“ステータスオープン”
“選択画面”を呼び出した私は、とりあえず相手がそこまで強力な魔法を打ってこないだろうと予測を立てた。
だから選ぶ魔法は、
「“氷の矢”×10!」
この“選択画面”を使った魔法には面白い性質がある。
魔法に触れて私が思うだけでもいいし、声に出すのでもいい、そうすると一本しか現れないような魔法は、複数の、私が指定した数だけ生じるのだ。
強力なものでは生じるのに少しの遅れがあって現れるが、この程度の魔法では誤差は認識できない程度の一瞬である。
そしてこの魔法の効果について、頭痛が痛い、というレベルの混乱と痛みを感じたらしいクロードが言うには、魔法が指定された回数分、ループをするように実行されているらしい。
あの時のまた変なものを見てしまったというクロードの顔は……そろそろ私は慣れてきた。
さて、即座に私は鋭い氷を呼び出して目の前のクレイに向かい、
「いっけぇえええええ」
「ちょ、まだ呪文が……途中までだが、“炎球”」
そう言った魔法を発動させる。
呪文を途中までにすると、発動しないか威力が弱くなる……らしい。
私は今の所呪文なしで、成功するものしか使った事がないので分からない。
強力な呪文は、クロードに目立つから絶対やめろと言われている。
なので現在それらの魔法は使わないし使う必要もないし機会もない。
非常に良い事である。
というわけで打ち込んだ弱めの魔法は全てクレイの魔法で阻まれた。
「なるほど、この攻撃は耐えたようね」
「……この程度、俺にとっては大したことはないな」
「そっかー、ではでは、“氷の矢”×10!」
「え! ま、待て! “炎球”」
今回は呪文なしである。
どうやらクレイは呪文を使わないで魔法が撃てる、“こうどでまりょくのつよいまほうつかい”でありらしい。
ちなみに私の場合は、クロード曰く、“こうどでまりょくのつよいまほうつかい”ではなくただの“変態生物”であるらしい。
そして再び防がれた私は何度もその魔法を使うが、顔色が悪いクレイは一向に倒れない。
なかなか強いようだなと思っているとそこでクロードが、
「ミドリ、ほどほどにしておけよ。絶対にほどほどにしておくんだ。分かったな!」
「はーい」
ここで超強力な魔法を撃つな、という事であるらしい……それをクロードが言う。
選択画面関係は誤魔化せるらしく、最近ではもう何も言わなくなっていた。
ただ、ここでもう一つ私は、私特有の魔法を使う必要があるようだ。つまり、
「なんか強いな! “ステータスオープン”」
私は叫ぶ。
同時にステータス画面がクレイの横に現れる。
クレイはぎょっとしたように凍り付いているが、私は現されたステータス画面を確認する。
まず、服の防護力も込みで、どれくらいのカがあるのかが知りたい。
あと、どれくらい魔法で攻撃すると倒れるのかも。
この世界は“魔法”で多くの事が動いている。
人も、動物も、そして……魔物も。
だから魔力の総量で動けなくなったりするのが分かるのだ。
とはいえ、この世界の人を“殺す”のは私はちょっと、いや、かなり抵抗がある。
そのために常につけている属性が“主人公補正”。
その属性をつけていると相手がどれほど致命傷を負うとも、ぎりぎり生きているレベルで止まる。
一応は死んでそこまで時間がたっておらず、老衰でなければ生き返らせられる、超・強力な神聖魔法の一種で、“蘇生魔法”があったりするのだが名前は今は出せない。
なんでも伝説の魔法なので、口に出すだけでも駄目なのだそうだ。
以前そうクロードに言われた。
そこでクレイが、焦燥感に満ちた声で、
「な、何なんだ、一体何なんだ、お前は!」
「ただのとても強い“女子中学生”です」
私はそう答えたのだった。




