エピローグ
美味しい所をリーンフリークスが頂いたようなこの“決闘”の結末。
クロードが少し機嫌が悪かったのは良いとして。
残りの“黒の影”を、学園内総出で駆除をしているらしい。
ただやはり量が多いとの事で、私がすぐさま“探査”を使って場所を特定し攻撃した。
それで一応は一通り倒したことになるだろう。
“黒の影”は普通、一人数個体相手では出来ないよなものであるらしい。
その割にはリーンフリークスや、彼の友人であるアンバーの話を聞くと首をかしげたくなるが。
こうしてどうにか全てを終わらせた私達は、食堂で飲み物を購入し、あまり人気のない場所へ。
そこでマリアの友人達(クレイも含めて)謝られてしまった。
“黒の影”がいなくなって、何かが解けたのかもしれない。
精神に作用する魔法を発していたのだろうか?
状況に付け込むのも彼らの手口でもあるので、一概に魔法とは言えないかもしれないが恐ろしい敵であったのは確実だ。
今度は油断しないようにしようと私は決める。
それから、これからもマリア達と協力していこうといった話になる。
お友達兼仲間が増えたよ!
そしてそれから私達は分かれてクロードと二人きりになる。
だからまず私は、
「チュートリアル君、庇ってくれたよね、今日」
「……別に、体が勝手に動いただけだ」
「そうなんだ、いざという時は自分が生き残ってって言っていたのに、クロードは素直じゃないね」
「……今度油断したら見捨てるからな」
「油断しないよ。そしてその油断を補てんするために防御系のアイテムを作ろうと思の」
「……“聖女”のアイテム、それも異界の知識を利用したもの……どんな恐ろしいアイテムが」
「あ、さっき思い出したけれど、“聖女”以外でも装備できる強力なアイテムが作れるよ」
「……そうか」
クロードはとうとう全てを諦めることにしたらしい。
突っ込みすらなく代わりに、
「それで思い出したって、何をだ?」
「えっとね、この世界って私の知っているゲームの世界に凄く似ているんだ。だから“知っている”みたい」
「……詳しく」
そこで興味を持ったらしいクロードに、ゲームについて説明する。
また、ゲームと現実との差異についても。
するとしばらく考え込んでからクロードが、
「ゲームの人物設定、事象、舞台装置が同じか。そしてこの世界についてある程度認識できる人間と召喚条件をしたから……なるほど」
「どういうこと? 何が分かったの?」
「数多ある世界であれば、同じような“似ている”物はどこかに確率的に存在する、それは分かるな?」
「うん」
「そして俺は、この世界に“似ている”物を知っていて会話可能な人物を呼んだ。その条件だと、普通は異界の知識はもたないけれど、“似ているもの”を知っていて認識できて思考ができ、会話が可能となる。この世界の適正さえあれば、物語だろうが、そのミドリの言うゲームだろうが“知っていれば”条件に当てはまる」
「そうなんだ」
どうやら物語で似たような世界を知っていてもこの世界を知っている認定になるらしい。
随分ふわっとした定義だなと思っていると更にクロードが、
「そうなんだよ。それでさっきゲームと差異がある、とミドリは不思議がっていたが、人物設定、事象、舞台装置がある程度同じならば、それらを組み合わせて予測される出来事はほぼ同じになるはずなんだ。例えば、ミドリはのどが渇いていて目の前に水の入ったコップがあったら手を伸ばすだろう?」
「うん、目の前にコップがあれば」
「但しそこで誰かに呼ばれたり別の用事が出来たら行動や事象が変化する。例えば、俺が別のジュースを持ってきたらそれを飲むだろう? そう言った些細な変化で大筋はそのゲームによって予測されている出来事と同じになる。だから、これから起こることを“知っている”ように見える」
「うーん、シミュレーションしたみたいな?」
「シム? ……よく分からないがそういう物だと思う」
似たような状況と条件によって引き起こされる結果だから、“似ている”らしい。
私が知っているゲームの内容がこの世界の“予測”になっているようだ。
面白い世界だなと私が思っているとクロードが、
「けれどほとんど同じような世界の物語か。膨大な量、その中に“確率”として存在する、全てがゼロではないというだけ。……そして“偶然”俺はミドリを引き当てた」
最後にミドリを引き当てたといった所で、クロードがほんの少しだけ微笑んだように私は見えた。
そう言えば召喚条件に何か変なものを入れたような雰囲気であったのを思い出してそこで私は、
「チュートリアル君、私の召喚条件に何を足したの?」
「そ、それはその、個人的なもので」
「どうしてこんな風になったのか知りたいな。平凡といった理由じゃなくて別の理由を教えて欲しいな」
「……だったら元の世界に一時帰宅してもまたこの世界に戻ってきてくれるって約束できるか?」
「うん」
私が即答するとそこで、クロードが深々と息を吐いてから意を決したように、
「……俺好みの女の子がいいな、とか。どうせなら好みの子がいいなって」
「……チュートリアル君は、振り回されるのが好きなの?」
「自覚があるのか。そして、それはないな」
「えー、実は自分が振り回されたいって思ったんじゃないのかな?」
「人をマゾみたいに言うな。というかそろそろチュートリアル君と呼ぶのは止めろ」
「ん? クロードって呼んでほしいの? 名前で」
「……それは、まあ」
声が小さくなっているが、クロードと呼んでほしい様だ。
色々あって私は……クロードを信頼できる人物だと思っている。
だからそろそろいいかなと思って、
「分かった、これからクロードって呼ぶね」
「あ、ああ……というかチュートリアル君ってどうい意味なのか教えろ、いい加減」
「うーん、説明役、所謂、神視点ってやつ? ゲームではそういったものがあるんだよ。この世界の事を教えてくれたり、力の使い方を教えてくれたりする、ね。あれ、クロード、どうしたの?」
「いや、ミドリは変な所で聡いんだかボケているんだかと思っただけだ」
「何よそれ」
そう言い返しつつもクロードが何となく楽しそうだからそれ以上は追及しない。
代わりに今日は、
「私ね、クロードのこと好きだよ」
「……友達として?」
「うん」
「……今はこれぐらいでいいよな」
そんな会話をしながら、今日は皆で盛大に倒したお祝いをしようと夕食にケーキを食べる案を私は出したのだった。
ミドリは変な所で聡いとクロードは思う。
神殿からの召喚命令が、ミドリの言うマッチポンプのようだとか、神視点がチュートリアルとか。
以前話した神話は本当の事。
“闇の影”に対抗するためにこの世界の神様は人になった。
断片的な知識しか覚えていないがクロードがそう。
だから異世界から“聖女”を呼ぶという特殊な力を持っていた。
この世界の外側に普通のこの世界人間は認識できないのだから。
そしてちょっとよこしまな気持ちで呼び出したミドリは初めは扱いにくそうだと思ったけれど。
一緒に居るうちにもう少し、一緒に居たいと思った。
嫌われたら嫌だからまだ黙っていよう、やっぱり異界に突然呼ばれたらあまりい感情がないだろうし、もう少しだけ、今のままでと思って未だにその話は出来ていない。
そんなクロードにミドリが言った言葉。
「私ね、クロードのこと好きだよ」
「……友達として?」
「うん」
「……今はこれぐらいでいいよな」
そう自分を納得させるクロード。
だってミドリはまだクロードの近くにいて、そして……嫌われてはいないのだから、機会はある。
まだまだ色々な約束はある。
ギルドカードが欲しいとミドリは言っていたし。
だから、もう少し頑張ってみようとクロードは思ったのだった。
ここまで読んで頂きありがとうございました。とりあえずは当面のボスを倒してほのかな恋心を抱いた感じのお話です。それではまた何か投稿しましたら、よろしくお願いします。




