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第5話 駆け抜けろ

由香が気が付いた時には、玄関の前で鞄を持って立っていた。


「あ、学校、行かなきゃ。」


そして歩き始めて気が付いた。

ここを歩いていたら、車が突っ込んでくる。じゃあ、どうすればいい?

別の道だと駅にたどり着かないし、あ、そういえば、もう少し進んだところに歩道橋がある。

そこに上ればいいんだ。


そう思うが早いか、由香は駆け出した。

車がこっちまで追いつくまでに、意外と時間があったはず。

だから、なんとかしてそれまでに。

歩道橋は駅の中へ続いているので、上ることさえできればこっちのもの。


由香は走った。

このときほど、自分の足の速さを誇ったことは無い。


「あ、あった、歩道橋!」


目の前に見えたとき、後ろに車が迫ってきているのもちらっと見えた。


「やばい。」


緩みかけた気をしっかりと引き締め、ラストスパート。

よし、歩道橋に足が掛った!

2段ほど上がったところで、車が突っ込んできた。

だが、もう段差の上。そのまま階段を駆け上がり、事なきを得た。


「はー、怖かった。」


やっとのんびり歩ける。そう思い、深呼吸をした。

あの死神の言ってたセリフがちょこっと気になるけど、とりあえず駅に向かおう。


「あ、意外とすいてる。」


朝の割に、人は少なかった。

前の方に並び、電車を待つ。


と、なぜか、後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。


「由香ー。お弁当忘れていったわよー。」


お母さん、何で。

いつもは学食で食べて来いって、お弁当なんて作らないのに。

無いはずのお弁当を持ってにこにこしているお母さんは、別人に見えた。


「あ、ありがと…」


言い切らないうちに、由香の体は宙を舞った。


ドサッ


痛いなあ、あ、ここ線路の上か。

そんなことを考えていたら、真横に電車が…


・・・・・・・・・・・・

「人目もはばからずって、由香のお母さんはすごいね。」


死神がケタケタ笑っている。


「笑い事じゃないのよ!もう、あんた悪魔なんじゃないの!?」

「そんなわけないじゃないか。ほら、ちゃんと鎌も持ってるし。」

「そこが基準なの!?」

「ま、散々走ってから、どうするかだね。頑張ってー。」

「ちょ…」


由香は再び生き返った。

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