3-1 アズミちゃん、故郷に帰る
3ー1 アズミちゃん、故郷に帰る。
俺は、アズミちゃんに話しかけた。
「アズミちゃん、ちょっと人の姿になってくれる?」
「きゅう?」
アズミちゃんは答えると、すぐにあの少年の姿になった。
「何?カナメ」
「アズミちゃんは、本当は、魔王なんだよね?」
俺がきくと、アズミちゃんは、頷いた。
「うん、そうだけど」
アズミちゃんは、本名 リゲラリス・リリカリテという名前の魔王だった。
つまり、魔族の王様、だ。
「なんで、アズミちゃんは、一人でクリスティア王国まで来てたの?」
俺がきくと、アズミちゃんは、少し、答えるのに躊躇していた。
ええっ?
そんな、答えにくいことなの?
女?
もしかして、恋愛絡みの話?
俺が一人で妄想に耽っていると、アズミちゃんが答えた。
「父上に会いに行ってた」
はい?
なんか、ちょっと以外な理由だったが、アズミちゃんは、語った。
アズミちゃんの父親は、この世界の最高神である竜神と呼ばれる神であり代々のクリスティア王国国王に加護を与え、クリスティア王国を守護してきたのだという。
だが、本来は、いくら、実子とはいえそう簡単に会える存在ではなかった。
「だけど、会いたかったんだ」
アズミちゃんは、涙ぐんだ。
無理もない。
アズミちゃんにとっては、竜神は、ただ一人の家族なのだという。
アズミちゃんは、魔王とはいえ、人の年齢でいえば、まだ、7才くらいなのらしい。
しかし、最近、母親が病気で亡くなり、アズミちゃんは、一人ぼっちになってしまった。
だから、アズミちゃんは、産まれてから一度も会ったことのない父親に会いたかったのだという。
会って、母親の死を伝えたかった。
だけど、魔王であるアズミちゃんが魔界を出て、クリスティア王国へ行くことは、許されないことだった。
だから、アズミちゃんは、家出同然に一人でクリスティア王国へと向かったのだという。
だが、一人で旅をすることも、魔界の外にでることも、初めてだったアズミちゃんは、すぐに路頭に迷うことになった。
お腹をすかせて、ふらふらしていたところを人に追いかけ回されて、弱りきっていた。
そして、魔法のかけられていた飛びウサギ用の罠にかかってしまったらしい。
「で?お父さんには、会えたの?」
俺がきくと、アズミちゃんは、ふるふると首を振って、うつ向いた。
「会えなかった」
「そうなんだ」
俺は、かわいそうになった。
いずれは、クリスティアに戻り、アズミちゃんを父親に会わせたい。
そう思っていた。
「アズミちゃん、魔族の仲間のところに帰りたい?」
「ううん」
アズミちゃんは、答えた。
「僕は、ずっとカナメと一緒にいたい」
「そっか」
俺は、言った。
「でも、きっとみんな、心配してるよ。一度、帰っておいた方がいい」
「うん」
アズミちゃんが嫌そうに頷いた。




