君が気にしているような“感情”
“冒険”に誘われたので即座に私は頷いた。
「はい、よろしくお願いします」
「おい、ミドリ!」
クロードが焦ったような怒ったようなそんな雰囲気で私に言ってくるが私としては、
「でも“聖女”に関わる物でしょう? 必要なんでしょう? 一応はなかったはずだけれど、見ておいた方がいいんじゃないかな?」
「それは……確かに、“聖女”に関わる物なら知っておくのはいいだろうけれど……」
「もしかしてチュートリアル君、それ目当てで、ここの学園に入ることにしたの?」
「……」
黙ってしまったので正解のようだ。
だったらと私は思ったので、
「それなら放課後、リーン先輩と一緒に探しに行ってもいいじゃない」
「……ミドリがリーン先輩と一緒に居たいだけじゃないのか?」
「なんで?」
どうしてそういった言葉が出てくるのか分からず、私が首をかしげてクロードに聞くと、リーンフリークスが噴出した。
「そうそう、ミドリちゃんは君が気にしているような“感情”は僕には無いようだよ。僕としては残念だけれど」
「何を言っているのか分からないな」
「そうなのかい? ではそういう事にしよう。では、放課後この図書館の前で待ち合わせでいいかなミドリちゃん?」
そこでまた私は聞かれたので、はいと答えた。
クロードは不機嫌そうだが渋々といったように頷く。
それから授業中なのもあって別れた。
なんでもリーンフリークスも、授業の一環で魔導書を探しているらしい。
魔法についての知識が書かれているものが魔導書だと私は、ここでクロードに教わった。
そうしてまた再び本を探していると、名前の知らない“決闘”の時の審判の先生がいた。
また会ったなと私は思いながら軽く挨拶をして通り過ぎ、再び本を探す。
そこで何事かをずっと考えていたかのようなクロードが、
「もしかして、俺が召喚する時につけた条件設定の、この世界を“知っている”の“意味”が違うのか? 意思の疎通を考えて呼び出したけれど、それが……だからミドリは全部知っている?」
「でも私、覚えていない事が多いよ?」
「それはこれからゆっくりと回復していくだろう、俺が気になるのはこの世界について、それこそ“俺”の知らないようなことまで知っていそうな点だ」
「そうなんだ、でも人によって知っているってことは違うんじゃない?」
「でもミドリはさっきのリーンについてや、“聖女”であるマリアの本当の名前を知っていた」
「そうだね。でも知らないし一緒に居ても記憶にない人物はいるよ?」
「それはただのモブなだけじゃ」
「違うよ、だって私、チュートリアル君については知らないもん」
「……俺?」
「うん、私はチュートリアル君がどんな人物だとかそういったことは知らないや。もう一回“ステータス・オープン”してみようかな」
「止めろ」
クロードが即座に反応した。
クロードは“ステータス”を見られるのが嫌であるらしい。
なので私はそれに関してはそれ以上追求せず、代わりに物語に存在しないキャラクターという意味でも、
「やっぱり、チュートリアル君はチュートリアル君だね」
「……本当に、チュートリアルってどういう意味なんだ」
クロードが私にそう聞いてきたが面白いので黙っていた。
そしてクリードも諦めたらしいのでそれ以上私は言わずにいて。
再び本を探していく私。
赤い背表紙に金色のふちの、まあ、お高そう! といった雰囲気の本を手にとってパラパラめくってから私は再びその本を本棚に戻しつつ、
「うーん、やっぱり派手な魔法がいいかな。だったら炎だよね!」
「……まずは初めての魔法という絵本から行くか」
「えー、折角だからもっと派手な魔法が使いたいよ」
「それは特殊能力で十分だ。丁度いい絵本がここにある、ほら、やってみろ」
「ここ図書館だけれどいいの?」
「この程度の小さい魔法なら問題ない。気になるんだったらまありに人がいないのを確認して窓の外で魔法を使え」
「分かった」
というわけで私は、まずは水をコップ一杯程度呼び出す呪文を唱えて、
「“欠片の水”……あれ?」
目の前に光の白い魔法陣が現れたかと思うと、豪雨の後の排水溝のように大量の水が流れていく。
みるみる下には水たまりが……。
「おい、ミドリ、止めるんだ! 下に池が出来る!」
「う、うん、止まれ」
私がそう呟くと、どうにかその水の魔法は止まった。
それを見たクロードが、
「ミドリの魔力が大きすぎて初級の魔法でもこの威力なのかもしれないな」
疲れたようにクロードが呟いたのだった。
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