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47/50

思い出したこの世界の事

 私の世界にあるゲームで、“プラクティス・ワールド~フィリル魔法学園のとある“聖女”の事情~”というゲームがある。

 よくある西洋風ファンタジーの一種だが、家庭用ゲーム機から発売されたそれはゲーム機を購入すれレベルの大人気商品になり、周りの、少なくとも私の同年代の人達はみんなやっているようなゲームだった。

 多分に漏れず私自身もそのゲームをやって楽しんでいた。


 多数派に迎合する平凡な私とはいえ、そう言われようが少なくとも“面白い”物は面白いと感じるし、“楽しい”物は楽しいと感じる。

 しかも他の人と好きな話で盛り上がれるのだ!

 それは無理に話を合わせる必要もなく、私にとって心地よい話題だった。


 さて、この物語の主人公は、マリア(偽名)である。

 攻略本だけでなく設定集、ノベライズまで購入してしまった私はそれらを事前に読んでいたので、裏設定まである程度知っていた。

 ゲームもプレイ済みだったので、話の流れも全部知っていた。


 その能力も。

 そして私はこの世界に呼び出された。

 異世界召喚なんて、物語か何かの世界の話で、“平凡”な私には縁のない話だと思っていた。


 やはり“嬉しかった”のかもしれない。

 私を選んでくれてありがとう、と。

 ただ目の前にいたクロードの、使い勝手が良さそうという、あの言い分は気に入らなかったが。


 とはいえ全く知らない人物であったクロードは、彼なりにこの世界について教えてくれて、彼がいるから私も少しこう“無茶”をしてしまっている部分があるのかもしれない。

 恋愛感情といった男女の甘酸っぱい感情というよりは、“信頼”に近い、長年連れ添った“夫婦”のような感情を私は抱いているのだろうか。

 やがてこの世界のに関して幾つか聞いて、とある“学園”の話を聞いて私の記憶が結びつく。


 この世界に呼び出された影響かどうかは分からないが、思い出せない状況になっていたのは確かだ。

 現実に私はこのゲームの存在をよく覚えていない、それこそ断片的にしか思い出せていなかった。

 ただ私の能力はそのゲーム内能力だけではなく……その、まあ、うん、“わたしのかんがえたさいきょうのげーむのうりょく”に変質させてしまっているのは事実だが。


 そしてこの世界はゲームの世界とはやはり少し違っている。

 その差異が何に起因しているのかは分からないが、大筋は同じだから“誤差”だろう。

 だから、“闇の影”はしっていて、名前の覚えられない人や名前の知らない人に私は警戒していたのだ。


 覚えていなかったのは確かに中途半端にしかゲームの記憶が無くて、そしてまだ全てを私は思い出していないのかもしれないけれど……彼らの名前を覚えられない、そして“知らない”のは、このゲームの作中で彼らが“名前のない化物”として語られていたからだ。

 それにより、彼等にはゲーム内で“名前は無い”。

 だから私は覚えられなかった。

 

 それもゲームと現実との差異だろう。

 女の勘という予感は一部が正解で一部は間違っていた。

 まだ彼らは手を出してこない、ある意味で私は楽観視して油断していた。


 この力があれば何でもできると、なんでも守れると私は“過信”していた。

 それが私の過ち。

 クロードに大怪我をさせてしまった。

 

 このお下がりの制服を着ていたから、どうにかこの程度で済んでいるのかもしれない。

 そもそもこのクロード、いざとなったら私を見捨てて生き残らないとと言っていなかったか?

 全くクロードは、口ではそう言っていても中身は……であるらしい。


 そして私はこの油断が招いたこの事態を重く受け止めないといけない。

 今回は“大丈夫”だが、次もそうだとは限らないのだから。

 ここまでの思索は、一瞬にして私が頭の中で描いた出来事。


 凍らされるように冷えていく頭の中で私は冷静に選ぶ。


「“選択画面”、“治癒魔法”、“悠久の癒し”」


 それと同時に私の足元に光の魔法陣が現れて、抱き留めたクロードの傷をいやしていく。

 炎の攻撃なので火傷のような物を負っていたが、瞬時に癒されて、苦悶の声を上げていたクロードは何事もなかったような表情になる。

 けれど私は治ったのを確認してすぐに、その攻撃をしてきた相手に視線を移した。

 

 私の視線の先にはその人物がいる。

 ついこの間まで、マリアと一緒に居た人物。


「……油断しているなら倒せそうだと思ったのに、ね」


 そう彼は、マリアと一緒に居る名前の覚えられない彼は嗤ったのだった。



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