4-7 たった1人の番ですか?
4ー7 たった1人の番ですか?
次の日。
俺とエリオットは、アズミちゃんを連れて魔王城へと向かった。
城の入り口には、リイルを始めとした城の主だった人々が集い整列していた。
リイルは、俺に手をとられて船から降りるアズミちゃんの姿を見ると、1歩前に出て、頭を垂れた。
「よく戻られました、魔王よ」
「リイル」
アズミちゃんは、俺の手を握りしめたまま、言った。
「よく留守を守ってくれたな。ご苦労だった」
アズミちゃんは、リイルに言った。
「だが、もう、心配はない。僕は、夫と共に帰ってきた」
「夫?」
リイルの目が危険な光を秘めていた。
「この人間が、ですか?」
「そうだ。僕は、カナメと結婚する」
アズミちゃんがきっぱりと言った。
「他の誰も受け入れるつもりはない」
「魔王は、お疲れのようだ。ご案内するように。もちろん」
リイルが城の使用人に命じた。
「婿どのも、な」
俺とアズミちゃんは、別々の部屋へと案内された。
「ご結婚されるまでは、別々の部屋にお通しするのが決まりでございますから」
「カナメ」
アズミちゃんが心配そうに俺を見上げたので、俺は、微笑んだ。
「大丈夫、だ、アズミちゃん」
「こちらへ」
俺とエリオットは、客間へと通された。
俺たちが部屋へと入ると、案内してきた者は、がちゃりと部屋の扉に錠をかけた。
「何?」
エリオットがドアを叩いた。
だが、ドアが開かれる気配はなかった。
「俺たちを閉じ込める気か?」
エリオットが拳に気を込めてドアを殴った。
だが、鈍い音がするだけでドアは、傷もつくことはなかった。
「これは・・」
ピコン、とウィンドウが開いた。
『暗黒石の部屋』
暗黒石?
『暗黒石とは、魔力を吸い打ち消す力を持つ魔石。いかなる攻撃も吸収され、きかない特殊な魔石のことをいいます』
マジでか?
もしかして、俺たち、ここに問い込められてる?
「くそっ!」
エリオットがイライラして言った。
「まずいぞ、カナメ。奴等、俺たちとリゲル様を引き離すつもりだ」
エリオットは、どんどん、と壁を叩いた。
「早く、リゲル様のもとへ、主を連れていかなくては」
エリオットが言った。
「奴等が、リゲル様に危害を加えることなど、もはや不可能だが、リゲル様の夫である主を殺すことは、できる」
はい?
俺は、ぶっそうなことを宣うエリオットを信じられないものを見る目で見ていた。
「勝手に殺さないでくれよ」
「すまん」
エリオットが言った。
「だが、本当のことだ」
エリオットは、俺に話し出した。
「竜人は、普通、生涯1人の相手と番う。そして、その相手が死ぬとき、己も死ぬのだ」
マジですか?
俺は、エリオットをじっと見つめた。
「アズミちゃんのたった1人の相手は、俺だってこと?」
「そうだ」
エリオットは、頷いた。
「リゲル様がこれほど早く成人されたのは、お前を愛したからだ。竜の番となれば、人の身であっても限りなく不死に近くなる。リゲル様は、それ故に、大人になられたのだ。お主を死なさぬためにな。だが、そのために、主は、ここで死ぬことになるやもしれん」
「なんで?」
俺がきくと、エリオットが答えた。
「簡単なことだ。奴等にとっては、リゲル様は、邪魔な存在。これまでのようにお飾りならまだしも、本物の魔王となられては、困るのだ」
はい?
魔王が邪魔だから、俺を殺すって?
俺は、もう、頭にきていた。
勝手なことばっかだな!
「そんなことが」
俺は、暗黒石の壁に触れた。
ぐにゃっと足から崩れ落ちる。
力が。
力が抜ける。
俺は、慌てて壁から手を離した。
「でも、さすがにここから出られないなんてことは」
「奴等は、我々をここに押し込めて殺す気だ」
エリオットが言った。
「というか、死ぬのを待つ気だろうな。ここからは、どんな強者も出ることができん」
ええっ?
俺は、呆然としていた。
ここで、俺たち、死ぬんですか?




