“ご都合主義”の方かな
クロードの私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
同時に爆風で私の周囲が何も見えなくなる。
チリチリと肌を刺す感覚。
氷や炎、雷、風、そして鋭い何かが飛んでいくのを感じる。
“黒の影”自体がその“闇の影”の魔力の塊で、自身の存在すらも攻撃魔法に変化させたのだろう。
それも先ほど彼自身が説明してくれたように、幾つも違う魔法での攻撃で私の防御を打ち破り抹殺しようとしたのだろう。
やがて私の視界が晴れてくる。
そこにいたのは、笑みを浮かべたまま凍り付いた“名前の知らない先生”と何で大丈夫なんだというかのようなマリア達の視線。
なんでだろうなと思いつつ私は思い出した。
「“ご都合主義”の方かな。対象者が私だし」
「な、何を言っているんだ」
“名前を知らない先生”が焦ったようにそう言っている。
確かにそれだけ聞くとよく分からないが、でも、理由は推測できる。
この“ご都合主義”の性質。
そう、“ご都合主義”は確率操作だ。
“最終形態絶対防御”は攻撃に対抗する力だが、“ご都合主義”はその確率操作、つまり魔力の流れを上手く“受け流した”のだと思う。
何かの“事象”が起こる確率を極端に変化させて望ましい“状況”を作り出す。
だから今の攻撃で私は幾らか肌がピリピリする感覚を味わった。
両方の効果の合わせ技でこのような状況だったのだから、相当強力な魔法だったのだろう。
私を確実に“殺す”ための。
だからこの“名前の知らない先生”は驚いているのかもしれない。
でも、私は決めていた。
「私はもう、“油断”しない。私の持てる最高の力を持って、お前を倒す」
宣言と同時に、ある魔法を選択する。
その場に敵を拘束する魔法。
この魔法は動きを鈍くさせ、命中率を上げるのだとゲーム内の解説に描かれていた。
発動するその魔法、即座にその“闇の影”と思しき“名前の知らない先生”……もとい、紛れ込んだ先生のふりをした不審人物を拘束する。
この人物は本来この学園に存在していない人物なのだ。
けれど“闇の影”の力によってこの学園内に潜伏していた。
その人物を捕らえたと同時に私はマリアに、
「マリア、一番強力な魔法を使うよ! 超弩級神聖魔法“静寂の鎮魂歌”を選んで!」
「は、はい!」
慌てたようにマリアが選択する。
後は自動だった。
口の中で言葉が跳ねるように“音”を紡いでいく。
『静寂は歌う
静かなる時の中
高らかな声
響く一時の花は
咲き乱れ揺れる
その栄華は
悠久を約束する
幻想を見せ
されど過去
幾度となくある
終わりへと向う……“静寂の鎮魂歌”』
重なり合う歌声が、その人物の真下に魔法陣を描く。
高威力の技は、攻撃範囲が狭い。
逆に言えば、狭くすることで威力を高く設定する、浄化の魔法。
倒すと決めた。
だからこの魔法を選択した。
そして……断末魔の悲鳴を上げながら、それは消失した。
倒す瞬間は余りにもあっけない。
周りには、“闇の影”の残渣もなく、初めからなにも存在しないかのように消失した。
終わった。
そう私は思った私のすぐわきの茂みから“黒の影”が現れた。
完全に油断した。
クロードが慌てて何か魔法を使おうとしているのが見える。
防御はどこまで効果があるか、そう私が思っていると、その“黒の影”が炎に包まれた。
「油断は禁物だよ、ミドリちゃん」
リーンフリークスがそう言って姿を現したのだった。
次回、エピローグ




