3-2 アズミちゃん、故郷に帰る(2)
3ー2 アズミちゃん、故郷に帰る(2)
俺は、アズミちゃんに言った。
「大丈夫。俺も、一緒に行くから」
「本当に?」
アズミちゃんの顔がぱぁっと明るくなった。
「約束だよ、カナメ」
俺は、抱きついてきたアズミちゃんの頭を優しく撫でてやった。
それから、俺は、アズミちゃんに訊ねた。
「魔族の国って、どんなとこ?」
「うん。退屈なとこだよ」
アズミちゃんは、眉根を寄せて言った。
「こっちの方が、ずっと楽しい。ご飯も美味しいし」
「そうなの?」
俺は、アズミちゃんから魔界についていろいろと聞き出した。
魔族というのは、戦いに特化した民族なのだという。
国という形をとってはいるが、それぞれの種族のクランに属し、あまり他の種族とは交わることはない。
一応、魔王城のある魔界の都 クロウナーゼを中心に大小の都市が連なっているらしい。
「もし、行くならクロウナーゼだな」
俺が言うと、アズミちゃんがちょっと困った顔になった。
「魔族は、排他的なところがあるからなぁ。人の子であるカナメが受け入れられるかそうかは、僕にもよくわからない」
「アズミちゃんがいるのに?アズミちゃんからみんなに紹介してもらえるかな?」
俺が頼むと、アズミちゃんは、笑顔で頷いた。
「うん。もちろんいいよ、カナメ」
俺は、アズミちゃんの故郷の話をきいていた。アズミちゃんが言うには、とにかく魔界は、こっちに比べると食事が不味いらしい。
それは、魔界には農耕の文化があまりなく、野菜も、調味料もなしで、ほぼ肉を焼くだけだからだとアズミちゃんは、言った。
彼らにとっては、食事は、空腹を満たすためのものであり、人間のようにその風味を楽しむことはないのだという。
なるほど。
俺は、頷いた。
問題なのは、魔族が人間というか、砂漠の民と戦争中ということだった。
それも、たぶん、なんとかなるだろう。
なにしろ、こっちには、アズミちゃんがいるんだし。
俺は、まず、魔族の胃袋を掴むことにした。
砂漠の民から仕入れた塩や、香辛料を魔族に売ることにした。
それに、小麦や米、野菜も。
そして、それと引き換えに魔族から魔石を手に入れることにした。
魔族は、人より魔力が強い。
それは、魔界が人間界より魔素が濃い聖地だからだと、アズミちゃんは、言った。
人の世界では、いろいろなことに魔石が使われているが、人界には、魔石は、そのままでは存在しない。
倒した魔物の体内から取り出すか、ダンジョンの壁を掘るかしなくては、手に入らない。
それが、魔界には、普通に存在しているのだという。
「魔界に行くなら、早い方がいいよ」
アズミちゃんが俺に言った。
「魔界は、冬が長い。そして、長い冬が終わると春が来る。春は、魔族にとって、子作りの季節だ。その頃になると、魔族は、いつもより気難しくなり、自分達のテリトリーに入られることを嫌う。魔族と話をするなら、冬に限るんだよ。冬なら、心が広くなり、他者を受け入れやすくなっている」




