普通の服に着替えてくるよ
約束していた場所は“幽霊塔”と呼ばれる、ここの学園で一番古い塔の前だった。
塔と名前がついているけれど、細長石造りのビルといった印象である。
ただ周りには緑色の蔓がもさもさと生えていたり、さびた金属の看板のようなものがついていたりひびの入ったガラスがはめ込まれたりしている。
いかにも何かが出てきそうな、不気味な場所である。
ちなみに今、ここの一階は物置として使われているらしい。
それもいらなくなったけれどいつか使うかもしれないようなものが……。
といったような状況であるらしい。
二階もそのような状態で、入るだけでも一苦労だそうだ。
そしてここの“幽霊塔”にはそういわれるだけの怪談話があるらしい。
曰く、その昔恋人に振られた女子学生が自殺をして、彼女は今もこの“幽霊塔”をさまよっている。
曰く、森で死んだ子供の幽霊が住み着き、夜な夜な寂しがり屋の彼は仲間をもとめて人を誘うらしい。
曰く、住んでいる幽霊に名前を告げると、その幽霊がずっとついてきて仲間に引きずり込まれるらしい。
曰く、この“幽霊塔”には鏡の悪魔が住んでおり、その鏡に願うとどんな願いもかなう代わりに段々と自我が無くなるらしい。
曰く……。
というように、怪談話に事欠かないこの場所。
この学園七不思議に数えられるらしい。
ちなみに四番目の話は、“闇の影”が封じられていた鏡がこの学園に紛れ込んでいたらしく、多くの犠牲を払って破壊し倒したらしい。
ただその関係でこの塔の上層部は長い間は入れない状況になってしまったそうだ。
“闇の影”が滅ぶときに残した呪詛でしばらく触れない状態だそうだ。
浄化系の魔法もそこまで効果はなく“聖女”でないと癒せないだろう、後は時間の経過か、といった話になっていたのだそうだ。
その話をリーンフリークスから聞いたクロードが、
「……よほど強くて危険な“闇の影”であったみたいだな」
「そうだね。鏡に封印するしかなかったようだからね。しかも抜け出してくるからね」
「けれど昔の話、か」
「そうだね、70年くらい前の話らしいね。だから今はもう何とも無いよ」
そう告げて、お外の日差しが明るい中リーンフリークスは“幽霊塔”の入り口を躊躇なく開いた。
中から、もわりと灰色のホコリが噴出してきて、リーンフリークスはさっとそれをよけてから、
「……どうしようか。洗濯が大変そうだね。特に学園内の指定の制服だと……」
「俺達はまだ支給されていないので大丈夫です」
クロードがリーンフリークスに言う。
そこでリーンフリークスは少し考えてから、
「20分くらい待っていてもらえるかな? 今すぐに普通の服に着替えてくるよ」
そうリーンフリークスは言ったのだった。
待つこと20分くらいでリーンフリークスの私服姿が私は見れた。
やはり綺麗なお兄さんの私服姿は最高である。
「背が高いから私服も似合いますね」
「そうかな、ありがとう」
そう言ってリーンフリークスに私は微笑まれる。
そこで私は肩を叩かれた。
「ミドリ、行くぞ」
「うん」
「……そのうちもっと背が高くなって、ミドリを見下ろしてやる」
「なんで!」
今は同じくらいの背だけれど、それがどうかしたというのか?
けれどそれ以上クロードは何も言わないで中に入ってしまったので私は、それ以上何も言えずについていったのだった。
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