表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/64

第八話-4

柚葉ちゃんは友達だ。大事な友達。

その子が、何か判らないけど不安を抱えているなら、力になってあげたいと願う。

だから、微笑みつつも少し真面目な顔と声で、


「柚葉ちゃんが可愛いのは、いつもの事でしょ?友達になった時から・・・ううん、その前から、ずっと可愛いなって思ってるよ。・・・だからね、何か・・・柚葉ちゃんに困った事があるなら、力になってあげたい。柚葉ちゃんの可愛さが、曇って欲しくないからね」


そう告げて、愛らしい瞳をしっかりと見つめる。

長い睫が大きく跳ね、大きな瞳をさらに大きく見開く柚葉ちゃん。

頬が赤いのは、メイクで使ったチークのせいか、それとも照れているのか。

ふたり見つめ合ったまま、少し時間が過ぎる。

ややあって、柚葉ちゃんの口元が震えだし、少し小さな声で・・・震えたような声で、笑いだした。


「あ・・・あははっ!も、もう、真ちゃんったら、揶揄っちゃダメだよ。・・・普段の真ちゃんと、キャラが違いすぎだってっ!もう、びっくりしちゃうよ・・・」

「・・・」

「・・・本当に大丈夫だよ?不安な事なんて、何もないよ?」

「・・・」


俺は優しく見つめながらも、柚葉ちゃんから目を逸らさない。

けれど、俺は彼女を追い詰めたい訳じゃないし、怖がらせたい訳じゃない。


ただ、不安があるなら力になりたいだけだ。


だから、少し微笑んでから彼女から離れた。


「驚かせちゃったならごめんね。・・・少し、いつもの柚葉ちゃんらしくない感じだったから心配しちゃったの。・・・何も無いなら良いの。ごめんね」

「・・・うん」


少しだけ目を逸らし、頬を染めながら大きく息を吐く。

まだ落ち着かないのか、胸に手を当てて何度か細かく息を継ぎ、最後に2回大きく息を吐く。

俯いた顔を上げ、空を見上げる柚葉ちゃん。


もうそこに、憂いの影はない。


いつもの可愛らしい笑顔の似合う彼女が、そこには居た。

柱から数歩離れて、空に向かって大きく伸びをする。


「・・・ん~~~っ!!」


腕を大きく上げて、胸を張り背を伸ばす姿は、なんというか猫のような可愛らしさ。


しなやかな肢体が長く伸ばし、両の腕を広げる様子は、柳のような柔らかさを感じさせる。


スラリとしたその身体。・・・胸がもう少しあれば、本当に完璧なのにと思ってしまう。


・・・こういう感性は、まだ俺が男である事を残してるんだと思う。


声には出さないけどね。


軽やかな足取りで、昇降口の階段を下り、そして改めて俺の前まで駆けて来る。まるで跳ねる様に。

ふわりと舞うスカートや制服の裾よりも、彼女のサラリとした髪が跳ね、風に揺らめく様子に目を奪われる。

そしてその柔らかな笑顔を向けられた。


ふふっと笑う柚葉ちゃんは、もういつもの明るい彼女に戻っている。


そして、「そろそろバイト行くねっ」とくるりと振り向きながら告げ、そのまま階段を降り始める。

「うん、頑張って」と、離れていく背中に声を掛けると、少しだけ振り向いて、軽く手を振ってくれる。

彼女が階段を降り、校門に向かい始めた時、その背中にもう一度だけ声を掛ける。


「ねえ、柚葉ちゃんっ。バイトは楽しい?」


一瞬、振り返った柚葉ちゃんの顔に影が見えた気がした。

でも、それも気のせいかと思うほどに、彼女の笑顔は明るい。

大きく頷き、その良く通る綺麗な声で、


「楽しいよっ!出来る事が増えるのって、すっごく楽しいっ!・・・そりゃ、嫌な事も無い訳じゃないけど、それ以上に楽しい事がいっぱいだよっ」


そう言って、大きな笑顔を見せてくれる。

俺の方を向いたまま、数歩軽やかにバックステップをすると、くるりと1回転ターン。

そして大きく手を振って、「またねっ!」と声を残して走り出した。


校門を出て坂を下り始めれば、もう姿は見えなくなる。


またね、柚葉ちゃん。


彼女の背を見送り、また柱に凭れ掛かる俺。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ