頭に浮かんだ言葉
ただのとても強い“女子中学生”と私は告げると、クレイは嫌そうな顔をした。
「“ジョシチュウガクセイ”だと? そんな謎の民族、聞いた事がない」
「そう? 結構沢山いるんだけれどね~」
元の世界ではだが。
そう告げつつも私は、なんだか変な気がした。
中学がこの世界にはないらしい。
もしかしたなら学年の分類が違うのかもしれない。
そう思いながら私は再び選択画面を呼び出して、
「さーて、では次は、どれが御望みですか? 炎でも風でも何でも応えられるよ!」
「このっ! 余裕でいられるのも今の内だからな!」
「そうなのですか。では、やれる前にやれ、という事で次は“炎球”×~15くらいで行きますか」
「ちょ、待て、待とう!」
「でも、選んじゃったから頑張ってね」
「そんなぁあああああ!」
悲鳴を上げて必死になって逃げていくクレイ。
涙目な様子にすこし罪悪感を覚えたが、勝負の世界は過酷なものだから仕方がないの! という事で、容赦なく炎の塊で攻撃しました。
それを見ていたクロードが、
「ミドリ、やりすぎだ。やりすぎ! 調子に乗るな!」
「でも攻撃しないと倒せないし」
「それはそうだが」
「ちょっと強めの攻撃をして気絶させちゃう?」
「それは……」
「でも、意外にクレイは逃げ足も速いし防御能力も高いし魔法も使えるしで、倒すの大変そう。これで、どうして行きがけのあの魔物に腰を抜かしたというか動けなくなっていたんだろうね?」
私が不思議に思って言うとそこでクレイが、
「あの魔物達は、“黒の影”の一部だ! しかも強めで、俺達を動けなくするような魔法を使ってきた。とても強力な魔法だ。なのに、なのにお前はそれに全くかかっていなかった! それこそ、“黒の影”か“闇の影”の一員であるかのように」
「やだな~、あんなのと一緒にしないでよ。しないで? というかあの弱い魔物、そうだったんだ……」
私はその時、心の中で嫌なものをとても感じていた。
あんなものと一緒にされる、私は目で見て、そして戦ったから知っている。
あれの気色悪さを。
“悪意”を。
でもどこで? 分からない、けれど“知って”いる。
だからそれを私自身が否定すべく、その問いかけに対して私は、
「“最終状態異常無効化”がついていたから、どんな魅了も痺れも、私には効かないのよ」
「な、何だその魔法は!」
「私の特殊能力の一部。これで、“黒の影”や“闇の影”ではないことが分かってもらえたのかしら?」
「……まだ信用できない」
「仕方がないわね、だったら力で認めさせるのみ。圧倒的な力で敵を“駆逐”してあげるわ」
というわけで選択画面に触れようとした私は、クレイ君が間近に迫っていて、手には光の刃のようなものがあるのに気づく。
そしてそれを私に振り下ろしながら、
「おしゃべりの油断を使わせてもらった! これで終わり……あれ」
そこで私の額の当たりでクレイの刃が止まっている。
私はじっとクレイを見つめた。
クレイは動けずにいて、
「なんで、攻撃が通らない」
「“最終形態絶対防御”をつけているからかな?」
「それは、なんだ?」
「よっぽど強力な魔法でないと、私にどんな物理攻撃も魔法攻撃も通用しません」
「そ、そんな……」
絶望したように呟いたクレイに、何だかラスボスになった気分を私は味わったが、これは彼らからの挑戦だったので問題ないと思い込んだ。
そして私はそっと選択画面を選んで、ぽちっと。
「というわけで、気絶してね。“雷の雨”」
「うぎゃっ」
そこで痺れる電気系の魔法を使ってクレイを気絶させた。
近づいてきたので楽だった。
先生は私の勝ちを宣言した。
そこでマリアという少女がクレイに慌てて近づいてくる。
彼女を見ていた私の脳裏に、ふっと頭の中によぎる言葉がある。
「ランディ・アトル」
その言葉にはっとしたように、マリアが私の顔を見上げたのだった。




