十六、鳳凰島(2)
皆が鳳凰の話をしているところへ、漁師のジャンが入って来た。手には海鮮料理を持っている。
「鳳凰島なんて、荒っぽい連中や胡散臭い者どもが行くところじゃないんですかね?」
フェイユの父は、かなり警戒しているようだ。普段から、道楽者や貪欲な人々が渡って行く島である。危険だと思うのは当然だった。
「まして今は、私ども親子を襲った奴等が行ってるんですから、鳳凰島まで出かけるのは、やめといたほうがいいでしょうよ」
「あいつらと出会したら怖いなあ」
父の意見を聞いて、フェイユは身震いした。
「かなり凶暴な人達だったみたいですね」
チャイレンも恐ろしそうに眉を寄せた。幼い頃に遭遇した刺客を、また思い出してしまったのだ。
「最近、鳳凰島に渡った者は他にいるのかね?」
バイリ老人は、山草と一緒に蒸した魚を取り分けて貰いながら質問した。
「そういえば、ひと月くらい前に、お金持ちの立派な船が渡って行ったきり戻らない」
フェイユが記憶を辿って答えた。
「お金持ちなら、護衛も沢山いるだろうね」
バッボウが言った。
「そうですね。小船で出かけたならず者の一団程度なら、相手にもならなそう」
フェイユは貧しい漁師の子だが、長命な亀には礼儀正しく接した。
「あの島には、野犬もいる。鳳凰の羽を求めて訪れた者たちが置いて行った犬だろう」
「連れて行ったのに、置いて来ちゃったんですか?」
チャイレンは呆れて目を見開いた。
「エサに困ったんじゃないか?鳳凰の羽以外は、殆ど岩ばかりの小さな島だからな」
バイリ老人がサラリと言った。鳳凰島に行ったことがあるようだ。
「役に立つかと思って連れて行った犬が、エサ不足で却って足手纏いになっちゃったんだろうね」
バッボウも意見を述べた。
「可哀想だなあ」
フェイユが少し怒った声を出した。
「生き延びた犬は、鳥や魚を食べたんだろうか?」
「そうだろうね」
チャイレンの疑問には、バッボウが頷いた。山草の香りが、潮風と混ざって小屋の中を満たしている。木の実と小蟹の汁物は色鮮やかで、食欲をそそる。
「犬を連れて行くようなお金持ちなら、漁師も船に乗せていそうだけど」
「でもさ、鈴児。大所帯だと、犬の分までは獲れなくても不思議じゃないよ」
「そうかぁ」
彩鈴は沈んだ表情になった。次第に弱っていく犬を思い浮かべたのである。
「犬以外にも、捨てていかれた動物がいそうですね?」
フェイユが言うと、チャイレンも同意した。
「そうですね。逃げた鶏とか蛇とかもいそう」
その言葉を受けて、老神医バイリ・ハンチェンがキョロリと目玉を動かした。
「何?寒辰?」
バッボウが老医に顔を向けた。
「興味出た?」




