不確定要素が入った
待ち伏せされているかどうかといった話が出てきた。
そうなれば襲ってきたところで速攻で、返り討ちにしてやる……私はそう決めていた。
来るなら来いという気持ちだった、のだが。
「確かにミドリの力は使いやすいし強力だ。だが、それだけだ」
「つまり何が言いたいのかな?」
「降りるのも一番最後だ」
「! 私の力が震えないよ!」
「それでいいんだ。あまり目立つ行動をするな。要所要所で力を使って隠密行動で敵を倒す……俺が求めていた“聖女”はそっちだったのに、なんでこんな火力が全てみたいなのが召喚されたんだろう」
ぶつぶつ文句を言うクロードだが、普通に考えて、平凡だからと言って従順で大人しく丸投げされると思っているのが間違いなのだ。
都合がいい相手なんて、そもそも存在しないというのに。
全くクロードは、と私が思っているとリーンフリークスが、
「実はミドリちゃんを呼ぶときにちょっと変な設定条件を入れてしまった、とか?」
「変な設定条件、条件ね……いや、あれは関係ないな、うん」
「本当に関係がないのかが気になるね」
「ないない。つい呟いただけだから、それが影響するとは思えない」
「それは、不確定要素が入ったという事かな?」
「……」
沈黙したクロードが私を見て、それはもう穴が開くくらいによーくまじまじと見てから、
「それはないな、ちょっと呟いただけだし、それの影響が全くない。さて、行こう。いつまでもこんな場所にいるのは良くないだろう」
「ねえねえ、何を追加要素にしたの?」
「ミドリには関係ない。ほら、行くぞ」
そう言ってクロードが私の手を引いてリーンフリークスを自分の前に押し出す。
それにリーンフリークスが、
「僕が一番前で一番初めに対処することになるね」
「先輩なので頑張ってください」
「こういう時だけ先輩か。まあ、良いけれどね。こう見えても魔法は得意だし」
困ったようにリーンフリークスは笑い、こうして私達はゆっくりと階段を下りながら、
「ミドリちゃん、鍵かけてもらえるかな」
「はーい」
というわけで一番最後の私が鍵をかけることに。
これって、クロード、私、リーンフリークスの順でよかったんじゃないかなという気もしたが、クロードの戦闘の支度無さは何なのだろうかと思う。
結局今まで全然クロードの強さを見ることが出来ていない。
そう思いながらも鍵をかけてリーンフリークスに返す係を延々にやってきて、やがて、埃の積もったガラクタの転がった階に辿り着き、そして、一階に。
そこで私は気づいた。
「ここ周辺を“探査”しますか?」
「申し出はありがたいけれど、必要ないかな。だって……何かがいる気配がするし」
「え?」
「ミドリちゃんは分からないか。クロード君はどうかな?」
そこでクロードに話を振るリーンフリークス。
それにクロードが、
「分かりませんでした」
「今まではどうだったかな? “黒の影”のようだけれど」
「! 本当ですか?!」
「気配を殺すようにしているようだけれど、ここの学園は僕の領域であり“庭”だからね。“異物”は容易に感じ取れる……と言いたいところだけれど」
一度リーンフリークスは言葉をそこで切った。
それから深く息を吸って吐いてから深刻そうに、
「それらから“黒の影”はその気配を感じ取られないように……何か魔法を使っているようだね」
「……聞いた事がない」
「うん、“黒の影”にすらそれを施すのは話に聞いた事がないね。でも、この“学園”で“目立たない”ように行動するには最適な能力だ。目的の“聖女”のアイテムをどうにかするにしても、この“閉鎖的”な“学園”を乗っ取るにしても」
そこまで考えるようにつぶやいてからリーンフリークス、そこで、困ったような顔をした。
そして、1、2、3と数えて行ってから、同時に何かがびちゃびちゃ音を立てて落ちていく音が聞こえた。
それらが聞こえなくなって、リーンフリークスが、
「彼、そういえば夜行性でしたね。しかも感覚が鋭敏でしたから……なるほど、ふむ」
そこで扉が開かれる。
現れたのはリーンフリークスと同じくらいの年齢に見える美形だった。
彼はリーンフリークスを見て、
「なんだ、中にいたのはリーンだったのか。これなら、俺が動くことはなかったな」
そう言って、彼は大きくあくびをしたのだった。
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