合体技みたいなものね
私の知っている“闇の影”についての情報。
「人の嫉妬、憎悪といった悪い感情を増幅させる存在。人と世界を滅ぼすことが目的というか行動原理、だったはず。そのために欺き人の中に紛れ込む。またその力は巨大であり、普通には対抗できない。魔法使いや騎士などの戦闘に従事した人間たち複数、数十人単位必要になる。けれどそれは最低でも弱いものである。この“闇の影”は人にとりつく場合がある。それによってその人物は強大な力を得るが欲望が肥大化し、周囲の人間も含めて破滅させるようになる。女性の場合は美しい姿になり“傾国”と呼ばれる存在になる場合がある」
すらすらとまるで何かの本が目の前にあるかのように、私はその情報を吐き出した。
文章だけでは大まかにまとめられて個別の事例が載っていないのでそこまで“悪意”ろ“憎悪”を抱かないが、その片鱗を語られるだけで危険な存在だと分かる、そういったものだった。
そしてその“闇の影”の従僕であるのが“黒の影”。
様々な形をとる危険な相手だが、“闇の影”ほどではない。
“闇の影”の一番恐るべき性質は、人の社会に溶け込むこと、である。
予想していなかった人物として入り込んでいる場合があるのだ。
擬態と認識操作も彼らの能力の一部である。
けれど彼らがそう言って擬態したり紛れ込むには理由がある。
彼らは単独でいることが多いために、集団での攻撃には弱い。
また、“聖女”の力技では、彼らはほぼ確実に負ける。
だから彼らは“聖女”を恐れる。
同時に人々は“聖女”を守るはずだけれど、そこで私は気づいた。
「マリア、“聖女”は血筋で発現するの?」
「そうだよ? 古代の王国の王族の決闘にしか存在しないと言われている」
「そうなんだ。……どうしてクロードは見つけられなかったのかな?」
「“聖女”は人からも隠されていますから。もともと古代の王国が滅んだのも、“人”の業により“聖女”を失う危機に直面したのもありますから……大量の偽物も用意したりと念入りに隠されていた部分があります。私の本当の名前も秘密だったし」
「そうなんだ。そこは私の知識とは違うね。でもどうしてこの学園に来たの? 隠されていそうだけれど」
「周りの状況とこの学園の成り立ち、そして、“聖女”の力を増幅するアイテムが理由でしょうか。“闇の影”の動きが活発化しているから情報も欲しい、そして……“失敗”しても代わりがいるから問題ないのでしょう。私は弱い方の“聖女”ですから」
「あれ? “聖女”って何人もいるの?」
「いますよ私以外に何人も」
「そうなんだ。うーん、それも知らなかったかも。浄化魔法がみんな気楽に使えていたような気がしていたけれどそんなことはなかったし、ちょっとこの世界は私の“知っているもの”と比べてハードモードだね」
「はーどもーど?」
「こっちの話、うーん、まあ“闇の影”を倒さないと私も元の世界に帰れないし、頑張るのでマリアはもう少し“安心”していいよ。なんとなくすごく色々な事に怖がっているように見えるし」
「……」
「それに選択画面から選んだ魔法を使えば結構簡単に強力な魔法が使えるようになっていると思う。“闇の影”相手だったら最終的に、“神聖魔法”を使えば倒せたはず?」
そう言いながらそれが違っていたらどうしようかと思っていたがそれは杞憂に終わった。
どんなものだろうとマリアが“選択画面”を呼び出して“神聖魔法”の項目を見るがそこで、マリアがある文字列で動かなくなる。
「超弩級神聖魔法?」
「合体技みたいなものね」
「合体技?」
「そうそう、私の生まれた東の方の島国では、友情の力を合わせて、威力を数十倍にした“必殺技”が打てるのよ!」
「そうなのですか? 何だか素敵ですね」
「私もそう思うわ。これを使えば“闇の影”何て一発で倒せるわね、多分。上級のものでもね。能力制限しなければ」
「凄い技ですね。でも二人以上必要と書かれていますね」
「本当だ、こんな制限はそういえば知らないや。同じ能力の“聖女”がいてよかったかも」
私はそれを見ながらそう呟いた。
そしてマリアもそうですねという。
マリアとの距離が近づいたように感じたのだった。
次の日、マリアと一緒に朝食を食べに行くとクレイ達からマリアと放されてしまった。
「うーん、やっぱり嫌われいるみたいだね、仲良くしたいんだけれどな~」
「ミドリ、あまり夢を見るなよ」
「大丈夫だよ。マリアは、仲良くなりたいみたいだし」
「けれど周りの状況がそれを許さない場合だってある」
「そうだね。でも希望は捨てないでおいた方がいいんじゃないかな?」
「……勝手にしろ。傷つくのはミドリだぞ」
「うん」
といった会話をして朝食をとり、次に授業を受けて昼食へ。
そこでリーンフリークスと会ったので、集合場所を決めておく。
基本的に自由に動けるのが“放課後”のみになってしまうのは学生の辛い所ではある。
夏休みや後は土日だったらもう少し自由に動けるかもしれない。
ちなみにこの世界の一週間は私達の世界の一週間が七日間であるのと同じで、土日が休みらしい。
土曜日のある私には羨ましい話だ。
けれど別な理由であるとはいえ、区切りなどが似ているのもよかったように思う。
といったことを話すとクロードが、
「……ミドリの世界とそんなに似ているのか。だから感覚もいくらかは似ているのか。いや、あのミドリの行動は……」
といったようにクロードが考え出したのは良いとして。
こうして色々と忙しくしているうちに、約束の“放課後”がやって来たのだった。
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