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第四話-3(改)
「はいはい、ふたりとも手を洗って座りなさい。目玉焼き焼けたわよ」
「はーい!」
並んで洗面所へ向かい、笑いながら食卓につく。
目玉焼き。千切りキャベツ。胡瓜。味噌汁。
琥珀の皿にはトマト。
でも、私の皿にはない。
トマトだけじゃない。
苺も、さくらんぼも。
赤い食べ物は、あの日から私の食卓から消えた。
「お姉ちゃんって、ほんとトマト嫌いだよねー」
「……うん。苦手」
胡瓜を口に運びながら、小さく笑う。
真っ赤な血。
あの日の光景は、今も記憶に焼き付いて離れない。
赤いものを食べようとすると、動悸がして、手が震える。
多分もう、一生食べられない。
……でも。
真が元気でいてくれるなら、それでいい。
これくらい、平気だ。
朝食を終え、「ご馳走様」と告げて席を立つ。
お父さんはすでに蜜柑山へ向かう準備を始めていた。
日焼け止めを塗り、軍手と飲み物を持って車へ向かう。
今日は暑くなるかもしれない。
木漏れ日が揺れ、差し込む光が頬を掠める。
蜜柑山は今日も、濃い緑を茂らせながら、静かに私たちを待っていた。




