そこにはすでにないかも
探し物があっただけ。
そう答えるリーンフリークスにクロードが警戒するように、
「お前、本当に何者だ? 普通の人間とは思えない」
「何をそんな風に警戒しているのか分からないけれど、君のその感覚は半分は正解で半分は間違うと思うよ」
「……どういうことだ?」
「僕は君達の敵ではない、という事かな」
にこりと微笑むリーンフリークス。
年上の余裕を感じるな、と私が思いながらクロードに、
「チュートリアル君、敵じゃないと言っているんだから、いいんじゃない?」
「自己申告が信用できるわけないだろう」
「そう? うーん、この学園長代理のお兄さんは、大丈夫だと思うよ? 怪しい事を言ってけむに巻くのが確か“趣味”だったっけ」
そう私は言いながら、そうだった気がすると思う。
そうなのだ。
このお兄さん、リーンフリークスはいろいろ知っていて黙って、そして“からかう”のだ。
“趣味”が悪いと言えばそこまでなのだけれど、結構重要な事を知っていたりしていたようなしていなかったような。
お手伝いもしてくれたし。
違う、してくれるはずなのだ。
でもどうして私はそう思ったのだろう、そう首をかしげる私だがそこでリーンフリークスが困ったように笑い、
「ミドリちゃんは不思議な子だね。僕のよく言われる“悪趣味”について知っているようだし、学園長代理じゃないといっても聞かないし。君は一体、何者なのかな?」
「……チュートリアル君、答えていい?」
「駄目だ」
とりあえずクロードに答えていいか聞くと、駄目だという即答で返事が返ってきた。
なのでとりあえず話すのは止めておこうかなと思っているとリーンフリークスは目を瞬かせてから、小さく笑って、
「そうなんだ、そちらの……クロード君がいいって言わないとミドリちゃんは答えてくれないのか」
「そうだ、よくできたぞ、ミドリ。今のは最適解だ」
どことなく優越感があるようにクロードは答える。
そんなクロードに相変わらず笑みを浮かべたままのリーンフリークスは、
「ミドリちゃんについては教えてもらえないのか」
「すみません、リーンフリークスさん」
「リーンでいいよ。近しい人はみんな僕をそう呼ぶ。リーン先輩がいいかな」
「そうなのですか、では、リーン先輩、私は答えられません」
「そうなのか。じゃあ僕がミドリちゃんについて知っている情報は、この学園に機能来たことと、ミドリちゃんが“聖女”だって事かな?」
楽しそうにリーンフリークスは告げる。
クロードが警戒したように睨み付けるが、それにリーンフリークスは物怖じする様子もなく、更には悪戯っぽく笑って、
「“聖女”の力を高める魔道具の場所を、僕が知っていると言ったらどうする?」
「……お前は信用できない。口から出まかせを言っているかもしれない」
「でも、もしかしたらと君は思っている」
そう告げたリーンフリークスに、クロードは押し黙ってしまう。
だが今の会話を聞いていると、重要アイテムの場所をリーンフリークスは知っているように聞こえるのだ。
重要アイテム、重要アイテム……私は数回それを心の中で呟いてから、
「リーン先輩、私、分かったかも」
「何が?」
「リーン先輩がそこにあると思っている魔道具は、そこにはすでにないかも」
「……え?」
「多分、リーン先輩のお父さんが別の場所に隠したと思う。先輩の安全のために」
「……」
「だからそれは口に出さない方がいいと思います。狙われているから」
私がそう告げるとリーンフリークスは少し黙ってから、
「僕も狙われているのかな?」
「確かそうだった気がする。時系列だと、そうだった」
「過去形だね。まるでミドリちゃんはこれから起こることを“知っている”ように聞こえるよ」
「……何で私は知っているんだろう」
「僕に聞かれても分からないよ。でも、忠告は受け取っておくよ。ミドリちゃん」
リーンフリークスはそう私に答えてそして、
「でもそういわれるときになってしまうね。今は授業中だったけれど、ミドリちゃんは何時時間が空いているかな?」
「放課後は空いているかも」
「では、放課後僕にお付き合いしてもらえないかな? ミドリちゃん」
そうリーンフリークスが私に、放課後の“冒険”を誘ってきたのだった。
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