011 女装男
ある日。
いつも通り女湯の警備をしていた。
今日は師匠でもあり、私の憧れでもあるミラさんとの警備ということで、私はいつもよりテンション高く警備にあたっていた。
すると、脱衣所に一人の人が入ってきた。
髪は長く、俯きがちなため顔が良く見えない。
服装はスカートで、他の女性たちと変わらない。
しかしどこか挙動不審で女性というには肩が角ばって見える。
「ミラさん、あれ・・・。」
「ええ。声をかけましょう。」
ミラさんと小声でやり取りし、不審人物に近づく。
「おねーさん、ちょっとお話聞かせてもらえますか?」
私が話しかけると、その人物はビクッ!と体を震わせた。
「な、何か・・・?」
裏返った妙な声で返事をする。
振り返ったその人物の首にのどぼとけを確認した。
「あなた、男性ですね?」
「ちっ、違うわ!私は女よ!」
つん!と軽く髪を引っ張ると、ばさりとカツラが床に落ちた。
「きゃぁぁぁぁ!」
他のお客さんたちが悲鳴を上げる。
私はその人物の手首を取り、背中側へとひねり上げる。
「いてぇ!いてててててて!!」
痛みを訴える声は、完全に男性のものだった。
私はそのままずるずるとその男を引きずって脱衣所から出ていく。
「女だって言ってるだろ?!この怪力女!」
男らしい低い声のまま、それでも自分は女だと主張しつづけている。
『怪力女』というワードに私はピクリと反応した。
むかついたと同時に、ちょっとだけ手に力がこもってしまった。
“ごきん!”
あ。
骨が折れたっぽい。
男はあまりの痛みに泡を吹いて気絶してしまった。
ま、静かになったから良しとしよう。
騒ぎを聞いて駆け付けた他の自警団員へと男を引き渡す。
「たぶん、腕の骨が折れてると思うので、手当てしてあげてください。」
そう言葉を添えると、男を引き取った団員は顔を青くしてコクコクと頷いた。
ちなみに、この国でも心と体の性がちぐはぐになってしまう病気の事は知られている。
性は、男性と女性の二つだけではないのだ。
そういった人たちにも温泉を楽しんでもらえるように、この村では貸し切り湯も用意している。
それを利用せず、男の体で女湯に入ってきた時点で、下心ありと見なして連行するのだ。
下手な女装をしていたことも悪意があったという証拠だ。
同情の余地などない。
骨の一本や二本は仕方のないことだろう。
・・・と、いうことにしておく。
(いや、やっぱ後でお説教かなぁ・・・)
頑張って自分を正当化してみたが、やはり怒られるかもしれないと、私は落ち込むのだった。
女湯に戻って、ミラさんと合流し、簡単に報告を済ませる。
「やっぱり、後でお説教されますかね・・・?」
「骨の一本くらいなら、大丈夫でしょう。向こうは犯罪者なのだし。」
そうミラさんに言ってもらえて、私は少しホッとした。
「よう!また女装ヤローが出たって?」
温泉の営業が終わり本部に戻ってくると、早速団長から声をかけられた。
「はい。明らかにおかしな行動をしてたので、分かりやすかったです。」
「骨一本やっちまったって?ま、ああいうヤツには良い薬になるだろ。」
ミラさんが言ってくれたように、特にお咎めはないらしい。
「あの人、この後はどうなるんですか?」
「騎士様の取り調べの後、何らかの罰が与えられるだろう。今回の内容なら罰金刑くらいじゃないか?」
なるほど。
自警団員はあくまで村人でしかない。
だから、正式な取り調べは王都から派遣されている騎士様にお願いするようだ。
罰金刑くらいなら、そこまで人生左右されたりはしないだろう。
ぜひとも更生してもらいたいものだ。
そんなことを考えながら、今日の分の報告書を作成していくのだった。
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