、そうじゃなくて。

それもう、幼馴染の距離感じゃないですよ?

毎日一緒に学校に来て、終日ほとんど一緒に居て、帰ってからも一緒に宿題したりって、それもう告白がどうとかって場所超えてませんか??

・・・と言うか、このふたりに『告白』なんて必要なんですか?

凄い・・・というか、怖いですね、幼馴染って・・・。

私の方がキャパ超えてしまいそうです。

でも。

微笑ましい・・・ですね。

このふたりの幸せは、これからも続くのでしょうね。


「・・・っと、そろそろ教室に行くわね」

「そうだね。授業の準備もしないとね」


ふたりは頷くと、私に


「一緒に行きましょう」


と、にこやかに笑いながら声を掛けてくれる。

ふたりの笑顔の隣は、きっと心地良いのでしょうね・・・。

でも・・・。

少し目を細めつつも、私は小さく首を振る。

そして・・・、


「お先に行っててください。私は、柚葉ちゃんを待ちますから」


小さく微笑みながら、そう告げる。

ふたりは「そっか」と呟き、笑顔で手を振って校舎に向かう。

その背中を見送りながら、先日の事に私は思いを馳せた。


・・・


柚葉ちゃんは、この2日学校を休んでいる。

先日の瑠璃ちゃんと如月くんの衝突の後、柚葉ちゃんは落ち込んだように静かで。

瑠璃ちゃん、真ちゃんとも、あまり話をしていなかった。

少しくらい気まずくても、持ち前の明るさで周りを明るくしてくれるのに、その時はまるで別人のように静か。

そして、帰る時には明るく振舞っていたものの、いつもとは明らかに雰囲気が違っていた。

翌日、何の前触れもなく休みだし、今日も休むとなるともう3日目。


やはり、あの衝突が・・・。


あの場の雰囲気・・・いえ、ふたりの衝突を納められなかったのは、私も柚葉ちゃんも、そして真ちゃんも一緒。

でも、今までこれ程にショックを受けた事は無かったはず。

もちろん、今までだって瑠璃ちゃんが如月くんに噛みつく事は何度もありました。

周りがヒヤヒヤする事もありましたけど、それでも柚葉ちゃんはびっくりする程度だったのに、なぜ今回だけ?

確かに、今までに比べれば騒ぎとしては大きいものでしたし、瑠璃ちゃんが強く当たったのは間違いないでしょう。

如月くんのおふざけや、卵焼きのつまみ食いのタイミングが最悪なのも判ります。

それにしても・・・。


『柚葉ちゃんに何かあったんでしょうか・・・』

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