3-6 反乱をおこしますか?
3ー6 反乱を起こしますか?
断りきれずに、俺は、その奴隷をリリスさんから譲り受けることにした。
荷車の御者台から降りると、リリスさんは、俺を荷車の中へと導いた。
薄暗い荷車の中には、檻が1つだけ置かれていた。
その檻の中には、1人の大男が窮屈そうに押し込まれていた。
男と、目が合う。
背筋がぞくっとした。
まるで、人を殺すために生まれてきたみたいな男の目だった。
「この人は?」
「この方は、エリオス様。かつて、国に反旗を翻し、奴隷の身分へと堕とされた剣士、エリオス・トルネド様でございます」
国に反旗を翻した?
俺は、檻の中の大男を見つめた。
たぶん、犬耳族らしい外見のその男は、上半身は裸でぐるぐるに縛られていた。すごいムキムキの筋肉をしている。
顔は、そんなに男前という訳ではなかったが、苦み走ったいい感じの男だった。
右肩に奴隷紋が痛々しい。
「その、この人の主人になる前に、なんで、国に反旗を翻したのかきいておいてもいいかな?」
俺がきくと、リリスさんは、驚きの表情を浮かべた。
「エリオス様の事件をご存じないのですか?」
「いや」
俺は、もごもごと言った。
「ちょっと長く外の国を旅してたものだから」
「いいですか?カナメ様」
リリスさんは、できの悪い子供に言い聞かすように話始めた。
「この方、エリオス様は、元騎士団長だったのですが、人間との戦いにおいて死んでいったハーフの魔族たちのことを宰相たちがあまりに蔑ろにしていることに憤り、国に戦いを挑まれたのです」
「ハーフの魔族?」
「そうです。人の奴隷との間に生まれた魔族は、少なくはありません。だが、そういった人々は、奴隷にされたり、奴隷ではなくとも、より苦しい戦場へ送られたりしているのです。なのに、死んでも死体も回収されることがないし、家族への保証もありません。だから、エリオス様が立ち上がってくださったのです」
「そうなんだ」
俺は、少し、考え込んでいた。
この国には、国政を握った者に対する反抗勢力がいるんだ?
「あの、少しききたいんだけど」
俺は、訊ねた。
「こういう反抗勢力って、かなり力を持ってるんですか?」
「それは・・」
リリスさんが口ごもると、檻の中からエリオスが低い声で言った。
「かまわん、リリス。話してやれ」
「は、はい。エリオス様」
リリスさんは、俺に話した。
「実は、あまり知られてはないのですが、今の魔王様は、人の奴隷を母に持っておられるのです。これを好機とみて、我々、ハーフの魔族たちは、この国に革命を起こそうとしているのです」
「なるほど」
俺は、頷いた。
奴隷による革命、か。
「このままでは、若き魔王様のお命も危ない」
エリオスが言った。
「ただ、魔王様は、今、魔王城には、おられないということだが」
うん。
すごい情報網だな。
俺は、思っていた。
かなりこの人たちは、強い勢力を持っている?
「俺がこのエリオスさんの主人になるのはかまわないけど、その前に、1つだけ言っておきたいことがあるんです」
俺は、擬態を解くと、人間の姿に戻った。
「俺は、人間です」
「な、なんと!?」
驚くリリスさんに、エリオスさんは、低く笑った。
「気づいていたさ。あんたは、なんというか、魔族にしては、人間臭いからな」
人間臭い?
俺は、くんくん自分の臭いを嗅いでみた。
それを見て、エリオスたちは、笑った。
「人がなぜ、こんなところに入り込んでいるのかは知らんが、面白い。我が主人と認めよう」
こうして、俺は、エリオスの主人となった。
俺は、グロリィの街に行くのは、止めることにした。
たぶん、知りたいことは、エリオスから教えてもらえるだろうし、わざわざ騒ぎをおこすこともないだろう。
というわけで、俺とエリオスは、そこでリリスと別れて船へと戻ることにした。




