010 猫カフェ
良くも悪くもバタバタさせてくれた勇者様パーティーが旅立って、村は少し落ち着きを取り戻した気がする。
私は、エブリンさんに教えてもらったトレーニングで体を作りつつ、ミラさんから体術を習っていた。
“バッキャァァァァ!”
「あ。」
木の破片が四方へと散らばっていく。
しまった。
またやってしまった。
「リアさん・・・。」
ミラさんが頭痛を抑え込むようにこめかみに手をやった。
訓練では丸太を立てた人形を相手にパンチやキックをするのだが、どうも加減が上手くいかなくて、丸太を破壊してしまうのだ。
「力任せではダメだと言ったでしょう。予算だって限られてて、訓練用品を用意するのも限界があるんだから・・・。」
ミラさんからお説教されてしまう。
うぅ・・・申し訳ない。
わざとじゃないんだ、わざとじゃ。
「すみません・・・。」
まわりの男性団員たちが恐怖の視線を送ってくるが、それも甘んじて受け止めよう。
悪いのは訓練用品を破壊した私だ。
これまでだって、こんな風に道具を破壊してしまうからという理由で、仕事を散々クビになってきたのだ。
何とかして『力加減』というものを身につけなくては。
「そうだわ!リアさん、ちょっと一緒に来てくれる?」
「はい。」
そうしてミラさんが連れてきてくれたのは、魅惑の空間だった。
「可愛い~!もふもふ~!」
「最近オープンしたばかりの猫カフェよ。素敵でしょう?」
「はい!すごく!」
店内では、そこここで猫たちが思い思いに寛いでいる。
人懐っこく、近くまで来てくれる子もいる。
「もふもふ~!あったか~い!癒される~!」
「この猫たちと触れ合って、力加減を覚えたらどうかしら?」
なるほど!
確かに、この可愛らしい生き物相手では、怪力も発揮していない。
普通に撫でたり抱っこしたりできる。
そんな私の様子を見て、ミラさんも少しホッとしたようだ。
・・・ん?
ということは、私は感情で力加減をしているということだろうか。
確かに、今まで道具を破壊したときは、緊張で変に力が入っていた気がする。
しかし、食事の時は普通に道具を使えている。
つまりは、感情をコントロールできれば、力加減もコントロールできるということだ。
「何だか光明が見えてきたよ!ありがとう~!」
そう言って抱っこしていた猫に頬ずりすると、さすがにそれは嫌だったのか、腕の中からするりと抜け出して、遠くに行ってしまった。
そんなつれない態度も可愛らしい。
ミラさんと私は、お茶を飲みつつ猫たちとの触れ合いを楽しんだのだった。
その後、本部の鍛錬場へと戻ってきた私たちは、再び丸太の人形相手に訓練を始めた。
猫たちが教えてくれた通り、緊張しすぎないように注意して丸太に攻撃をくりだす。
“ガッ!ガガッ!ガッ!ガッ!”
今度は粉砕することなく、しっかりと力加減ができた。
「ミラさん!コツが分かってきました!」
「そのようね。良かったわ。」
ミラさんと二人で笑顔を交わす。
その後、私はその感覚を忘れないために、という言い訳をして、度々猫カフェを訪れるようになったのだった。
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