027 兄との違い
翌日は仕事だったので自警団本部へと向かったのだが・・・。
とにかく周りからの視線が鬱陶しかった。
まずは昨日の夜、家に帰ったら母さんが良い笑顔で
「あんたも中々やるわね!その調子よ!」
とか言ってきて、父さんは何やら
「僕の大切な娘が・・・。」
とかブツブツ言っていて、変だった。
そして今日、家を出ると周り中から好奇の視線にさらされたのだ。
田舎というものは、ちょっと何かやるだけですぐに情報が拡散してしまう。
分かってたよ、分かってたけど、鬱陶しいものは鬱陶しい。
本部に着いたら着いたで、今度はニヤニヤとした団長に話しかけられた。
「おう、リア!お前、オーウェンさんと抱き合ってたんだって?」
「はあ?!何それ。その情報、尾ひれがついてるよ。」
「そうなのか?でも、泣いてるお前をオーウェンさんが慰めてくれたんだろう?」
「うぐっ!・・・それは・・・。」
人前で泣いてしまった事だけでも恥ずかしいのに、その先の展開まで村中に知られているなんて、拷問のようだ。
しかも尾ひれがついているのだから、よけいに。
「で?本当のところはどうなんだ?兄ちゃんに詳しく聞かせてくれよ。」
がははと笑いながら、団長はその太い腕で私の首を掴んだ。
いわゆる、ヘッドロックのような状態だ。
「ちょっと団長!いきなり何すんの!やめてよ!!」
乱暴に扱われた私は、その腕から力づくで脱出した。
おかしい。
密着具合は昨日のオーウェンと大差ないのに、この違いは何だ。
あれか、惚れた男と何とも思ってない男の違いか。
「だいたい、団長には関係ない話でしょう?!」
「いや、大いに関係ある。お前、俺がいくら賭けてると思ってるんだ。」
「知らないよ・・・。勘弁して。」
賭けをされていたことまで思い出してしまった私は、大きく脱力した。
と、そこで、入り口が一瞬ざわついた。
オーウェン一行がやってきたのだ。
「おっ。もう一人の主役のご登場だ。リアが話さないなら、オーウェンさんに聞くしかねぇなぁ?」
団長がまたニマニマとする。
オーウェンなら、嘘はつかないだろう。
とはいえ、できるだけ余計なことは言わないでほしいと視線で訴えてみる。
私と目が合ったオーウェンは、頬を染めて優しく微笑んだ。
あ、ダメだこれ。
私の意図が全然伝わってないやつだ。
そもそも有名人であるオーウェンは注目されることに慣れていて、気にならないのかもしれない。
「おはよう、リア。」
オーウェンは優しく心地よい低音で挨拶してくれる。
「おはようございます、オーウェン。」
対する私は、絞首台の上にでも立たされている気分だ。
「おはようございます、オーウェンさん!昨日はリアと食事をしてたって聞いたんですけど、本当っすか?」
団長が早速聞き始める。
「ああ、確かに二人で食事をしたが、それがどうかしたのか?」
オーウェンはキョトンとした顔をしている。
「今、村中がその話題で持ちきりっすよ!二人が恋人同士みたいだったって!」
「いや・・・。残念だが、まだ恋人ではないな。」
オーウェンが少し悲しそうな顔で返事をする。
その表情にチクリと胸が痛んだ。
「昨日は、泣いてしまったリアを、男として放っておくことは出来ずに慰めただけだ。特に俺たちの関係性が変わったわけではない。」
きっぱりと否定してくれたことに安堵した。
同時に、自分の気持ちに気が付きながらもオーウェンにまだ伝えていないことに罪悪感を感じた。
村中にからかわれるのは心底嫌だが、オーウェンに悲しい思いをさせるのはもっと嫌だ。
早めに気持ちを伝えなければと、私は思ったのだった。
ありがとうございました。
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