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第十一話-3

◇◇◇◇



長い連休も終わって、また日常が帰ってくる。


私にとっての連休なんて、『真と会えない時間』と『蜜柑山の手入れ』に掛かる日でしかない。


いや、大事な休日か。


蜜柑山の手入れに掛かる手間を考えれば、纏まった時間が取れるのは良い事。

疲れがあっても、翌日が学校じゃないだけで気分も楽だし、休める時間もしっかり取れる。

今の時期は、蜜柑の木に付いた蕾が開花し始める時期なので、速効性のある化成肥料を撒いたりする。

噴霧器を使って木々に撒いて回るのだけど・・・。


正直、山の斜面を結構な重量(何せ液体肥料が入ってる)を背負って歩くのは、かなりキツい・・・。山の上の方から下りながら噴霧するけど、足に掛かる負担は・・・筋トレの延長。


でも、まだ青い葉の香りが風に乗って香って来るし、膨らんできた蕾が愛おしく感じられる。

早朝や夕方に作業が集中するけど、その合間に勉強もするのは、本当に疲れる。眠くなるし。

でも、これも家の仕事の延長だし、何より私にとってはバイトだ。


私はお小遣いは貰ってない。


妹の琥珀は貰ってるけどね。


お小遣いの代わりに、蜜柑山の手入れを手伝う対価を貰ってる。

名目上はお小遣いだけど、『手伝った時間』や『やった事』で金額が変わるんだからバイトだよ。


そりゃお小遣い貰う方が良いだろうけど、家の手伝いはしなくちゃいけないんだし。


通年でやる事があるなら、『決まった金額』のお小遣いより『やった成果』が見えるバイトの方が、幾分かマシ。


それに、テスト時期とか手伝い出来ない時期はあるけど、連休とか収穫期で頑張れば、コンビニでのバイト代よりは貰えるんだし。


・・・それだけ、蜜柑山に掛かる手間は大きいって事。


ま、出荷して入る収入のうち、どれだけが私のバイト代になってるかは、判らないんだけどね・・・。



それにしても。



金額的には多くても、半分は貯金されちゃうしなぁ。


あとはコスメ関係は色々買っちゃうし、あんまり手元には残らないな。


でも仕方ないと言えば仕方なくて、真ってなかなかメイク道具増やさないから。


『あ、これ真に似合いそう』ってものは、つい買っちゃう。


・・・先日も、それを気にするとは言われたけど・・・。


でも、真が周囲から浮いて孤立しちゃうのは避けたい。


多分、まだひとりきりで居る事に耐えられない気がするから。



・・・それは、私も一緒か。



長い休みの間、真と会える時間は、一緒に勉強をする時間くらい。


学校の様に、朝登校する時から下校して帰って来て、真の家で一緒に勉強する程の時間は無い。


精々、数時間。


半日もありはしない。


それだって毎日じゃない。


琥珀の勉強を見る日もあれば、一緒にお菓子を焼く日もある。

真はクッキー好きだから、琥珀も喜んでくれるし良いんだけどね。


昨日の連休最終日に、また琥珀と一緒に焼いたクッキー。


これは、真と・・・柚葉とも一緒に食べよう。


味見もしたけど、さっくりして美味しかったし、気に入ってくれるかな。楽しみだな。



「・・・」



ふと、気付く。


思ったよりも、指先に肌荒れが目立つ。

手のひらで触って見ても、少しざらついた感触がある。

手伝いで荒れたのと、お風呂に浸かり過ぎて脂分が抜けたからか。


俯き気味に溜息が出る。


手入れを怠ったせいだな。


まだ学校に行く前に気付いて良かったけど・・・やっぱり疲れてるのかな。

そんな事を考えながら、机の上にあるハンドクリームに手を伸ばす。


「・・・あっ」


これは、祐也がくれたハンドクリーム。

馬油を使ってるとかで、肌に良いって言ってたっけ。


普段、何気なく使ってたけど、これは良いものだったんだな・・・。


あれこれ噛みつく事が多いのに、よく見て気が付くんだな、あいつ。


些か癪には触るけれど、ハンドクリームには罪は無いんだし、これからも有難く使わせて貰おう。


よく揉み込み、少し馴染ませてからティッシュで余分なクリームを落として出掛ける準備。


今日から、また真と一緒の時間が戻ってくる。

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