恐ろしい敵
油断していそうだから倒せそう、そう彼は言ったが、
「でも私は“最終形態絶対防御”があるよ」
「絶対に壊れないものはないしそれに、どんなものでも必ず“弱点”がある。特にお前のその防御は、“物理攻撃”“魔法攻撃”の両方に効くらしい」
「それがどうかしたの?」
「防御の魔法はそれぞれ、ある属性には弱めな傾向がある。なのにお前のそれには影響がないらしい。それが“奇妙”だと思ってね」
そう話す彼の言葉が私の不安を駆り立てる。
“闇の影”は敵として現れる危険な相手だが彼は、私のあの魔法を知って、何か対策を立ててきたのかもしれない。
確かに私はこの魔法を使えるし知っているが、どんな風にこの魔法が“実行”されているのか分からない。
警戒と躊躇。
そのわずかな時間が、この目の前の相手にとっては必要だったようだ。
ぞくりと感じた。
“黒の影”。
以前の“決闘”の時に感じたものよりも強く、そして沢山いる。
目の前の彼ではない。
今回も審判を持ってくれた“名前の知らない先生”だ。
二匹“闇の影”がいたのか。
それともどちらが本体なのか。
けれどどちらも私にはよく分からない。
隠すのが上手いといった話を聞いていたが、未だに私はこの二人がよく分からない。
「マリア!」
クレイが焦ったようにマリアを庇おうとする。
他の友人達も、マリアを守ろうと集まってきている。
私もすぐにクロードに、
「クロード、下がっていて、危ないから」
「そうさせてもらうよ」
「……うん、さっきはありがとう」
「庇わないと、ミドリが“死ぬ”と思ったからな。不意打ちの強力な攻撃は、緑の攻撃を破りそうだった」
「……その攻撃を私はよく見ていなかった。でも、庇ってくれてありがとう。次は油断しない」
「そうしてくれ。……俺は、集まってくる“黒の影”がミドリ達の邪魔をしないように見ているから……あいつらはよろしく」
「うん」
そう答えて私からクロードが離れていく。
そこでクレイが、
「なんでカルロ、お前が裏切るんだ!」
「裏切る? 僕は初めから貴方の仲間ではありませんよ? ただ単に“聖女”らしき人物の行動をしばらく様子見していただけです。失敗すれば、警備が強固なものになってしまいますからね。それに、“囮”の“偽物”に手を出せば相手は警戒するでしょうからね」
そう告げるカルロ。
どうやらずっと彼らは様子を見ていたらしい。
“闇の影”は、我々を倒す機会をずっと伺っていたようだった。
絶句するマリア達だがすぐに警戒するようにマリアを守ろうとする彼ら。
とりあえずマリアさえ守ってもらえれば後は、この狡猾な“敵”を倒せばいい。
どちらが本体であるのか
だが今はどちらでもいい。
だが“黒の影”は今の会話の間も呼び出そうとされていて、止め無いと、そう思って私は、“名前を知らない先生”の方に照準を絞った。
“名前を知らない先生”の口が、弧を描くように嗤う。
トンと何かが地面を蹴る音がして、目の前に“名前の覚えられないマリアの友人”がいた。
「“虹の祝福”」
それは私がこの前魔法演習で覚え魔法だ。
初めての魔法。
そして威力も強いらしいが、今の所それらの魔法は連続して撃ち込まれているがこの程度は大丈夫なはず。
そこで、この“名前の覚えられないマリアの友人”が私に向かってナイフを降り下ろした。
顔に向かって貫くように壮絶な笑顔を浮かべた“名前の覚えられないマリアの友人”がナイフをふるい攻撃する。
もっともそれははじかれるようにして、私の顔面に沿うように動いて、
「いたっ!」
そこで私は痛みを感じだ。
鋭い刃が一瞬、私の頬をかすめた。
私の属性が突破されたとある意味で衝撃を受けるとそこで、“名前の覚えられないマリアの友人”が嗤う。
「やはりそうか、そして、お前は“油断”しているのか」
「……何を言いたいの」
「簡単な話だ。前回の時よりもお前の防御能力は“弱く”なっている。様子を見ていて思ったがお前の“意思”によって魔法が制限されているようだと気付いた。だから“慢心”がお前を今は“弱く”している。この程度であれば、先ほどのクロードへの攻撃で打ち破れたのにな」
やはり、クロードへの攻撃は私の防御を貫通する程度のものであったようだ。
だがそれくらいの強い防御の魔法もあの時、クロードは張ったのだろう。
それでもあれくらいの大怪我だったのだ。
私の“油断”がクロードの危機を引き寄せた。
それが私は許せない。
倒してやる、そう思っているとそこで、
「そして今どうして僕がそれよりも弱い攻撃しかしなかったと思う?」
私は彼から距離を取ろうとした。
彼は嗤って更に続ける。
「どの攻撃にも対処できる。けれど先ほどの攻撃では、最後のナイフの攻撃はお前に届いた。つまり……その防御は攻撃された瞬間、瞬時にその“魔法”を“分析”してそれに“最適”かそれに近い防御の魔法を張る、そういった魔法なんじゃないかと考えた。そして攻撃した時に“分析”が行われるためにわずかな時間が必要になり、その“分析”には“分析”出来る量が決まっている」
それを聞きながら私は、その敵の推測が当たっているのではと気づいた。
能力を調べて弱点を突く、嫌なタイプの敵だと私は思う。
そんな彼は更に私に、
「僕は“黒の影”。“闇の影”の下僕であり、作られた存在だ。いわば、“戦闘の道具”、その意味が君には分かるかな?」
そこで彼が私の目の前に来て、嗤う。
私は防御を、と思ったがそこで、目の前を炎ような光があらわれて、
「ミドリ!」
クロードの焦った声がどこかで聞こえて、爆風が私の周囲を覆ったのだった。




