失敗するわけにはいかない
メモに書かれていた内容は、私の知っているものと同じだった。
置かれていた、正確には張り付けられていた場所は違っていた内容は、同じだったので私の“知っている”物と同じと考えていいだろう。つまり、
「これに書かれている場所に、“竜の涙”があるの。リーン先輩のお父さんが残したヒントだね!」
そう言ってメモが皆に見えるようにすると、
「確かにこれは父の筆跡だね。うん。『世界を救いに行ってくる』と言って学園長業務を全部僕に丸投げした、ね」
「せ、先輩、自分で学園長業務って自分で言っていますよ」
「ミドリちゃん達には気づかれているからもういいかなって。でも、なるほどね、またあの父にしては必死に頭をひねって考え出した暗号だね。詩ともいうべきかな?」
リーンフリークスが私の見せているメモを読みながら、珍しく、笑みを浮かべながらも目が笑っていないリーンフリークス先輩がいた。
とてもいけない感じがしたがそこで、珍しくクレイが、
「でも詩的な表現だな。『暁の塔に眠るは、女神の願い。古き歌を奏で、恋願うはかつての花畑の約束』……何のことだろうか」
「あ、回答知りたい?」
「……そろそろ突っ込むのも疲れてきたが、いい。これくらい自分で考える」
「そうなんだ。じゃあ他に回答を知りたい人がいるかな?」
と聞いたが誰も答えなかった。
もしや推理小説を読んでいるのに、犯人はあの人だよと教えるようなことになりかねないのではと私は思った。
うん、ネタバレは良くないねと私が思っているとそこでリーンフリークスが、
「場所はすぐに分かるね。暁の塔の下り。暁は、東から太陽が昇る時間帯の事であるから、東の塔……つまり学園内で“幽霊塔”と呼ばれているこの学園でも特に古い塔だね」
「正解です、リーン先輩!」
「ありがとう、ミドリちゃん。残りはこれからゆっくり考えてみるよ。特に……“幽霊塔”は夜に行くにはあまりいい場所ではないからね。これで一時的に解散かな?」
「そうなのですか。白いお化けも見てみたかったな」
「じゃあミドリちゃん、今度は僕と二人っきりで見に行くかい?」
「見に行けるんですか! ぜひっ……もが」
そこで私は何者かに口を手でふさがれる。
見るとクロードだった。
クロードは機嫌が悪そうに、
「夜に出歩くな。警戒心が薄すぎるぞミドリは」
「でもリーン先輩だし」
「……それで、その紙の内容は覚えたか? 他の人も」
クロードが私の言葉に答えずにそう問いかける。
それに全員が知っていると答えたかと思うとクロードはその紙を燃やしてしまう。
「敵に情報が渡るよりはいいだろう。証拠は残さないでおこう」
「警戒心が君は強いね」
あきれたようにリーンフリークスが言うがそれにクロードが、
「……俺が失敗するわけにはいかないから」
「……以外に責任感が強いんだね、君は」
そうリーンフリークスは言うがクロードは答えない。
そういった話をしてその日の洞くつ散策は、終了したのだった。
入り口付近で待っていたマリアのお友達たちは、凄くマリアを心配しているようだった。
仲がいいなと思いながら見送る。
そして戻ってきた時にクロードがその入り口付近にいた彼らに、
「俺達の後に、誰かここに入って来たか?」
「ここに居ましたが見かけませんでしたね」
答えたのは確かマリアの友達の……。
「誰だっけ」
答えたその人物が誰だったか上手く思い出せない。
この人は誰だっただろう、そう私が思ったがそこでクロードが、
「どうしたんだミドリ」
「今話していたマリアのお友達が誰だったのか思い出せなくて」
「カルロだろ。まあ、一度しか名前を名乗ってもらっていないから覚えていないのも仕方がないが、どうしたんだ?」
「うーん、うーん、よく分からない」
「……ミドリがまた変な事を言っている。いやよそう、ミドリだし」
クロードがまたもそういった失礼なことを言ってそこでリーンフリークスが、
「外につながっているとはいえ、“黒の影”と接触していてね。それでここから来たのか、外から来たのかと思ったけれど、外からのようだね。……僕達を追いかけてきているようだから、中で待ち伏せされていたのかな」
「“黒の影”……マリア、大丈夫でしたか?」
マリアのお友達のエレナが焦ったようにマリアに聞いている。
友達思いと思ってもいいのだけれど、
「マリア、もう少し“聖女”としての自覚を持たないと。危険な場所には近寄らないようにしましょう。それで、手に入ったのですか?」
「え、えっと、今回は場所を移動になっただけで、手に入らなくて」
「では、危険な目に遭っただけでしょう! もう、この人達に関わるのは止めましょう!」
そう叫ぶエレナ。
そして先ほどの……えっと、名前がなんだっけさんが、
「僕もそう思う。このミドリとかいう“自称・異世界から来た聖女”なんて信用できない。信用させるために今こう言った行動をしているんじゃないのか? 現にこいつが現れてから、“黒の影”と遭遇しやすくなってきている」
名前がなんだっけさんが私を睨みつけながらそう言ってくる。
でも、どうして私はこの人の名前を“覚えられない”のだろう?
妙な違和感が私に張り付いている。
違和感と言えば先ほどの場所が違っていたあれである。
でも中身は同じだった。
けれどそれを言うならどうして私はそれを“知っていた”のか。
「何だろうなこれ」
一人呟くけれど答えは出ない。
そして、お友達の反対もあって、“幽霊塔”にマリア達はこれ無くなってしまったのだった。
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