第八話-1
グラウンドで部活をしてる同級生たちを眺めている。
ただぼんやりと、見るとは無しに。
校舎の昇降口。下駄箱が並ぶその場所も、今は人の姿はない。
授業が終わってさっさと帰ってしまう人や、部活に向かう人の流れが落ち着いてしまえば、校内に残っている人は五月雨のようにしか現れない。
今、この場に居るのは、俺ただひとり。
昇降口の隅にある柱に凭れ掛かり、何をするでもなく、ただぼんやりとグラウンドを眺めている。
授業で運動をする時くらいしか、自分には縁のないグラウンド。
野球部とサッカー部が練習をしているけれど、お互いに全面練習が出来る程に、グラウンドは広くない。
それぞれの練習範囲にボールが飛び込まないよう、仕切りネットを間に挟んで練習をする。
サッカー部は、ボールがそこまで高くは上がらないけど、野球部は違う。
バッティング練習ともなれば、長距離にボールが飛ぶ事だって珍しくはない。
だからなのだろう。
野球部は内野守備が主な練習メニューだし、サッカー部も半面でミニゲーム形式の練習をしている。
俺の通う学校は、運動部の活躍はほとんど無い。
随分と昔・・・父さんがまだこの高校に通っていた頃に、野球部が夏の県大会の決勝に行ったとか、サッカー部が全国大会まであと一歩だったとか、そんな程度だ。
しかもそれぞれ一度きり。それからは鳴かず飛ばず。
それでも、彼らは全国を目指す。
ただひたすらに、全国の頂点を目指して強豪校に行く人たちを相手に、普通の学校の普通の生徒が挑んでいく。
それが羨ましい。
滝のように汗をかき、歯を食いしばる事が出来るのが、羨ましくて仕方がない。
努力し、それが認められる嬉しさ楽しさは、人が感じられる快感の中でも特別なものなのだろう。
だから、みんな何かに夢中になり、必死になって何かに取り組む。
ただ生きるだけなら、野球もサッカーも剣道も、別に必要はない。スポーツだけじゃなく、ダンスやおしゃれ、メイクやネイルだってそうだ。
全国で活躍し優勝する事だって、人生にとっては必須の事ではない。
けれど、そこを目指す人は後を絶たない。
結果が目に見える形で残るのは、それまでの努力や掛けて来た時間が無駄じゃない証拠になるからだろう。
何かをやり切った充足感が、そこには必ずある。そして、その自信は、その後の人生を進むうえでの背骨になりうる。
それが、全国で活躍する事だったり、大会で優勝する事だったり、お店を開き繁盛させる事だったりと、人それぞれ様々に異なるけれど、求めるものがある。
それは、自身を磨き、向上させる原動力であり、前を向く力、進み続ける力なんだ。
・・・
今の俺には、そんなものはない。




